僕のヒーローアカデミア
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
神の左手・悪魔の右手
雄英高校ヒーロー科1-Aに通うことになった女の子がヒーローになるまでの物語
原作的にあり得ませんが3人目の特別推薦枠です。設定モリモリですみません。
雄英高校入試当日。
1人の少女が町の中を物凄い速度で駆け抜けていた。
肩から掛けるショルダーバックを手枷で揃えられた両手で抑えながら人にもぶつからず、ただ静かに走る。
そんな中で少し前の方にも己と同じ様に雄英高校への道のりを少し小走りに走る少年。
『(…あれ?なんやろあの子、まだ時間あるのに走ってはるわ)』
「(ドキドキしていても立っても居られない!遂にこの日が来た…!)」
『…なぁ、雄英高校行くん?』
「え?」
少年が振り返る。
彼は隣で自分と同じ速度で走る少女を見て、それから彼女の両手首へ視線を落とした。
手枷で固定された両手は祈る様に組まれている。
「("個性"の影響なのかな…?)」
『雄英高校の入試?』
「え、あ、うん!」
『そか』
せやったら一緒に行こうや。
人懐こい笑顔で言った彼女に「あ、うん…?」と状況が良く分かっていない様子で少年が頷いた。
名前は?なんて言うん?と訛っている話し方に関西の人だろうかと思う。
彼女はそう思われる事をなんとも思っていないのだろう、自分を見る少年ににっこりと笑った。
「ぼ、僕は緑谷出久。…君は?」
『…うちは左右黒凪。出久君で良いよな? よろしくなぁ』
「あ、うん!…えっと、」
『黒凪でええよ。』
笑顔でまた彼女が言った。
入試と言うこの日にちっとも怯えていないようだった。…不思議な人だなあ。そう思う。
そうして雄英高校に辿り着けば沢山の生徒達が吸い込まれる様に校舎の中に入って行って、その様を見て緑谷がごくっと息を飲んだ。
その隣で周りを見渡した黒凪は立てかけられている看板に近付いて行く。
『んー…』
「何見てるの?…あ、特別推薦入試の教室…?」
『うん』
「…え゙?」
緑谷の声に「え?」ととぼけた顔で振り返る。
まさか君って、そこで言葉を止めた緑谷に「特別推薦枠取れたんよー」と黒凪がピースサインを見せた。
ええええっ!?と叫んだ緑谷に校舎に向かっていた生徒達が一斉に振り返る。
その中には緑谷と同じ中学校に通う爆豪も居て、彼は緑谷に向かって大きく舌を打った。
「静かにしやがれデク…うぜぇぞ」
「か、かっちゃん!ごごごごめんね!」
「チッ」
緑谷を強く睨んで校舎に入って行く爆豪。
彼の姿を見た周りの受験生達は「うわー…爆豪だ…」と少し恐々と遠巻きに彼を見ている。
友達?と問う彼女に「うん、同じ中学校なんだ…」と緑谷が困った様に言った。
『へー…。…デクやないのになぁ。"いずく"やのに。』
「う、うん。…そっそれより君って特別推薦受けるの!?」
『せやでぇ』
「す、凄いね!?」
『凄ないわ全然!』
いやいや凄いよ!
目をキラキラさせて言う出久に暫し瞬きをして「そう?うち凄いかなぁ」と照れたように彼女が言った。
うんうん、凄い凄い!そう言って尚褒めちぎる出久に黒凪が眉を下げて小さく笑った。
『ありがとうなぁ、自信湧いてきたわ』
「!(…そっか、やっぱり特別推薦でも緊張するよね)」
『それじゃあ行ってくるわ。出久君も頑張ってなぁ。…多分出久君なら受かると思う。』
「う、うん!」
それじゃあ!と手を振る緑谷に手を振り歩いて行く。
真っ直ぐ校舎に向かう受験生達は特別推薦者の試験会場へ向かう黒凪に大きく目を見開いたり、舌を打ったりしていた。
そんな視線を受けながら進んで行くと黒凪はふと足を止めて空を見上げる。
『(あー…。"絶対受かる"なんて適当な事言うべきやなかったよなあ)』
推薦入学者控室。
大きくそう記された部屋の扉を足で開こうと足を持ち上げつま先で扉の下の方を軽く蹴る。
しかし上手く扉が開かず何度か同じ事をしていると息を吐き足を降ろして腰を落とした。
『(しゃーない、ごめんやけど蹴破るで…!)』
「よせ、俺が開ける」
『う?』
声に振り返る。
右目は黒、左目は青。しかも左目の辺りには火傷跡。
髪も左右で違っている。右半分は白、左半分は赤。
そんな特徴的な姿をした受験生が此方を見ていた。
『…特別推薦枠?』
「あぁ。あんたもだろ」
『うん』
扉を開き此方を見る。
その視線に「ありがとう」と礼を言って中に入った。
彼は黒凪の後に部屋に入ると静かに扉を閉めようとした。
「あー、別に閉めなくて良い。」
しかし閉められけた扉を片手で止めた長髪に無精髭の男性が顔を覗かせ彼が手を離した。
恐らく講師、なのだろう。
彼はくたびれた目で己をぽかんと見ている2人を見ると徐に黒凪の両手首に目を落とした。
はーん、こいつが大層な名前の能力を持った推薦者ねえ…。
口には出さずそう呟いた相澤は「空いてる席に座りな」と声を掛けて黒板の前に移動した。
部屋の中にいるのは合計で5名だった。
「それじゃあ今から特別推薦入試の入試内容を発表する。とは言っても入試要項に書いてあった通り軽い実技試験だけだ、あまり緊張しなくて良い」
これから行う試験はいわば"建前"だ。
この雄英高校に特別推薦を受け入れられただけでほぼ入学は決定してる。
つらつらと話す相澤の言葉を5人は静かに聞いていた。
「…それじゃあ試験会場に移動しようか。ヴィランに見立てた仮想の敵を1体ずつ倒してくれ、それで試験は終了だ。」
相澤が扉を開き、その後に続こうとして轟が此方を見る。
行け、そう言っている様な視線に笑って扉を潜り閉じられた扉を振り返った。
『ありがとうねぇ』
「あぁ」
…試験会場に辿り着けば巨大な試験会場にはその規模の会場に見合わぬ人の大きさ程度のヴィランに見立てた機械が立っていた。
誰が先にやる?
そう気だるげにヴィランを見て言った相澤に「はい」と手枷に固定された両手を黒凪が上げる。
「どーぞ。」
『…あのね先生』
「ん?」
『今日はちょっとうち運が悪いんです。…"個性"を使わんでもええですか?』
運が悪い。その言葉に首を傾げた相澤だったが「あぁ。別に構わない」と返す。
その言葉に頭を下げた黒凪は徐に足を踏み出した。
ぐんっと飛び上がった黒凪を相澤も轟も無表情で見上げている。
彼女は固定された両腕を持ち上げると身体を捻じってヴィランを蹴り飛ばした。
その一撃で粉砕したヴィランに相澤と轟が「成程な」と同時に目を細める。
「(力を籠めれば壊しちまうから扉もロクに開けられねえのか)」
「(両手を使えなくしてる分はちゃんとやってるらしいな)
『(見た目に反して弱っちいやん)』
また身体を捻じり器用に着地すると黒凪が顔を上げて相澤を見る。
相澤は小さく頷くと、彼女の後ろに並んでいたからだろう、轟に目を向けた。
それを見て自身の順番を悟ったらしい轟が歩きだし続けて現れたヴィランを見上げる。
黒凪が小走りに相澤の側まで駆け寄って振り返れば、すでにヴィランは氷漬けとなっていた。
「――――ん、それじゃあこれで試験は終了。1週間後に入試結果が自宅に送られる筈だ。」
相澤の言葉に頭を下げて出口へ向かって行く。
少し前を歩く轟の隣に黒凪が小走りに近付いた。
うち左右黒凪って言うねん。君は?
人懐こく問い掛ける黒凪に轟きの目がちらりと向いて彼も徐に口を開く。
「…轟焦凍だ」
『とどろきしょーと? かっこええ名前やね!』
笑って言った黒凪を少し驚いた様に轟が見下した。
そんな轟を笑顔で見返し「一緒に帰ろ?」と首を傾げた彼女に轟が頷く。
彼の隣を歩く黒凪はやりたい事は全てやったとでも言うように楽しそうに歩いていた。
一瞬の推薦入試
(…よっしゃ、受かっとる)
(そう言えば)
(出久君は合格出来たんかなあ)
1/6ページ