僕のヒーローアカデミア
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神の左手・悪魔の右手
「(わー!遂に高校生活だ…! しかも雄英高校だなんて未だに信じられない!)」
『おはよう』
「ぅわっ!?」
『また走ってるやん。一緒に走る?』
あ、君は確か左右さん!?
驚いた様に言った緑谷に「うん。黒凪でええで出久君」そう相変わらずの人懐こさで彼女が言った。
受かった? とほぼ同時に問いかけると「うん」とこれまた同時に応える。
あ、あはは…と困った様に笑う出久とけたけた笑う黒凪。
奇妙な2人でまた雄英高校へと向かう。
「えー…っと、1-Aって何処だろ…」
『走ってれば見つかるんちゃう?』
「そ、そうかな…。あ! あった!」
2人で足を止め1-Aと記された巨大な扉を見上げる。
ごくっと生唾を飲み込む緑谷の隣で黒凪が扉に足を掛けた。
しかし開かぬ扉に「ぼ、僕が開けるよ!」と緑谷が扉に手を掛ける。
そうして開かれた先でまず目に飛び込んで来たものは。
「その足を退けるんだ! そんな事をしていて机を作って下さった方々や名誉ある先輩方に顔向け出来るのか君は!」
「あー? なーにふざけた事言ってんだテメェは」
「ふざっ…!? ふざけてなどいない!」
「(うわー、かっちゃんもあの怖い人もいる…!)」
あからさまに顔色を悪くさせた緑谷に「入試で何かあったんかな」と無表情に言い合う爆豪と飯田を見る。
すると次は背後から「あれ! もさもさ頭の!」と女の子の声が掛かった。
その声に飯田と爆豪も緑谷に気付き、緑谷は背後に立っていた麗日に「あ、良い人…!」と顔を微かに赤く染める。
「やっぱり受かってたんだね! あのパンチ凄かったもんね!」
「いっいやぁ! そそそそんな事無いって言うかその」
『凄いパンチが出来るん? 出久君て』
「ええっ!? ま、まあそんな所って言うか!」
わたわた焦る緑谷に「凄いなぁ」と笑って言う黒凪。
飯田はそんな黒凪の手枷を見ると微かに首を傾げた。
「(こんな受験者は居ただろうか…? 試験会場が別だった? いや、)」
「お友達ごっこがしたいなら他所行け…喧しい…」
『あ』
低い低い声が聞こえてくる。
振り返った麗日と緑谷、飯田。
彼等が寝袋に入った男性に固まっている中で黒凪だけが男性に笑顔を見せた。
『入試の時の人やん! おはようございますぅ』
「あー…? …おー…」
「(入試の時…?)」
飯田が黒凪の言動に眉を寄せる中で黒凪に気だるげにそう返答を返した男性が寝袋の中から這い出てきた。
時間は有限…君達は合理性に欠けるね。8秒無駄にして勿体無くね?
ぼそぼそ話しながら教室に入り彼は寝袋片手に再び口を開いた。
「担任の相澤消太だ。ヨロシクネ」
担任なんだ…。とクラスにいる皆がぼそぼそと口に出す。
教師らしからぬ風貌と言動の相澤に皆少し困っているようだった。
そんな空気の中で寝袋の中から相澤が徐に体操服を取り出し持ち上げる。
「早速だがこの服に着替えてグラウンドに出る様に。」
そうとだけ言って出て行った相澤に皆が顔を見合わせる。
そうして全員が服装を着替えてグラウンドに向かうと既に相澤が立っていた。
其方に全員で向かえば彼が全員居る事を確認すると気だるげに口を開く。
「それじゃあ今から個性把握テストを行う。中学でやったろ、"個性"禁止の体力テスト。」
「え、あの…ガイダンスとか入学式とかは…」
「時間の無駄。」
「ええー…」
あー…確か実技入試成績トップは爆豪だったな。
んあ? と相澤の言葉に爆豪が顔を上げた。
お前中学の時ソフトボール投げ何メートルだった。
相澤の言葉に「67m」と爆豪が答える。
すると相澤が爆豪にボールを投げソフトボール投げの測定位置を指差した。
「だったら"個性"使ってボール投げてみろ。それが個性把握テストだ」
「個性使ってやれんのか!」
「え、それめっちゃ楽しそう!」
爆豪が位置に着きボールに爆発を乗せて投げ飛ばす。
遠くへ吹き飛んだボールが地面に落ちると相澤の携帯にその距離が表示された。
ん。と見せられた結果は"705.2m"。
わっとクラスメイト達が笑顔を見せ「俺もやる!」と意気揚々と誰かが手を上げた。
しかしそれを見た相澤のテンションは生徒達と違って冷ややかなもので。
「ヒーロー科に来たくせに、まだガキみたいな考えでいんのか」
相澤の言葉に生徒達が一斉に言葉を止めた。
ま、それを叩き直すのも教師の役割なのかねえ…。
心底面倒臭そうに言った相澤は「だったらこうしよう」と生徒達に目を向ける。
「この個性把握テストでトータル成績最下位の者は除籍処分とする」
「じょっ除籍処分!? 私達はまだ入学初日ですよ!?」
「此処はヒーロー科の最高峰だ。自然災害やヴィラン共はこれ以上にもっと理不尽なものばかりだぞ」
3年間でこの雄英高校が与える苦難を全て全力で乗り切れ。
そうでないとこのヒーロー科は俺が何が何でも卒業させない。
はっきりと言った相澤に皆が押し黙る。
だが皆相澤の言葉に決意を新たにしたような顔をしていた。
わらわらと第一種目50m走の位置へ歩いて行く中で黒凪は徐に自分の両手を見下す。
『(今日の運勢はどうやったかなぁ…)』
「運勢がどうとかはもう通用しねえぞ。お前はもう此処の生徒なんだ」
『…そんなプレッシャーかけやんといてくださいよ』
第一種目、50m走が始まり各々が"個性"を使って様々な結果を叩き出して行く。
そうして順番がやってきた黒凪は両手を祈る様に組んだままでしゃがみ込み地面に手を着いた。
位置について、よ――い…。
そんな声が掛かりパンッとスターターピストルの音が鳴り響く。
気だるげに振り返った相澤は物凄い勢いでゴールにたどり着いた黒凪に目を細めた。
≪5秒03≫
「(す、凄い…左右さんって両手に"個性"がある筈なのに…)」
"個性"を使わずに5秒台なんて凄いとしか言いようがない。
…左右さんはきっと、足に使えない"個性"の分を頑張って来たんだろうな。
僕も頑張らないと。そう決意をして緑谷が顔を上げる。
その様子を相澤は何も言わず見つめていた。
第二種目は握力検査。黒凪はペアとなった峯田の前で手枷を外し両手を解く。
『……。』
「…あのさ、握力…」
『…うん、ちょっと待ってな…』
じーっと己の右手を見つめて「おっ、運ええやん」と呟いた黒凪が自分の右肩を右手でぽんと叩く。
そして握力を測定すると右手は230キロ、左手は45キロとなった。
峯田は230キロと言う結果に言葉が出ない様だった。
第三種目は立ち幅跳び。黒凪は両手を離したままで右手で両足に触れ、一気に踏み込んだ。
「!(個性を使ってるな…。今日は"運が良かった"って事か)」
相澤は黒凪の結果を書き込み強く握られた彼女の左手に目を細める。
続いて第四種目、反復横跳び。
これも立ち幅跳びと同様にして規格外の結果を叩きだす。
第五種目のソフトボール投げ。出席番号順に進んで行き、やがて緑谷の番になった。
「ふむ…緑谷君はこのまま同じ様な成績ではまずいな」
『そうなん?』
「当たり前だろうが! アイツは無個性のザコだぞ!」
『無個性? パンチは?』
あ? パンチィ?
目付きを悪くさせて言った爆豪に黒凪が首を傾げる。
その反応の薄さを見た爆豪は「ぼーっとしやがって」とそっぽを向いた。
黒凪はそんな爆豪から目を逸らすとボールを持って腕を振り上げた緑谷に目を向ける。
『(頑張れ)』
「っ!」
ぐんっと振り下された腕。
その勢いに反してボールの飛距離は全く伸びず、46mと言った結果で終わった。
え…? と驚いた様に手を見下ろす緑谷に微かに眉を寄せ、そしてふと髪が逆立っている相澤に目を向ける。
『…先生、何かしたでしょ』
「あぁ。"個性"を消した。」
「え…」
「つくづくあの入試は合理性に欠ける。その所為でお前の様な奴も入学出来ちまうんだからな」
逆立つ髪と共に揺れ動く首元の布。
その下に見えたゴーグルに緑谷が目を見張った。
そうか、視ただけで他人の"個性"を抹消する事の出来る抹消ヒーロー、イレイザーヘッド…!
そう言った緑谷に「え? そんなヒーロー居た?」と誰かが呟く。
その言葉に黒凪が「うち知ってる」と口を開いた。
『メディアへの露出を嫌ってるヒーローやから知名度はめっちゃ低いけど列記としたプロヒーローやで』
「私も聞いた事ある。アングラ系のヒーローだった筈…。」
「…見た所、"個性"が制御出来ないんだろう」
「!」
緑谷が息を飲み、その様子を黒凪がじっと見つめる。
また行動不能になって周りに助けて貰うつもりだったのか?
相澤の言葉に「そんなつもりじゃ、」と緑谷が否定する。
しかし瞬く間に相澤の首元の布が緑谷を引き寄せ「お前にそのつもりはなくとも周りはそうせざる負えねえだろうが」と緑谷を睨み付けた。
「ヒーローってのは1人でも多くの人間を災害やヴィランから護る為に存在する。所がお前はどうだ、1人助ける度にボロボロになってお前も助けを待つ人間になるつもりか」
「っ、」
「緑谷出久。お前はヒーローにはなれやしない」
『先生。言い過ぎやと思うんですけど』
触るなよ。
相澤の言葉に黒凪が動きを止めた。
今緑谷に触ればお前も緑谷も失格だ。
『……』
「今日のお前は誰にも触れるな」
相澤のその言葉に遠目に見ていた皆が顔を見合わせる。
緑谷も黒凪を唖然と見ると己を縛り付けていた相澤の布が解け緑谷が俯いた。
相澤が目を閉じ、布も元の位置に戻って行く。
「お前の"個性"は戻した。ボール投げは2回だ、好きなようにやれ」
『…出久君、』
「左右。…来い。」
『……』
右手をぐっと握って離れた黒凪は緑谷を見る相澤の隣に並んだ。
出久君は先生が思ってるような子やないですよ。
ぼそっと黒凪が言うと相澤はため息を吐いて緑谷から目を離さず口を開いた。
「んな事言っても選択肢は2つだ。玉砕覚悟で本気でやるか、委縮して最下位に落ちるか。」
『……』
「どっちにしろアイツに見込みは――…」
ぐんっとボールが飛んで行く。
…先程よりも何倍も、何百倍も長く。
相澤が目を見開き、緑谷の手に目を向けた。
赤く充血しているのは人差し指だけ。
ボールの飛距離は、
「…705.3m…」
「先生…っ」
「!」
「僕はまだ、動けます…!」
にやり、そう笑った相澤に黒凪が緑谷に目を向ける。
そして彼の笑顔にまぶしいものを見る様に目を細めた。
――あぁ、凄いなぁ。
『(あんな頑張れる人、まだおるんや)』
「んじゃあ次。えー…」
「テメェデク…!!」
「え」
「んだその個性は! ワケを言えクソがぁ!!」
突然走り出した爆豪。
そんな爆豪に思わず縮こまる緑谷。
それを見た黒凪はすぐさま足を踏み出した。
「退け関西女!」
『何よ関西女って。うちは黒凪ってゆうんやけど。』
爆発を帯びた拳を振り上げる爆豪に応戦する様に黒凪も右手を強く握りしめた。
しかし爆豪の背後にちらりと見えた相澤に拳を下ろしすぐさま身体を捻じって足を振り上げる。
それを見た相澤は舌を打ち「左右!!」と怒号を響かせた。
目を見開いた黒凪はぴたっと動きを止めた爆豪の目の前すれすれで足を止める。
「…もうちったぁテメェの担任を信用しろ。止める時はしっかり止める」
『……』
ギリギリと布に動きを止められ動こうと震える爆豪は黒凪を睨んでから振り返った。
その布は特別性だ、千切れねえよ。
そう言うと相澤が目を見開いたままで爆豪を睨み付ける。
「あんまり"個性"を使わせんな。俺はドライアイなんだ」
「「(凄い"個性"なのに勿体無い…!!)」」
皆が唖然と相澤を見る中で相澤が目を閉じ"個性"が解除される。
解放された爆豪と黒凪が睨み合う中、黒凪に相澤がボールを投げ渡した。
睨み合うならお前が次にやれ。…ほら、さっさとしろ。
そう言って催促すると黒凪が静かに動き位置に着いた。
「あ、ありがとう左右さん! えっと、…頑張って!」
『…うん。頑張るわ』
出来たら褒めてよ~。
冗談半分で言って腕を持ち上げた黒凪に「う、うん」と緑谷が頷いた。
そんな緑谷の目の前で黒凪が思い切り右手でボールを投げると緑谷と同じ様に遥か彼方へボールが飛んで行く。
やがて相澤の携帯へ記された距離は677.8m。
次、左手。と声が掛かると黒凪は左手でボールを持ち振り上げる。
「(凄いなあ、左手はどれだけ飛ぶんだろう…!)」
せいっと妙な掛け声をして投げ飛ばされたボール。
右腕同様に落ちる位置など見えないと高を括っていたクラスメイト達だったが、予想外に飛距離は伸びず。
よし、50mな。そう言った相澤に「さっきの結果は一体…」と皆が黒凪に目を向ける。
黒凪は両手をぐっと握りしめポケットに突っ込んだ。
やがて全ての種目が終わり、全員で最初と同じ様に相澤の前に集合する。
んじゃあトータルの成績を発表する。
口頭は面倒なんで作った表で確認してくれ。
そう言って携帯を操作すると相澤の携帯から作られた表が浮かび上がった。
黒凪は震える緑谷の隣で成績を確認し、ゆっくりと顔を上げた緑谷に目を向ける。
「…っ!」
『…出久君、』
「(最下位は…除籍…)」
緑谷の順位は20人中の20位。
黒凪が徐に相澤に目を向けて口を開こうとした時、それより早く彼が口を開いた。
あ、言っておくが除籍の話は嘘だ。お前等の"個性"を最大限に引き出す為の合理的虚偽。
その言葉に「ンギャー!!」と緑谷や麗日、飯田が叫ぶ。
その様子を横目に黒凪は少し驚いた様に相澤を見上げた。
『(嘘には見えへんかったで…?)』
「これで個性把握テストは終了な。全員教室に戻ってろ、これからのカリキュラムとかを説明するから」
『…先生、うち出久君と保健室行って来ますわ』
「あぁ。ちゃんと治して貰え」
"授業で負傷しました"と書かれた紙を受け取った緑谷と共に保健室へ向かって行く。
そうして保健室にてリカバリーガールに傷を癒される緑谷を待っていると持って来ていた携帯が着信を知らせた。
表示された"父"の文字を見た黒凪はすぐさま携帯を耳に押し当てる。
『もしもし?』
≪…あぁ、黒凪か?どうやそっちは≫
『担任の先生は相澤先生って言う人やったわ。…父さん、身体は大丈夫なん?』
≪うん、今日は調子がええわ。…今日はプルフラスやったみたいやなあ≫
うん。体力測定あったからラッキーやったわ。
眉を下げて言った黒凪に「へーよかったな」と返すと「相澤先生って相澤消太か?」と逆に問いかけてくる。
せやで。…え、知ってんの? そう返した黒凪に電話越しに小さく笑った。
≪相澤先生は父さんの友達や。また挨拶しといてや≫
『へー、そうやったん! 分かった、また話しかけるわ!』
≪うん、よろしく…げほっ、ごほっ≫
『わ、大丈夫? もう寝た方がええんちゃう? …お母さんもまだ寝てるやろ?』
うん、母さんも時折咳をしとるけどちゃんと眠てる。
そう言った父に「うん」と答えた黒凪は出て来た緑谷に「じゃあ切るわな」と通話を切った。
「あ、ごめん、誰かと電話中だった?」
『友達や友達。気にせんでええよ』
そう返した黒凪に「そうなんだ」と笑って一緒に教室へ戻って行く。
やがて教室にてカリキュラムの説明を訊き終わり、下校時刻となった。
黒凪は早々に教室から出て行った相澤の後を追いかける。
『相澤先生』
「うん?…左右か」
『父が先生と友達やって言うてたから改めてしゃべりに来たんです。父の名前はねえ』
「左右翔真。母親は左右幸惠だろ」
微かに目を見開いた黒凪に「俺も此処のOBだからな」と言えば彼女は少し納得した様だった。
お前の父親は俺の恩師だ。母親は備品を担当してた。
その言葉に「それって友達言います?」と真顔で返せばその様子に相澤がくっと笑う。
「その真顔で馬鹿みたいな質問してくるところ、母親似だな。」
『…確かに馬鹿やけど』
「何言ってる、どうせ頭は良いんだろ」
『何言うてはるんですか。うちなんか底辺の人間やで先生』
どうだかなあ。そう言って笑った相澤は「どうだ、2人の様子は」と打って変わって真剣な顔で問い掛ける。
その表情を見た黒凪は少し顔を伏せると眉を下げて口を開いた。
なんや、知ってはるんですか。その言葉に相澤は「あぁ」と徐に頷く。
部屋を出ようとした轟が2人の会話に足を止める。
『だいぶ悪なってます。…この"個性"も強なってきてるし、そろそろ…』
「確かに今日のお前の"個性"を使っての結果は目覚ましいものだった。……潮時だろうな」
『…うちもそう思ってます』
目を伏せて両手をぐっと握った黒凪。
そんな彼女の両手は手枷で固定され、祈る様に組まれている。
…あの2人をじわじわ殺していくその"個性"を憎む気持ちは分かる。
万が一でも勝手に発動しないようにその手枷を付けてるのは知ってるが、その手枷はお前にとって戒めの意味もあるんじゃないのか。
相澤の言葉に黒凪が小さく頷いた。
「…。お前は立派なヒーローになれ。両親の様にな」
『…はい』
「その為のこの場所だ。暴走した時は俺が止めてやる」
怖がらずに思い切りやれ。2人の分もな。
ぽんと頭に乗せられた手に黒凪が小さく頷いた。
その様子を見ていた轟は目を細めて逆方向に歩いて行く。
2人とは両親の事だろうか。…"個性"の所為で大切な人を失ってしまう。
そんな彼女の状況は何処か自分と似ている様な気がした。
力を憎むな
(マジで父親にも母親にもそっくりだなあいつ…)
(こーら相澤。また寝てるやんか)
(今聞かなくても良い話だったでしょ…)
(――相澤君ゴーグルの新調? 少し待ってね、出来上がってるから)
(…うす)
(…俺がちゃんと面倒見てやりますよ、せんせ。)
(動けないあんたの代わりにな)