FAIRY TAIL
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約束なしでも会える人
from the theme of, 灯火三題 -泣きそうなほどに愛しい- [バツ印の使い方]
「あれ? 仕事に行くの?」
『あ、ルーシィ』
「グレイは?」
『まだ寝てるから良いかなって』
そうなんだ…、と眉を下げたルーシィ。
どうやら心配してくれているらしい彼女に笑顔を見せた黒凪はぴら、と手に持っている紙を持ち上げる。
その内容を見る分には比較的にクエストは楽に済みそうだ。
『大丈夫そうでしょ?1人でも』
「そうね…。でもグレイなら怒りそうだけど」
『そう?』
「うん。なんで1人で行ったんだーって」
そうかなぁ、と頬を緩める黒凪に困った様に肩を落とす。
多分本当に怒られないと解ってくれないだろう彼女にため息を吐いた。
それにしても一緒に暮らしているのに黒凪が出かけた事にも気付かないのかグレイは。
どんだけ爆睡してんのよ…。と鼾を掻いているグレイを想像する。
『じゃ、行って来るからね』
「うん…。グレイが来たら仕事に行ったって言っておくから」
『はーい』
必要最低限の荷物を片手にギルドを出て行く黒凪。
そんな彼女を見送っていたルーシィの隣にエルザが現れた。
うわっ!?と驚いた様に見上げるルーシィだったが、特に反応を示す事無くエルザは黒凪を見る。
心配だな…、と呟いたエルザに「簡単そうな仕事だったよ?」と伝える。
が、エルザの表情は曇ったままだった。
「?…何がそんなに心配なの?」
「ああ、まだルーシィは知らないのか」
「?」
「黒凪はグレイがいないと…」
そこまでエルザが言った所でどたどたとギルドに入り込む影が。
そちらを見れば先程出て行ったばかりの黒凪の恋人、グレイがいた。
ミラの所へ一直線に走っていったグレイはバン!と机を叩くと黒凪は!?と凄い形相で問いかける。
驚いた様に固まったミラの代わりにルーシィが「仕事に行ったよ?」と彼に伝えた。
するとグレイの焦った様な顔がルーシィに向く。
「何処だ!?何処に行った!?」
「そ、そこまでは…」
「くそっ!」
うおおお、と走って行ったグレイに絶句するルーシィ。
焦った彼を見た事が無いと言えば語弊になるが、あそこまでの焦りは見た事が無い。
何なの…?とぽつりと呟いたルーシィの隣でうんうんと頷きながら腕を組むエルザ。
どういう事?と此方を見たルーシィを見下したエルザは徐に口を開いた。
「黒凪はグレイが居ないと道に迷うんだ」
「……へ?」
「アイツは極度の方向音痴でな…。いつもグレイが仕事先まで連れて行っている」
「…だからいつも一緒だったの!?」
うふふあははと2人で仕事に行きたいから~、なんて言っている2人を想像していたルーシィ。
今のエルザの言葉で見事に想像が壊れ去った。
まさか2人の間にそんな最もな理由があったなんて。
大丈夫かなぁ、2人共…。とギルドの入り口を見るルーシィ。
今頃グレイは町中を走り回っている事だろう。
「(ったく、仕事っつってたよな…!)」
「あ、グレイだ」
「あぁ?」
聞こえた声に振り返ったグレイ。
そこに居たのは不思議気に自分を見るハッピーとしかめっ面のナツだった。
ナツの顔を見てイラッと来た訳だが、今は突っ掛っている時間も惜しい。
一瞬ナツを睨んで空を飛んでいるハッピーを見上げた。
真剣な顔で此方を見るグレイに小首を傾げたハッピーはグレイの目の前に移動する。
「ハッピー、黒凪見なかったか!?」
「黒凪?…んー、見てないなぁ」
「見つけたら連絡してくれ!じゃあな!」
「あい!……てか連絡ってどうやって?」
ラクリマを普段持ち歩かないグレイの事だ、連絡手段何て無い。
だからこそ今グレイは恋人を走り回って探す羽目になっているのだ。
じーっと走り去ったグレイを見ていたハッピーだったが、ナツに呼ばれすぐに方向転換をする。
ま、いっか。と呟いたハッピーにナツも頷いた。
「黒凪ー!」
『グレイ?』
「あ!?」
ずこーっと驚くほど近場に居た黒凪にずっこける。
駅の側に有る店から顔を覗かせた黒凪はくすくすと笑った。
あのなぁ!と起き上がったグレイを見上げた黒凪。
その様子を見たグレイは微かに目を見開き、黒凪と目線を合わせる様に少し屈んだ。
「…まさか待ってたのか?」
『ん?そうだよ?』
「なんで…、お前仕事に行ったって、」
『だってそろそろ起きる時間かなって思って。道に迷ったらこのお店に行けって言ったのグレイでしょ?』
だから待ってたんだよ?と小首を傾げた黒凪。
そんな彼女をぽかーんと見ていたグレイは困った様に笑った。
まったく、心配して損をした気分だ。
考えてみればそこまでこいつは馬鹿じゃないんだから…、と自分に言い聞かせるグレイ。
名前を叫んで走り回った事が今更になって恥ずかしい。
連絡手段が無くとも。
(あ!よかったー、2人共会えたんだ!)
(あー…、まあな)
(あい。2人は行きはバラバラでも絶対帰りは一緒だよね)
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