ワンパンマン
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頼むから放っておいてくれ
お蔵入り小説大公開。
サイタマ落ちかな?
―――ドォオン!!
低くて大きな音と衝撃波。
その2つが同時に来た事に目を覚ました少女はゆっくりと起き上がった。
目を瞬かせ、擦る。
『次は何よ、全く…』
くあ、と欠伸を1つ。
凄い地震が起きていて外からは人々の悲鳴が聞こえた。
恐らくまた怪人が現れたのだろう。
こちらの世界ではよくある事だ。
そしてその怪人が大した脅威ではない事も知っている。
『……サイタマ、行ったかな』
行っただろうな、うん。
彼が行ったからには安心だ。
またたったの一撃で怪人をやっつけてしまうだろう。
誰も知らない、私だけが知っている最強のヒーロー。
『どわっ、』
ぐらり。
大きく揺れたこの部屋。
思わず天井を見上げた黒凪は窓を開いて外を覗いた。
遠目に紫色の何かが見える。
恐らく怪人だろう。彼の目元から光が……。
『(え、こっちに向かってない?気の所為?)』
「ハァッ!!」
『!?ハァッじゃないし!何してくれんの!』
こっちに物凄い勢いで迫ってくる光線をバシッと手で弾く。
光線は綺麗に曲がって隣の建物に直撃した。
此方にぐらりと傾いた建物にもう一度眉間を寄せ窓から外に出る。
ゆっくりゆっくり此方に落ちてくる建物に肩をゴキ、と鳴らした。
「―――!!」
『…何か向こうで言ってる?サイタマかな?』
「――や……り……間は抹殺………ぐはぁ!!」
お、と最後に聞こえた声にチラリと目を向ける。
目を大きく見開けば、小さく小さく黄色いマントが見えた。
すうっと晴れる空。
怪人をやっつけてくれたであろう彼に感謝して落ちて来た建物を片手で受け止める。
『よい、……しょっと、』
ひょい。そんな効果音が最も合うであろう。
それ程軽い手つきで建物を退けた。
そろそろ帰ってくるだろうし。と呟いた彼女は何事も無かったかのように部屋に戻っていく。
その後人類を救った男が隣の部屋に帰って来る訳だが、肝心な人類諸君は彼の存在を誰一人として知らない。
「おーい。…おーい黒凪ー?」
『………』
「…どうしたんだよ最近ー。ちょっと前まで一緒に買い物しに行ったりしてたじゃねーかよー」
ぴんぽんぴんぽんと何度も何度も鳴り続けるインターホン。
耳を塞いでいる黒凪は知らぬふりをして空を見上げた。
ちょっと前?ふざけないでほしい。
彼の事はかれこれ数年前から避け続けている。
そう、彼がスキンヘッドになったあの日から。
《…は?》
《よ、黒凪》
《……最近見かけないと思ってたらアンタ…》
《修行してたらさ、…なんか、な》
はは、と髪の無い後頭部を掻く彼、サイタマ。
黒凪はその顔を数秒程凝視するとサアッと顔を青ざめた。
そして思い切り扉を閉める。
ミシッと音が鳴ったが気にしない。
《(何あれ!何あれ!?サイタマじゃん!ワンパンマンのサイタマじゃん!!)》
《あのー…、…黒凪さーん…?》
《(昔ちょっとだけ見てたわ、覚えてるわ!)》
《…おーい……、》
確かにおかしいと思ってたよ、私って子供の時から何もしてないのにバク転出来るし!
重たい物も簡単に持てるし足クソ早いし!?
そこまで考えて動きをピタリと止める。
そして控えめにノックされる扉をゆっくりと見た。
《(一緒、なの?)》
《黒凪さーん…。……ハゲてすみません》
《(私、あの人と…?)》
《あのー、》
サイタマの声を聞いてぎくりとした。
駄目だ、私は人の為にとか無理だし。
すぐにその結論が出た。
どんなに自分に力があっても中身が伴っていない。
ヒーローにはなれない。でもサイタマと一緒にいたら必然的になってしまうかもしれない。
……よし、無理だ。逃げよう。
『(って事で逃げ続けて数年…。私は血の滲む様な努力でサイタマを)』
「おいって。」
『うっわドア壊さないでよ!』
「何だよ、毎回こうなるんだからいい加減開ければいいじゃん」
そう、そうなのです。
必死の思いで逃げてるのにこの男は!
毎回毎回扉を破壊して中に入ってくる、一緒にご飯を食べる。そして帰って行く。
結局今の今まで彼を1日も見なかった事は無い。正直言って。
彼が怪人に立ち向かっている時も結局私は手伝わされて!
今日なんて正味偶然だよ!?ガチ寝してたから多分起こさなかったんでしょうね!優しいですねコンチキショー!
こんな隣人はアリ? ナシ?
(今日はえらく爆睡だったな、お前)
(るさい。眠かったのよ。)
(起こさなかった俺優しいだろ?)
(あーハイハイ、ソウデスネー)
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