進撃の巨人
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とても簡単で難しいこと
from the theme of, きっかけの恋のお題 [バツ印の使い方]
私にはどうしても怖いと思ってしまう人が居る。
それは、人類最強だと讃えられている人で。
仲間思いだと有名な、そんな人。
名前はリヴァイ兵長。私はどうしてもあの人の顔を見る事が出来ないのです。
兵長に選ばれ、彼が率いる特殊部隊に選ばれた、今でも。
「……作戦は分かったか?」
『は、はい』
「…おい。お前が腹痛で会議に出れなかったから態々直々に伝えてやってるんだぞ」
『……はい。』
黙ったリヴァイが持っていたカップをことりと机の上に置く。
そんな小さな音にもビクッと反応する黒凪。
びくびくと肩を竦める彼女の様子にリヴァイは困った様にため息を吐いた。
「…おい」
『はい、』
「こっちを見ろ」
『……む、りです…』
正直な所、自分が選んだ女だがまだ顔をまともに見ていない。
自分が招集を掛けた時も、ずっとペトラの背後に隠れていた。
戦績は申し分ない、随分良い腕だと有名だ。
情報では特に人見知りをする様な奴では無かったと思うが、今のこの状況は何なのか。
「……。俺の何がそんなに怖いんだ」
『こ、怖くないです!…怖くないんです…』
「じゃあこっちを見ろ」
『……すみません…』
はぁ、とため息を吐けばまた肩を竦める。
此処までビビられるとこちらとしてもやり辛い。
一度だけ、この女が戦場に居る姿を見た事がある。
巨人を前に恐怖を微塵も見せず立ち向かい、次々と肉を削いで行った。
あの女の腕は欲しい、と思ったのが初めだ。
だがまさか自分にこんなにも恐怖を抱いていたとは。
『あ、の。』
「あ?」
『っ、…この間は、すみませんでした』
「この間?」
そう訊き返せば、怯えきった彼女の目が自分の右腕に向いているのが見えた。
そこには包帯が巻いてある。
ああ、と納得する。
これは少し前の壁外調査の時だ。
そう、あの時も俺はこの女を、黒凪を見ていた。
「…別に気にすんな。どうって事はねぇ」
『……すみませんでした。間違えて斬っちゃうなんて…』
「突っ込んで行った俺にも非はある」
あの時、黒凪は1人で巨人と戦っていた。
それを見かねた俺が援護に入った訳だが、集中していたのか、俺に気づかず俺ごと巨人を削いだのだ。
…削いだと言っても右腕1本を無駄にしたわけじゃない、軽く斬られた程度だった。
すみませんでした、ともう一度頭を下げる黒凪。
正直、ずっと下を見ていた訳だから頭を下げているとかあまり判断できない。
「…そんなに申し訳なく思うなら、顔を見せろ」
『……う、』
「見せろ。じゃねぇと一生許さねぇぞ」
これは卑怯か、と思ったが致し方ない。
そろそろ問題のエレンとか言う兵士も来る。
いい加減に顔を見て置かねェと困る。
ぐい、と腕を引いて顔を上げろ、と声を掛けた。
恐る恐るゆっくりとあげられる顔。
「……!」
『……これで、良いでしょう、か』
初めて見た、彼女の顔。
黒い髪に、黒い瞳。
黒い瞳に自分の顔が反射して見えた。
ああ、そうか。こんな顔だったのか。
そう呟いてしまいそうになるほど、ストン、と頭の中に納まった。
『!』
「………」
一方黒凪も初めてまともに見るリヴァイの顔に見入っていた。
目を見開いて、互いにじいっと見続ける。
どれぐらいそうしたのだろうか、耐え切れなくなったのは黒凪の方だった。
リヴァイの目から視線を外し、顔を両手で覆い隠す。
『~っ』
「………。」
『…あ、の…リヴァイ兵長…?』
「……………」
黙りこくるリヴァイの顔を見上げようとする黒凪。
だが、顔に熱が集まりばっと顔を見る前に顔を隠す。
沈黙が降り立ち、どちらも話さなくなった。
静かな空間に2人きり。それに耐えきれなくなった黒凪は意を決して顔を上げた。
『あの!…ひっ』
「……あ?」
『あ、あのあの、その…』
顔を上げてみれば、目をカッと見開いたまま固まるリヴァイ。
怖い。とりあえず怖い。
でも顔を上げた為か、また2人の視線が交わった。
次に目を逸らしたのはリヴァイだった。
リヴァイは手の甲で口元を隠し、席にすとんと座り直す。
『(思ってた以上に怖い顔だった…!)』
「………。」
『(でも、格好良い、かも?)』
そおっと見て、すぐに目を逸らす。
でもあの驚いた顔が脳裏に焼き付いて、離れてくれない。
もう一回、最後に一回。あと一回だけ…。
と言い訳の様に言い聞かせて顔をそろりと上げる。
するとそれと同時だろうか、扉がバアンと開かれ光に反射した眼鏡が目についた。
「やあリヴァイ!此処に……。…黒凪?君も居たんだ?」
『ハ、ハンジさん…!』
「久しぶり!それよりリヴァイ、あのさぁ…………リヴァイ?おーい」
反応を示さないリヴァイに首を傾げたハンジ。
ハンジは黒凪を見て、そして再びリヴァイを見る。
何かしたの?と言うハンジの問いかけにぶんぶんと首を横に振った黒凪。
すると更にハンジは分からないと言う様に眉を下げる。
「リーヴァーイー!」
「るせぇ」
「いたっ!?」
『リ、リヴァイ兵長、ハンジさんは何か用事がある様で…』
黒凪の声に顔をそちらに向けるリヴァイ。
が、2人は同時に目を逸らした。
黒凪は顔を青くして、リヴァイは相変わらずの無表情で。
それを見たハンジはぽんと手を打つと楽しげに口を開いた。
成程成程、そう言う事か!
(惚れたんだねリヴァイ!彼女に!)
(…へ?…ええええ!?)
(そして黒凪もリヴァイに惚れたんだね!?)
(…あぁ?)
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