名探偵コナン
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その目を向けられて
安室透成り代わりの赤井秀一オチ。
探偵連載"隙ありっ"とは全く関係ありません。
※夢主は女性です。
残念だったな、ゼロ。
低い声が耳に届き、思わず手に持っている携帯を握り潰したくなった。
その衝動を抑え込み目の前の"沖矢昴"をチラリと睨んで口を開く。
口の中は乾いていた。
『なんで"そっち"に居るの、赤井秀一…!』
「その答えは至って単純だ。お前が俺だと思っていたその男は俺じゃない」
『っ、…自信、あったんだけどね』
「だから言っただろう?…残念だったな、と」
赤井の酷く落ち着いた声にギリ、と歯を食いしばる。
今度こそこの男を組織に連れ帰る事が出来ると思っていたのに。
だけど、これではっきりした。
この男はやはり生きていた。
『…まあ良いさ。君が生きてる事が分かったから』
「………"彼"の事は悪かったと思っている」
『許すかよ、無駄な事は嫌いな筈だろ?』
「その口調、止めろって言わなかったか?」
赤井のその言葉に側に居たジョディとキャメルが目を見開いた。
随分と親しげに話していると感じた。
今の一言だけがそう思えた訳だが、今の彼等の会話はまるで…。
女らしくしろと組織に居た時に嫌になるぐらい俺に言われただろう。
また、赤井がそう言った。
『あ゙?覚えてないな。』
「ならもう一度言うまでだ。その口調を止めろ」
『嫌だと言ったら?』
「これから先にいくらでも言ってやるさ。お前と俺は"敵"じゃないんだからな」
ピクリ、と反応した黒凪は大きく目を見開いた。
「お前…」と掠れた声で言った黒凪に赤井が微かに笑う。
全部分かってるんだよ、と言った赤井の声に黒凪は思わずその場に膝を着いた。
最悪だ、これでもう赤井を組織に差し出す事が出来ない。
…ああ、"よかった"。そう思った自分にふっと笑みを零した。
目の前の沖矢が怪訝に眉を寄せたのがチラリと見える。
『なあ、お前さ』
「ん?」
『なんで私がお前の事毛嫌いしてるか知ってる?』
「……彼の事だろう?」
そうだよ。と笑った黒凪。
赤井は言葉を止め、黙り込んだ。
黒凪の次の言葉を待つ様に。
数十秒ほど続いた沈黙の中、口を開いたのは赤井の方だった。
「違うのか?」
『…そうだって言っただろ』
「……。他にもあるのか」
『…んー…。そうだな、うん』
気の抜けた様な、そんな声と口調。
赤井は徐に車に凭れ掛かり、口に煙草を銜えた。
カチ、と火をつけ煙を吐く。
嫌な予感がする。
赤井は電話越しの黒凪に感付かれない様に静かに胸元に片手を持って行った。
『…私が嫌いなのはさ、お前と宮野明美なんだよ』
「明美?」
『そう、明美ちゃん。お前が一番大事にしてる女』
「………」
一番大事にしている、女。
そう復唱する様に頭の中で考えて、赤井はすう…っと息を吸った。
違う、と咄嗟に思った。
そんな自分に少し驚いて、それから納得した。
彼女は既にこの世に居ない、過去の女性だ。過去の、自分が愛した人だ。
「それは違うな」
『あ?』
「"今"一番大事なのは…、と言うより、気がかりなのは」
『………』
赤井の言葉にがっと胸元を掴む黒凪。
眉を寄せてきゅっと目に力を入れる。
なんだよそれ、と震える声で彼に声を掛ければクツクツと笑う声が聞こえた。
最低だ、何なんだコイツ。やっぱり嫌いだ。
「…黒凪。お前は死んでくれるなよ」
『……。あぁ』
「…その口調を止めろ」
『…明美ちゃんみたいになりたくないんだよ、私は』
あの女と一緒にすんな、そう言ってブチッと切られる通話。
携帯をズボンのポケットにしまった赤井。
黒凪も同様に携帯を仕舞うと目の前の沖矢昴に謝罪の言葉を掛け、工藤宅を出て行く。
赤井秀一は良いんですか、と自分に近づいてくる部下達に一言二言伝えて解散する。
車に近づいた黒凪はガン、と車のガラスを殴りつけた。
『…生きていて、よかった』
「黒凪さん」
『!……コナン、君』
「…嘘吐き。悪い人だって言ってたじゃん」
眉を下げてそう言って、そして笑う。
そんな彼に同様に眉を下げた黒凪はコナンと目線を合わせる様にしゃがみ込んだ。
コナンは特に怯える様子も無く、真っ直ぐと黒凪を見ている。
黒凪はサラリと落ちて来た金髪を耳に掛けた。
『君だろう?大を助けたの』
「大?」
『赤井秀一の事だよ。まだ秀一って呼ぶの気持ち悪いんだ』
「ああ、赤井さん……。っ!」
思わず赤井の事を知っている事を口走ってしまった。
その事に気付いたが、時既に遅し。
コナンは口元を抑えたが黒凪はにっこりと笑みを深める。
むっと眉を寄せたコナンは屈託のない笑顔で口を開いた。
「"赤井"じゃなくて"秀一"なんだね」
『ん?』
「呼び方だよ。仲が悪いって聞いてたけど…」
『組織に居た時は親友だったんだよ。これでも』
初耳だ。彼女の言葉にコナンは目を見開いた。
黒凪は笑うとコナンの頭を撫で、立ち上がる。
車に乗ろうと扉を開けた黒凪。
そんな彼女の横顔を見たコナンは「ちょっと待って!」と黒凪を引き止める。
「赤井さんが生きてて、嬉しかった?」
『………勿論。』
「…そ、っか」
「これは良い事を聞いたな」
聴き慣れた、少し馬鹿にしたような口調。
低い声、ゆっくりと近づいてくる足音。
黒凪はちらりと振り返るとそこに立っている男に目を細めた。
久しぶりだな、黒凪。
(嫌い、嫌い。大嫌い。)
(アイツに愛されている宮野明美何て。)
(前に進むと言う事は、過去を捨てると言う事)
(彼女を捨てて、目の前の彼女を愛すると言う事も、そう言う事だろう)
(これで良いと思うか?…明美…)
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