名探偵コナン
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その目を向けられて
「どうも」
『っ!』
ビクッと肩を跳ねさせれば笑い交じりに肩を叩かれた。
眉を寄せた黒凪は睨む様に振り返る。
此処は喫茶店ポアロの隣にある路地の側。
朝から出勤だったのだが、うっかり鍵を梓から受け取る事を忘れていた。
今その梓が此方に向かっているのを待っている所である。
そんな時、突然何の前触れもなく現れた男。
『…脅かすな、沖矢さん』
「おや、随分心を開いてくださった様で」
『私の携帯をじろじろ覗き込んでくる奴に心何て開くか。』
「…所で誰です?それは」
つい、と指先で示された携帯の画面。
その画面にはサングラスを掛けた癖毛の男と髭を生やし煙草を銜えた男、そして黒凪が映っていた。
彼等の表情は明るく、仲良く肩を組んで写真に写っている。
黒凪は沖矢の言葉に返す前に消去ボタンに指を伸ばした。
『昔の友人だよ。フォルダに残ってたから消去したんだ』
「ほぉ…、用心深い貴方が消し忘れていたと」
『……。消せなかったのが正直な所。…大好きだったんだ、この人達のコト』
ほぉ、と眉を上げる沖矢。
その様子を横目に見ていた黒凪は眉を寄せた。
沖矢は黒凪に「ん?」と首を傾げる。
『お前な、結構゙出てる゙』
「癖がですか?」
『そ。雰囲気だって徐々に戻って来てるぞ』
「貴方の前だから態と出してるんですよ」
そんな気遣いは要らない。
そう言ってそっぽを向く黒凪。
沖矢は道行く人を見ると陰に隠れる様に路地の壁に寄った。
「驚きですね、貴方が友人を大切にするタチだったとは」
『驚いてくれて正解。元々仲間意識何て持たない主義だし』
「では何故貴方はあの写真を消去出来なかったんです?」
『あの人達は別格だったんだよ。…大事だったんだ、ホントに』
どっちも死んだけど。
そう言って眉を下げた黒凪に沖矢の手が伸びる。
彼の左手が黒凪の視界を遮った。
驚いた様に動く黒凪だったが、沖矢の左手は目を覆う事を止めない。
『おい、』
「そんな顔をして携帯を覗き込まないで頂きたい」
『は?』
「妬くんでね」
あのな、そう言って沖矢の左手首を掴む。
彼の片手は案外簡単にはがす事が出来た。
振り返って顔を覗き込めばやはり笑顔だったが、何処か不機嫌にも見える。
それが先程の彼の発言からなのか、実際にそうなのかは分からなかった。
「俺との写真は消せるか?」
『…はぁ?』
「どうなんだ。それだけ聞いておきたい」
『…、落ち着いて。別に貴方より彼等の方が好きだとかそんなんじゃなくて』
俺の写真なら消せてしまうんだろう?
そう言って自虐気味に笑う彼に一瞬ウザいと出かけたのは放っておいて。
黒凪はそんな沖矢をぽかんと見上げるとふっと笑顔を見せる。
『馬鹿。アンタの写真は消せないよ』
「………」
『だから撮らせないで、組織にばれる』
じっと黒凪の顔を見る沖矢。
彼は眉を下げて笑うと徐に手を伸ばした。
ぐっと引き寄せられた黒凪は大きく目を見開いて体を硬直させる。
背後で「あれ?安室さん?」と梓の声が聞こえた。
『…あのな。』
「おや、動揺の欠片も無い」
『この年になってキスに心躍るか。』
「そこは同感ですが」
かなりの至近距離で見つめ合う2人。
そんな2人の表情が特に照れたものでもない所を見ると随分と可笑しな光景だと思う。
が、生憎スパイであった2人にキスだの何だのはあまり効果は無い。
『…ま、嬉しかったから良いけど。』
「……ほう」
『はは。珍しく喜んでやんの』
「女性からの゙そういゔ言葉は慣れてますがね」
相手の問題はあるらしいので。
そう言った沖矢に黒凪はにっと笑った。
だろ?そう言った黒凪に笑う。
「安室さん?」
『っ!』
「どうしたんですか?1人で路地裏なんかに入って」
『あ、いや!此処にいる奴は………、へ?』
1人で?そう頭の中で呟いて振り返る。
忽然と姿を消した沖矢に微かに殺意が湧いた。
アイツ、今凄く焦ったのに…。
心配して損した、と眉を寄せて黒凪は梓に向き直る。
そしてすぐさま笑顔を彼女に見せた。
『すみません、猫が居たもので』
「あはは、安室さん猫好きですしね!」
『あはは…』
ふと梓の後ろを何気ない表情で歩く沖矢。
その姿が赤井に重なって思わず息を飲んだ。
からん、と扉の鈴を鳴らして店に入った梓に続く黒凪。
視線を感じた黒凪は振り返り、小さくなった沖矢の背中を見る。
確かに彼は彼だった
(写真を撮らせないでと言った)
(私の本心は)
(ちゃんと伝わったのだろうか。)
.