犬夜叉
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貴方たちのために、堕ちる
「お、見っつけた♪」
「蛇骨!此処に居やがったか…!」
「俺を追ってくるなんて可愛いなぁ…」
「るせぇ!さっさとその四魂のかけらを寄越せ!」
ヤダよ、渡せばまた死ぬんだから。
そう言って刀を振り上げた蛇骨。
やはり不自然な方向から襲ってくる刃には反応し辛く、再び犬夜叉の腕に傷がついた。
黒凪は何も言わずその様子を地面に座って眺めている。
犬夜叉は一瞬黒凪を見て眉を寄せた。
《黒凪様。》
「っ、黒凪!」
『?』
「桔梗がテメェを封印した意味がまだ解らねェのか!」
犬夜叉の脳裏に黒凪を尊敬の目で見ていた桔梗が過る。
桔梗は確かに黒凪を慕い、そして憧れていたのだ。
そんな彼女を己の手で封じた桔梗はどれだけ辛かったのだろうか。
黒凪は薄く笑うと犬夜叉を真っ直ぐと見据えた。
『解るさ。だが、…私にとって桔梗は彼等の足元にも及ばんよ』
「どいつもこいつも黒凪、黒凪ってうるせぇんだよ!」
「っ!」
「俺はアイツの事が嫌いなんだ。…あんまり俺との楽しみの最中にアイツを見てると斬っちまうぜ?」
微かに怒りを持った様な表情で言う蛇骨に犬夜叉が眉を寄せる。
その時、空を飛んで来た七宝が犬夜叉の名を呼んだ。
犬夜叉は蛇骨から目を逸らさず「何だ!」と七宝に応える。
七宝は切羽詰まった様子で口を開いた。
「大変なんじゃ!七人隊の1人がかごめを攫った!」
「んだと!?」
「犬夜叉にしか戦えん!儂では無理じゃ!」
「…チッ、戻るぞ七宝!」
逃がすかよ、と刀を振り上げる蛇骨。
が、七宝がすぐさま妖術で蛇骨を抑えた。
蛇骨は体にまとわりつくキノコの様な生物に眉を寄せると犬夜叉の背中を見る。
動けそうにない蛇骨に黒凪は静かに立ち上がり、キノコに手を触れた。
すぐさま解けた妖術だったが、犬夜叉の姿は既にない。
「追うか…、めんどくせぇなぁ」
『…そう言えば煉骨や凶骨はどうした?』
「煉骨の兄貴は銀骨の面倒を見てる。凶骨はそっこーでやられた。」
当然の様に黒凪を持ち上げる蛇骨。
これも七人隊のルールの様なものだ。
身体能力の低い黒凪を連れているのはいつも蛮骨だったが、彼が居ない場合は他が必ず連れて行く。
2人で犬夜叉に追いつき、草むらから覗き込む。
するとそれと同時だろうか、犬夜叉と似たような姿をした妖怪が霧骨を真っ二つに斬り捨てた瞬間だった。
「!…あの野郎、あの霧骨を虫けらみてぇに…」
『…奴は私でも危うい。大妖怪の類だ』
「チッ、長居は無用だな。煉骨の兄貴の所に行くぜ」
『あぁ』
再び走り出す蛇骨。
やがて1つの寺に辿りついた。
中に入れば、僧侶の服を来た煉骨が振り返る。
煉骨は黒凪の姿を見ると目を見開いた。
「黒凪!?お前、その姿…」
「封印されてたんだってよ。歳を取らねぇ何てずりぃよなぁ」
「良かった、これで大兄貴も機嫌を損ねずにいられる…」
「…あ。確かに。ババアになってたら蛮骨の大兄貴なら発狂しかねねぇや」
そんな会話をしながら3人で座布団の上に座る。
煉骨は霧骨の訃報を聞き、ただ一言「そうか」と言った。
既に凶骨、霧骨が死んでいる。
霧骨を殺した奴はどんな奴だった?と蛇骨と黒凪を見る煉骨。
黒凪が口を開いた。
『恐らく犬夜叉と同系列の妖怪だ。少なくとも半妖ではない。寧ろ大妖怪だろう』
「…そうか…。そんな奴の情報は聞いてないな」
「…なあ煉骨の兄貴。俺達を蘇らせた奈落ってのはどんな奴なんだよ」
「……。奈落に会ったのは大兄貴だけだ。奈落は四魂のかけらを俺達の分も含め大兄貴に渡した」
奈落を追う犬夜叉と妖狼族の鋼牙を殺せば四魂のかけらが一生俺達の物になるって言う約束らしい。
そう言った煉骨に黒凪が微かに眉を寄せた。
四魂のかけらは元は四魂の玉。
かけらが欠けている以上、本来ほどの力は発揮できないだろう。
…そんなかけらを譲るのか?
『…煉骨、』
「ん?」
『お前達は一体どうやって蘇った?体は何で出来ている』
「何でって…。首元に四魂のかけらを埋め込み、血と肉を再生して…」
そこまで聞いた黒凪は「そうか…」と目を逸らした。
早めに手を打たなければならない。
そう言えば銀骨はどうした?と蛇骨が煉骨に問いかける。
銀骨は犬夜叉の元に…、そう言った煉骨にカッと蛇骨が目を見開いた。
「ちょっと待てよ!犬夜叉は俺の獲物だろぉ!?」
「まあそう言うな。お前には他の仕事が…」
「ひでぇよぉ…、俺が犬夜叉を斬りたかったのによぉ…」
「子供じゃねぇんだからそう言うな。急いで帰ってくりゃあ最期ぐらいは会えるだろうよ」
そんな煉骨の言葉にむ、と眉を寄せる蛇骨。
蛇骨はため息を吐くと徐に立ち上がった。
一方黒凪は座ったまま蛇骨と煉骨を見上げる。
煉骨は黒凪を見ると考える様に天井を見上げた。
「うーん…、黒凪は犬夜叉達に顔を知られているからな…。蛇骨と一緒に行って貰おうか」
「ええー…、また俺が面倒見るのかよぉ」
「仕方ないだろ。こっちには銀骨と俺、そっちには黒凪と蛇骨。丁度良いじゃないか」
「でもよぉ…」
駄々をこねる蛇骨を宥め、部屋を出て行った煉骨。
渋々と言った風に蛇骨は再び黒凪を抱えた。
やがて日も落ち、辺りが暗くなる。
そんな時目当ての男を見つけ蛇骨が刀を抜いた。
「うおっ!」
『…妖怪か』
「おう。妖狼族の鋼牙だってよ」
「……テメェ、凶骨とか言う奴の仲間だな?」
鋼牙がそう言い、蛇骨はニヤリと笑った。
再び刀を振りおろし、刃が鋼牙に向かう。
鋼牙は素早く回避し黒凪と蛇骨を睨んだ。
黒凪は相手が妖怪だと言う事で弓を構え、鋼牙に矢を向ける。
「!…巫女か?」
『蛇骨。早く済ませたいんだろう』
「ああ。俺の犬夜叉が死ぬ前に、な!」
「っ…!」
ぐにゃりと刃が曲がり、鋼牙を襲う。
鋼牙は素早く移動しながら口を開いた。
犬夜叉が何だって!?
そんな鋼牙の言葉に刀を止める蛇骨。
「あー?お前犬夜叉の知り合いなのか?」
「犬夜叉はどうでも良い!連れに可愛い女が居ただろ。そいつはどうした!」
「知らねぇよ女なんざ。もう死んでるんじゃねーの?」
「何…!?」
目を細めた黒凪が矢を放つ。
桃色の光を灯す破魔の矢に目を見開いた鋼牙は間一髪で回避した。
そしてその勢いのまま蛇骨刀を潜り抜け、蛇骨の懐に入り込む。
眉を寄せた蛇骨は手首をくるりと回し、鋼牙の拳を受け止めた。
ぐぐぐ、と力で押し合う形になった時、黒凪が再び矢を放つ。
「っ!」
「ってー…、やっぱ妖怪って皆馬鹿力なんだなぁ…」
「くそ、埒が明かねぇ…!」
「あ。逃げた」
くるりと方向を変えて走り出す鋼牙。
その背中を見た蛇骨は目を見開いた。
かなりの速度で去っていく鋼牙。
到底追いつけるものではない。
「あーあ。逃げちまった…」
『安心しろ、一発放つ』
「それで煉骨の兄貴も許してくれっかな?」
『さあな』
しゅん、と矢を放つ。
鋼牙は背後から迫る矢に気が付くと跳び上がり回避した。
それを見た蛇骨はぐっと背中を伸ばし、黒凪に手を伸ばす。
完全に諦めたのか、蛇骨は煉骨の元へ急いだ。
「お!マジで!?」
「喜ぶなよ。失敗したんだぞ?」
『…珍しいな、お前が獲物をみすみす逃がすなんて』
「半妖っつっても人間とは桁違いに頑丈だったからな…。読みが外れた」
そう言いながら体の半分を無くした銀骨の側に熱で溶かした鉄を流し込む。
銀骨を改造するつもりであるらしい煉骨の背中を見上げながら蛇骨は小さく笑った。
これでまた犬夜叉に会える。そう考えているのだろう。
「蛇骨、お前こそ珍しく獲物を逃がすなんてな…」
「仕方ねぇよ。鋼牙って野郎、すんげー足速かったんだ」
「黒凪の弓でも追いつかなかったのか」
『避けられた。…構わん、気休めで放った1発だったからな』
気休めって…。と困った様に眉を下げる煉骨。
彼が強く出られないのも昔と何一つ変わらない。
実際、七人隊のメンバー達は皆蛮骨の恋人である黒凪には気を使っていた。
蘇った今でもその癖は抜けないのだろう。
「睡骨はこの村に居るらしい」
「…村っつってもよぉ煉骨の兄貴。銀骨がぶっ壊し過ぎて村に見えねぇんだけど」
『………。』
腕を組み銀骨の上で胡坐を掻く蛇骨、その隣に座る黒凪。
そして村を破壊する銀骨を操る煉骨。
4人は逃げ回る人々の顔を確認しながら目当ての男を探す。
睡骨と言う名の七人隊の1人は二重人格を持つ男。
恐らく仲間の元へ帰って来ない所を見ると善人の人格である゙医者゙の状態なのだろう。
「巫女様もお逃げ下せぇ!」
「私は大丈夫だ、」
『!』
「お、巫女だってよ。」
煙の向こうから聞こえた会話。
巫女の声に微かに眉を寄せた黒凪は弓を持ち上げた。
対抗心でも燃やしてんのか?と冗談交じりに問いかける蛇骨。
黒凪は何も反応を返さず煙を見る。
やがて煙が晴れ赤い巫女装束が目に入った。
「『!』」
同時に目を見開く両者。
黒凪は煉骨の名を呼び銀骨の動きを止めさせた。
唖然と銀骨の上に立つ黒凪を見上げたのは桔梗だった。
変わらぬ桔梗の姿に眉を寄せる黒凪だったが、桔梗は諦めた様に眉を下げる。
「成程、蘇ったのはやはり貴方の…」
『……おかしいな。お前に封印されてから既に50年は過ぎた筈だが』
「…私もそこの亡霊と同様に蘇った。奈落では無く他の妖怪の手によって」
これも因縁か、と黒凪が笑った。
私が此処にいる理由は分かるな?
そう問うた黒凪に小さく頷く桔梗。
すると微かな足音が近づいてきた。
「桔梗様!これは一体…!」
「お、」
『!』
「…なんだ、逃げてやがったのか?睡骨」
え?と黒凪達を見上げる男。
彼は動揺した様子で眉を寄せた。
桔梗は親しげに話しかけて来た七人隊達に眉を寄せ傍らの男を見上げる。
確かにこの男の名は睡骨。この破壊された村に数日前から住んでいた医者だ。
桔梗は彼の首の四魂のかけらに気付いていたが、あまりに澄み切ったかけらに様子を見ていたのだ。
『…睡骨。貴様その女が誰だか分かっていて隣に立っているのか?』
「んなワケねーだろ黒凪。アイツまだ゙医者゙だぜ?」
「……そう言えば黒凪。あの巫女は?」
『あの女だよ、私を封印したのは』
へぇ…、と煉骨が桔梗を見下した。
一方話が理解できていないらしい睡骨はおろおろと周りを見渡している。
おい睡骨、と蛇骨が声を掛ける。
ビクッと反応を示した睡骨に桔梗が訝しげに目を細めた。
「折角迎えに来てやったんだ、早くこっちに来いよ。」
「…だ、誰だ…誰なんだ、お前達は、」
「あぁ?…おい煉骨の兄貴。睡骨の野郎まだ寝惚けてるぜ?どうすんだよ」
寝惚けている。その言葉に更に桔梗が眉を寄せた。
するとまた足音が聞こえ桔梗が微かに振り向いた。
黒凪達もチラリと足音がする方向を見る。
現れたのは犬夜叉達だった。
犬夜叉達は桔梗の姿を見ると目を見開き、足を止める。
「桔梗がどうして此処に…」
「…犬夜叉か。お前達もこの地に居たのだな」
『……煉骨。犬夜叉以外も生きている様だが』
「あ?…困ったな、誰も死んでないとは」
はー…、とため息を吐く煉骨。
かごめは黒凪と桔梗を交互に見ると微かに眉を寄せた。
やはり同等の霊力と美しさを持っている。
…いや、今は邪気も混ざっている黒凪と桔梗なら桔梗の方が霊力は上か。
そんな事を考えていると煉骨が手に持っているひょうたんを持ち上げた。
「蛇骨。お前は睡骨をやれ」
「はぁ!?また俺は犬夜叉の相手じゃねーの!?」
「お前が一番適任だ。黒凪は…」
『私は桔梗だ』
そうだな、と頷いた煉骨は薄く笑いながら犬夜叉達を見下した。
犬夜叉が煉骨を見上げグルル、と唸る。
ため息を吐いた蛇骨は銀骨から降り睡骨を呆れた様に見た。
黒凪も銀骨から静かに降りるとゆっくりと歩き蛇骨の隣に並ぶ。
「おい睡骨。さっさと起きてくれよう」
「起きる…?何を言っているのか知らんがお前達の狙いは私だろう!何故村の皆を攻撃した!」
「なんでつったってなぁ…。」
あー、もうめんどくせえ!
そう言った蛇骨は刀を振り上げ睡骨の足元にぶつけた。
目を見開いて数歩下がる睡骨。
その様子を見た桔梗は彼の前に立ち蛇骨に向かって矢を放った。
うお!と矢を避ける蛇骨。
眉を寄せた蛇骨は黒凪を見た。
『…桔梗。貴様の相手は私だ』
「……。貴方を止められたと思っていた」
『止められた?…残念だったな。天は私に味方した』
そう言って笑った黒凪の背後で銀骨が此方を向く。
放て銀骨、そんな煉骨の声と同時に弾丸が桔梗達に向かった。
桔梗と睡骨が吹き飛ばされる。
銀骨によって既に吹き飛ばされていた犬夜叉は鉄砕牙を思わず手放した。
鉄砕牙の行方を目で追った犬夜叉は桔梗の悲鳴に顔を上げる。
「桔梗!」
「くくく、よそ見してると仲間が死ぬぜ犬夜叉」
かごめ達の周りを炎が囲う。
犬夜叉はすぐさまかごめ達の元へ向かい炎を引き裂いた。
黒凪が徐に矢を構え犬夜叉に向かって放つ。
犬夜叉の腕に深く刺さった矢にかごめが目を見開いた。
「ぐ、」
「犬夜叉!」
倒れた犬夜叉の背中を見ていた黒凪はくるりと振り返り桔梗を見下した。
彼女の胸元から魂が3、4個程抜けていく。
動かない桔梗に目を見開いた睡骨が駆けより彼女を抱き起した。
「桔梗様、桔梗様!」
「睡骨様ー!」
「!?」
睡骨様、と名を呼びながら駆け寄ってくる子供が2人。
目を見開いた睡骨は「来るな!」と必死に叫んだ。
が、子供達は必死なのかその声に応える事無く走り寄ってくる。
蛇骨は静かに子供達を見ると刀を振り上げた。
「止めろぉおお!」
そう叫びながら走った睡骨。
蛇骨の刃は子供の代わりに睡骨を直撃した。
舞う鮮血に目を見開く子供達。
その前に倒れた睡骨。
蛇骨は「ふん。」と倒れる睡骨を見下した。
「どうなって…っ」
「あの睡骨って男、子供を庇った…?」
「っ、」
「!待って、今その矢を抜くから…っ」
唖然と倒れる睡骨を見ていた犬夜叉達。
かごめが犬夜叉の腕から矢を抜き放り投げた。
そして再び見ると睡骨の首にあった四魂のかけらが徐々に黒く濁って行く。
黒凪は徐に側の蛇骨を見上げた。
「…何だよ、睡骨の野郎起きたか?」
『解らん。だがこれで起きなければ…』
「めんどくせーから殺すつもりだぜ。」
「そりゃねぇぜ蛇骨…」
そう言った睡骨が目の前の子どもの首を掴み持ち上げた。
急に雰囲気が変わった睡骨に目を見開いた犬夜叉達。
蛇骨は刀を肩に担ぐとため息を吐いた。
「やっと起きたな。」
「あぁ」
『……睡骨。早く戻れ、私は早く蛮骨に会いたい』
「へいへい。…アンタも変わらねぇな黒凪…」
子供の首を締め上げ笑う睡骨。
すぐさま犬夜叉が走り出し子供を睡骨から奪い返した。
飛び上がり犬夜叉の攻撃を回避した睡骨は黒凪と蛇骨の隣に着地する。
そして黒凪の顔を見下すと小さく笑った。
「年を取ってないのか…。さっき言ってだ封印゙の所為か?」
『あぁ。貴様が先程まで護っていた女の封印だ』
「くく、そりゃ悪かったな…」
小さく笑って顔を上げた睡骨。
彼の顔は先程の医者とは打って変わって恐ろしい形相に変わっていた。
その顔を見て怯える子供を背に犬夜叉が睨みつける。
煉骨から手甲鉤が投げられそれを難なく掴み取った睡骨は両手に装着した。
「テメェ一体…!」
「俺か?…俺は七人隊の睡骨」
溢れんばかりの殺気に眉を寄せるかごめ達。
珊瑚が徐に「どういう事…?」と呟いた。
かごめはじっと睡骨の背中を見ると口を開いた。
「聞いた事がある。もしかしたら多重人格者なのかもしれない」
「多重人格者?」
「うん。…多分もう1人の人格が表に出たんだ」
そう言ったかごめの言葉を裏付ける様に睡骨は「あの医者の野郎、長い間俺を封じ込めやがって」と呟いた。
倒れている桔梗をチラリと見た黒凪は銀骨の上に戻る。
蛇骨も肩を竦めてその隣に座った。
「さぁて…。お前の相手は俺だ、半妖野郎」
「チッ、」
「…刀が無いと怖いのか?」
眉を寄せた犬夜叉は「上等だ、」と指をゴキ、と鳴らす。
すぐに手甲鉤を振り上げる睡骨。
数回ほど斬り合うと犬夜叉の胸元から血が噴き出した。
ニヤリと笑う睡骨に胸元を抑えた犬夜叉が眉を寄せる。
「そういやぁ黒凪に腕を1本やられてたな…」
「…く、」
「そんなんじゃ俺に勝てねぇよ」
犬夜叉の足を払いその首元に手甲鉤を突きつける。
終わりだ、と爪を振り上げる睡骨だったが「止めて!」と声が響いた。
振り返る睡骨。そこには首を抑えた子供達がいた。
「睡骨様!もとに戻って…!」
「お願い!!」
「……ぐ、」
カタカタと震え始める手甲鉤。
ぶわりと汗が溢れだす睡骨の様子に犬夜叉が目を見開いた。
まだ完全に目覚めていないのか、と呟く様に言った煉骨に頷き黒凪が銀骨から降りる。
一方の煉骨は銀骨を走らせ倒れている桔梗に向かった。
黒凪はそれを横目に速足に睡骨に近づいて行く。
「!桔梗…」
「よそ見すんじゃ、ねぇ、」
「っ、…くそ…!」
犬夜叉が睡骨を睨み桔梗を見る。
桔梗の元へ着々と近づいて行く銀骨。
ほぼ同時に黒凪から邪気が溢れ出し犬夜叉が其方にも目を向けた。
黒凪は頭を抱える睡骨に近づくと彼の肩にぽんと触れる。
邪気に目を見開いた睡骨は汗だくになりながら黒凪を見下した。
『……静まったか?』
「…あぁ。」
『お前も邪気を操れるようになった方が良い。睡骨』
「……アンタ程器用な奴は他に居ねェだろうよ」
再びニヤリと笑い犬夜叉を見る睡骨。
斬り合いをもう一度始める2人を背に黒凪は歩き始めた。
それを見た蛇骨がため息を吐き銀骨から降りて黒凪に駆け寄る。
そして彼女を肩に担ぐと走り続けている銀骨に追いつき共に乗り込んだ。
『…悪いな』
「ふらふら歩かれて死なれても困るしなぁ…」
「ギシシシ」
ドドド、と桔梗に迫る。
桔梗が動く様子は無かった。
別れの時だ、と目を閉じた時。
横から飛び出した弥勒が間一髪で桔梗を抱えて飛び退いだ。
チッと眉を寄せた煉骨は睡骨を見る。
「そろそろ戻らねェといけねぇ」
「あー?なんでだよう」
「大兄貴と待ち合わせてる。これ以上長引くと間に合わん」
「ちょっとぐらい遅れたって良いんじゃねぇの?」
馬鹿野郎、黒凪が居る事を大兄貴は知ってる。
そう言った煉骨に「それはいけねぇや」と睡骨を蛇骨が呼んだ。
振り向いた睡骨は犬夜叉に一撃与えると走り出し銀骨に乗り込む。
待て!と鉄砕牙を構えた犬夜叉だったが黒凪の矢に吹き飛ばされた。
「犬夜叉~。生きてるかー?」
「っ…」
「また会おう。次は大兄貴も参戦する」
『………』
犬夜叉は去っていく七人隊を見るとすぐさま倒れたままの桔梗に駆け寄った。
一方、一晩かけて走り続ける銀骨。
夜も明け朝になると黒凪は夜明けに目を覚ました。
顔を上げれば何事も無いかのように目を開けている煉骨達。
『…お前達、眠くはならんのか』
「ああ。不思議とな」
「ずーっと寝てたからじゃねぇの?土の中で」
「ギシシ」
そうかもな、と目を細めた黒凪。
すると前方に少年が見えてきた。
蛇骨はその少年を゙琥珀゙と呼ぶ。
恐らく奈落の手下だろう。
そう結論づける中で煉骨が徐に微笑んだ。
「お迎えだ。…やっと会えるぜ黒凪」
『…蛮骨か?』
「ああ。大兄貴も心待ちにしてるだろうよ」
眉を下げた黒凪は膝を抱え込む。
小さく震える黒凪を見た蛇骨はしゃがみ込み彼女の顔を覗き込んだ。
そしてため息を吐くと「おい」と黒凪に声を掛ける。
その様子を横目に見ていた睡骨は徐に目を逸らした。
「泣くなよ」
『……』
「…ブスになんぞ」
ぽんぽんと黒凪の頭を撫でる蛇骨。
その様子を見ていた琥珀は前方に目を移し「そこを右です」と銀骨に指示を出す。
服をごそごそと探っていた睡骨は見つけた布を見るとぽいと黒凪に投げた。
受け取った黒凪は睡骨を見る。
「医者の野郎はいつも持ち歩いてんだよ。使ってな」
『……。』
「……、大兄貴の前では泣くなよ?大兄貴は泣く女嫌いだったろ」
「お前知らないのか?睡骨。黒凪だけは例外だ」
煉骨の言葉にそうなのか?と微かに目を見開く睡骨。
黒凪は静かに涙を拭うとすんと鼻を啜って空を見上げた。
蛇骨はその顔を見ると立ち上がり再び銀骨の部品に凭れ掛かる。
その様子を見ていた煉骨はボソッと呟いた。
蛇骨の女嫌いも黒凪だけは例外だ、…と。
紅一点
(犬夜叉)
(あ?)
(お前は黒凪様がどう見えた)
(……)
(私には、幸せそうに見えたよ)
.
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