僕のヒーローアカデミア
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神の左手・悪魔の右手
「あー…昨日は戦闘訓練お疲れ。成績は見させてもらった。まー予想通りっちゃ予想通りって感じだな」
相も変わらず気だるげにそう話す相澤の話を皆黙って聞いている。
そんな中で「んで、今日は急で悪いんだが」と言った相澤に空気が一瞬で張りつめた。
次は何だ、また臨時テストか、それともまたペナルティ有りの実戦訓練か。
身構える生徒達に相澤が口を開く。
「学級委員長を決めてもらう。決め方はお前達で決めろ、時間内に収まるなら何でも良いから」
やっと学校らしい行事だ…!
そう目を輝かせ、次々と自分が学級委員長をやりたいと手を上げていく。
普通科では雑務を任される面倒な役であるが、ヒーロー科では集団を導くと言う素地を鍛えられる役職として人気が高い。
ガヤガヤと煩くなった教室内に唐突に「静粛に!」と堅苦しい言葉が響き渡った。
「学級委員長とは他を牽引する重要な役職だぞ! 各々がやりたいと言ってなれるようなものではない!!」
「まーた飯田か…」
「此処は民主主義に乗っ取り正当な投票で決めるべきものだ!!」
そう意気揚々と言った彼の手も天井に向かって真っ直ぐと伸ばされている訳だが、まあ本人が言っている事も分からんでもない。
しかし此処は我の強いヒーロー科。皆自分に入れるに決まっているだろう。
そう誰かが飯田に言えば「そんな中で複数表を取れる人間こそが相応しいのだ!」…との事。
そうしてとりあえずと行われた投票結果は…。
「えー、緑谷3票、左右2票…他1票または0。」
「えええ!?僕に3票ー!?」
『あれ? うちに誰か入れてるやん』
「なんでデクが!」
ガタッと立ち上がって言った爆豪に「お前になるよかまともだよ…」と瀬呂が言った。
それじゃあ委員長は緑谷で副委員長が左右な。はい、終了ー。
そう言ってふらふら出て行った相澤に皆も特に言い争う事も無く委員長を決める時間は終わりを告げた。
『――此処のご飯てめっちゃ美味しいな』
「…ずっと気になっていたんだが、君は一体何処出身なんだ?」
『うちは大阪や。大阪のちょっとガラ悪いトコやねん』
「ガラが悪い所…」
多分飯田君が来たらヤバさに泡吹くで。今度来る?
そう言って笑った黒凪に「いや、遠慮しておく…」と飯田が片手を上げた。
その様子を見ていたお茶子は頬張っていたご飯を飲み込むと「ねえねえ飯田君!」と彼に向かって声を掛ける。
「ずっと気になってたんだけど飯田君ってお坊ちゃん?」
「うぐっ、…そう言われるのが嫌で一人称を変えてみたりしたんだが…駄目だったか…」
『え、お金持ちなん? お小遣いとかなんぼなん』
「そ、それは良いだろ。……僕はヒーロー一家の次男なんだ。ターボヒーローのインゲニウムは知っているかい?」
飯田がそう問いかけると待ってましたと言わんばかりに緑谷が身を乗り出した。
勿論だよ!東京の事務所に相棒を65人も雇ってる大人気ヒーローじゃないか!
ふふん、それは僕の兄なのさ。
そう飯田が言うと「えー!」と緑谷が目を輝かせる。
「す、凄い! 凄いね飯田君!」
「凄いのは俺ではない。規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー、それが兄なだけさ」
俺はそんな兄に憧れ、この雄英高校に入学した。
嬉しそうに言った飯田に「そうだったんだね…」と麗日や緑谷が微笑む。
そんな和やかな雰囲気に包まれた途端、それを破るかのように警報が鳴り響いた。
その音に生徒達が焦った様に立ち上がり、黒凪は箸を置いて手首に手枷を装着する。
≪セキュリティー3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください≫
『避難って事は何かが侵入したって事かな。じゃないと逃げる必要無いもんね』
「まさかヴィランが…!?」
「行こう!」
傾れ込む様に屋外へ向かう生徒達と共に進んで行く。
するとあまりの人の多さと皆の焦りで通路が人でギュウギュウになり、身動きが取れない状況になってしまう。
そんな中で廊下の窓の方に追いやられた飯田が両手を使えず足元の覚束ない黒凪の腕を引く。
「大丈夫かい!? 俺に掴まっていれば…」
『掴まれへんから飯田君が掴んでて』
「そ、そうだな、分かっ……、ん?」
窓から外を見た飯田と共に黒凪も外に目を向ける。
恐らく視線の先にあるのがセキュリティー3なのではないだろうか。
1つの扉の前に見覚えのない大人数の人と扉を塞ぐようにする相澤とプレゼント・マイクが見えた。
『…あれって何の人混みや?』
「確か校舎の前に居たマスコミ連中だ…!」
『あー。オールマイトが教師になったからどーのこーの言うてた…』
「只のマスコミじゃないか、皆さん落ち着い…痛いっ!」
皆窓の外を見ている余裕などないのだろう、只管に屋外に向かっている状況だ。
軽いパニックと言っても良い様なこの状況にぐっと飯田が歯を食いしばる。
どうにか皆の視線が集まる場所に行く事が出来れば!
そう言った飯田に黒凪が徐に自分の両手に目を向けた。
『…飯田君、』
「っ?」
『飯田君て何座?』
「…星座か? 獅子座だが…」
その言葉に黒凪が微笑み手枷を外して右手を飯田に伸ばした。
うちの事信じて、右手掴んでくれへん?
…少しは迷うと思ったが、意外にも飯田はすぐに右手を浮かんだ。
その様子に微かに目を見開いて黒凪が眉を下げて笑う。
『流石は星座占い2位の男やな!』
「!」
黒凪のその言葉を最後に次に目を見開いた途端に見えたのは屋外へと続く入り口の真上である"EXIT"と記された場所の側だった。
咄嗟に壁のくぼみに掴まり黒凪によって移動させられたのだと理解した飯田が大きく息を吸う。
人混みに流されていた緑谷や麗日がそんな飯田に目を見開いた。
「皆さん、大丈夫です!! 侵入したのは只のマスコミの様です! 何も焦る事などありません!!」
「…ホントだ、マスコミだぞ!」
「はぁ!?マジかよ!」
飯田の一括をきっかけにパニックになっていた生徒達も窓から外を見る。
窓に近い人達が「あ、警察…」と呟いた事から警察も駆けつけ一件落着となったのだろう。
やがて天井付近の壁にくっついている飯田をどうにか回収し、ヒーロー科も教室へと戻った。
『…えーっと。…あー…、出久君、あんま関西弁のうちがしゃべると皆分からん事も出て来るし頼んでええ?』
「う、うん! でも僕、その…1つ皆に言いたい事があって!」
『?』
「やっぱり僕、委員長は飯田君が良いと思います! …さっきの侵入者騒ぎの時も、飯田君がパニックになってた人達をまとめてくれたから…」
ごにょごにょと尻すぼみになっていく緑谷に黒凪が笑って「うちも賛成。なんなら出久君が副委員長になる?」とノリノリで問い掛ける。
しかし緑谷が勢いよく首を横に振り「委員長は飯田君、副委員長は左右さんが良いと思う」とはっきりと言った。
え…、と固まっている飯田に「俺もさんせー」と先程の騒動に巻き込まれていた上鳴や切島も手を上げる。
「…っ、委員長の指名とあらばこの飯田天哉、全力で委員長の職務を全うする事を誓う!」
「飯田君…!」
「何でも良いからさっさと決めろー…」
「は、はいぃ!」
緑谷の返事を聞いてごろんと寝転ぶ相澤。
黒凪はずかずかと此方に向かった飯田を笑顔で迎え、そうして委員会決めを再開した。
委員長、飯田君!
(待って飯田君チョーク何処やろ…)
(え、楽な役職?あらへんよそんなん)
("あらへん"って無いって事か?)
(なー、なんでやねんって言ってよ副委員長!)
(なんでやねん、今委員決めとるんやから…)
(生のなんでやねんキター!)
(ぐ、しもた…!)
(え、"しもた"ってなんだよ!?)