名探偵コナン
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愛されていても。
―――アンタが憎い。
ハッと目を見開いたジンは頭に一瞬響いた声に動きを止める。
目を見開いたまま固まるジンを見たウォッカ、ベルモットは微かに眉を寄せた。
思わずウォッカが「兄貴?」と呟く様に彼を呼んだ。
「ああ、すみませんね。痛みましたか?」
「……いや」
「…それにしても随分酷くやられましたな。此処までの大怪我を負っている貴方は初めて見る」
「………」
黙ったジン。
彼の前でそんなジンに少し笑った男性は彼の肩に包帯を巻き始めた。
男性は黒の組織に雇われている所謂闇医者と言う奴だ。
腕はかなり良く、日本人特有の黒髪にぽつぽつと白髪が生えている。
「誰にやられたんです?撃たれたんでしょう」
「…さぁな」
「痴話喧嘩みたいなものよ。ほら、覚えてない?ジンのお気に入りの"ライ"」
「……ああ!覚えてますよ、何でも凄腕のスナイパーなんでしょう?」
頷いたベルモットに成程…、と頷いた男性。
どうやらジンに弾丸をブチ込んだ犯人が分かったらしい。
恐らく噂の事も知っているのだろう、少し困った様にジンを見た。
ジンは無表情のまま包帯を巻かれた腕を見ている。
男性は興味を掻き立てられたのか、「そのライって……」と言いかける。
が、ジンの冷たい視線が突き刺さり言葉が止まった。
「おい。あまり踏み込むなよ、医者。死ぬことになるぞ」
「それは勘弁ですな。すみません」
「それでいい。後先短い人生、怪我無く暮らしたいだろ」
「そうですね。では、お大事に」
ジンに恐縮した様子の医者をチラリと見て、ベルモット、ジン、ウォッカは診察室を出て行く。
カツカツと廊下を歩き、外に停めておいたポルシェに乗り込んだ。
ジンは重傷を負っている様子を微塵も見せず、普段通りの仕草で煙草を取り出す。
その様子を見ていたベルモットはミラー越しにじっとジンの顔を見つめた。
視線を感じたのか、チラリとジンの目がベルモットに向き視線が交わる。
「…何だ、ベルモット」
「いえ?…随分機嫌が良さそうだから」
「あ?」
「貴方、自分が撃たれた時はもっと機嫌が悪いわよ?今回は違うみたいだけど。」
少し笑ってそう言ったベルモット。
ジンはチラリと自分の肩を見た。
コートの下に包帯がぐるぐると巻かれている。
血は滲んでいない。恐らく既に傷が塞がりかけているのだろう。
黙ったジンにむっと眉を寄せるベルモット。
「…ちょっとジン?」
「少し黙れベルモット…。」
「………。」
はぁ、とベルモットは態とらしくため息を吐いて口を閉ざした。
一方ジンは傷口に片手を添え、座席に深く腰掛ける。
ウォッカは運転に集中している為、ジンが今どんな表情をしているかは視認できない。
ジンは微かに目を細めると帽子を深くかぶった。
ミラー越しにベルモットに表情を読まれない為に。
「―――!兄貴、」
「?」
ウォッカの驚いた様な声に顔を上げる。
車の前ではかなりの人が一気に交差点を過っていた。
その中で唯一、動きを止めている人影がある。
すぐに分かった。両手をポケットにおさめ、此方を見る女。
肩までの癖が強い黒髪。そして同じく暗い色をしたニット帽。
「…赤井、黒凪」
「あの野郎、ノコノコと…!」
「………」
青筋を浮かべて眉を寄せたウォッカ。
今すぐ撃ち殺してやりたい所だが、いかんせん人が多すぎる。
ウォッカとベルモットが黒凪を鋭い眼光で睨みつけた。
が、ジンだけは無表情にじっと黒凪を見ている。
黒凪もウォッカ、ベルモットに目もくれずジンを真っ直ぐと見ていた。
『"殺してやりたかった"』
「!」
ピクリ、とジンが反応する。
互いに読唇術はある程度心得ている。
ウォッカとベルモットは分からないようだが、ジンは黒凪が何と言ったか、理解した。
小さく笑ったジンは声を出さず、唇の動きのみで彼女に返答を返す。
黒凪は片眉を上げると再び口を開いた。
『"先に約束を破ったのは貴方"』
「"…――――。"」
『"…馬鹿にしてるの?"』
「"さぁな?"」
殺してやりたかった、と言う言葉に返した言葉と同じことをもう一度繰り返したジン。
呆れた様に目を細めた黒凪は彼に「馬鹿にしているのか」と眉を寄せて問いかけた。
が、彼はニヤリと笑ってとぼけるだけだった。
そろそろ交差点の人が減っていく。
チッと舌を打った黒凪は前を通り過ぎた団体に紛れる様に歩き出した。
「…チッ、逃げやがったか…」
「兄貴、奴はなんて…」
「あ? 知るかよ」
「………」
ベルモットは再び帽子を深くかぶり直すジンをじっと見る。
ジンは徐に目を瞑った。
ズキ、と肩に痛みが走る。
俺はお前を殺せない
(そう呟く様に言ってやれば、)
(あの女は一瞬だけ辛そうに眉を寄せて)
("馬鹿にしているのか?")
(…と。)
(そう、言った。)
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