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愛をはぐくむの、
お蔵入り小説大公開。
逆トリからのトリップを目論んでいたもの。
『……ん?』
突然目の前の景色が切り替わり、呆然と座り込んでいる私。
周りをきょろきょろと窺ってみるが見た事の無い景色ばかり。
薄暗い路地だろうか。小汚い木箱だとか、煙草の吸殻だとか。
まるでスラム街の様な雰囲気と………。
『……歌が聞こえる?』
ひょこっと曲がり角を曲がって顔を出せばドル札を持った女性が座り込んでいた。
すんごいスタイルが良い、髪の長い女性。
なんだか具合が悪そう。
『大丈夫?』
「え?」
『具合でも悪いの?』
「…大、丈夫」
…いや、大丈夫じゃないな。
虚ろな目とよろしくない顔色。…あと目の下の隈!
ダメダメ、と笑った黒凪は彼女の手元に手を伸ばす。
彼女は札を取られると思ったのかサッと手を背に隠した。
『…取らないよ、ほらおいで』
「!ちょ、あの…」
『そんな格好だったら寒いでしょ、ちょっと待ってて私上着着てるし』
「い、いらない…」
そんな事言わずに、と無理やり着せる。
すると上着の温かさに驚いたのか彼女は微かに目を見開いた。
持って行きなと声を掛けて背を向ければ、女性は静かに深く頭を下げる。
黒凪は手を振って路地から出た。
『…ホントに何処なんだろ此処。外国?日本じゃないよね…』
「キャアア!」
『!……何なの此処は…』
聞こえた悲鳴に無視も出来まいと歩き出す。
…明らかに悲鳴が聞こえたのに皆無視してるし、やっぱり日本じゃないなぁ。
先程出た路地とはまた違った路地を覗き込めば少女を蹴る男が1、2、3……5人?
全員外国人の様な身なりの屈強な男だった。
「何か棒みたいなの無いかな」と見渡せばあれま丁度良い所に木の棒が。
「騒ぐなタグ付きが!」
「へへ、俺が先に遊んでいいか?」
「次はオレな」
『遊ぶな。』
ボカッと頭を殴ればズボンに手を掛けていた男が1人意識を失い倒れた。
次になんだテメ…と言いかけた男。
どちらも1撃で仕留めれば目付きを悪くした男3人が此方を見下してくる。
それを睨み上げてブンッと棒を振り上げてやった。
その迷いのないスイングに男達は顔を見合わせ舌を打って去って行く。
そんな男達の背中を見送った黒凪はフンと目を細めた。
『馬鹿な事する奴もいるもんだ。』
「ゴホッ、ゲホッ」
『あ、大丈夫?酷い事するねぇアイツ等』
「……ありがと…」
お腹を押さえて背を起こした女の子。
彼女の首元にあるネックレスがチャリ、と揺れた。
その音に黒凪の目が首元に向かうと少女は顔を青ざめて隠す。
チラリと見えだD/3゙の文字。
…見た事がある。あの子達がタグだと言っていた、もの。
『…黄昏種?』
「っ!」
『あ、大丈夫!私黄昏種差別しないし!寧ろ好きだし!?』
必死にそう代弁すれば少女の表情が少し和らいだ。
だがしかし驚いた。黄昏種か…。
ニコラスとウォレスの居た世界にしかいない筈。
…と言う事は。
『…ね、ニコラスとウォレスって子達知らない?』
「し、知らない…」
『そっか、ありがと!気を付けなよー!』
そうとだけ言って走り出す。
居るかもしれない、ニコラスとウォレスが。
5か月も一緒にいたのに急に元の世界に帰ってしまった彼等が。
私の世界では2年経ったからウォレスは15歳でニコラスは14歳かな?
どうなってるかな、2年だからあんまり変わってないのかな。
『んあ?警察?』
「あ?」
『(っと、つい口に出しちゃった。)』
だいぶ治安が悪いって言ってたけど警察は居るんだなぁ。
゙POLICE゙と書かれた見たまんま警察のパトカー。
それをじいっと見ていれば怪訝に目付きの悪いおじさんが此方を見る。
パトカーの中に居るもう1人の声がチャドさんと言っている所から此方を見ている彼の名前はチャドさんらしい。
…やっぱり外国だわ、日本にチャドなんて居ないだろうし。
「(なんだ?あの女…)」
「あ!ちょっとチャドさん!煙草吸い過ぎですって!」
「お前は何時から俺の母親になったんだコーディ」
そう言いながら煙草を取り出すチャド。
すると彼の前に男が1人姿を現しライターに火を灯した。
お、格好良い事するねぇ。とその様子をじーっと見る。
チャドは素直に差し出されたライターの火に煙草を近づけた。
「昼間っからサボりっすか?」
「遅かったじゃねぇか、ウォリック」
『(わー、綺麗な金髪。)』
つかウォリックってウォレスに似てるなぁ。名前の響きとか。
…そう言えば同じ様な金髪だわ。
でもないない。あんなさ、腕に毛がぼーぼーに生えてる筋肉ムキムキのおっさんになってる筈無いし。
だいいち片目に眼帯なんてしてなかったし。
「…、1人か?ニコラスはどうし……」
「………」
「うおっ!?」
「あはは、ニックってばお茶目でしょ?」
ニコラス?同じ名前だわ。といつの間にか車のボンネットの上に乗っていた男を見る。
黒髪だし、目付き悪いし、刀持ってるし…。
うわあ、見れば見る程ニコラスそっくり。
しかもあのウォリック?と並べばホントにあの2人を見てるみたいで……。
……あれ?似すぎてない?いやでもあんなおっさんじゃなかったし…。
……んんん?
『…いやでも似すぎてるし…』
「………。あの女、お前達の知り合いか?」
「へ?女?」
「?」
チャドの言葉にウォリックとニコラスの目がつい、と横に向く。
その視線の先には此方を見たウォリックとニコラスを見返す黒凪。
ウォリックとニコラスは口を閉ざし、じーっと黒凪を見た。
―――あ。とウォリックが目を見開いてそう一言だけ発する。
…それと同時か否か。
『え、ちょ、まっ―――』
「黒凪ー!」
でっかい巨体が突っ込んで来ました。
ぎゅーっと抱きしめられてもう目の前真っ暗。
すんごい香水の匂いがする。
それに頭をほっぺたですりすりされてるし。
『ちょ、え、ウォレス!?』
「なんで!?なんで此処にいんの!?ひっさしぶりぃ!」
「おいウォリック!?…ニコラス!?」
『え、ニコラス…?』
どうにか腕を退かして顔を出せばすぐ先にニコラスの顔。
じーっと此方を見ている。
うえ…?と見上げれば、ピク、と反応したニコラス。
瞳が揺れていた。それはもうぐらっぐらに。
「ニック!見ろよ、黒凪だぜ!」
「…………」
『え、その笑い方はホントにニコラス!?』
ニィ、と不器用で不気味な笑顔。
一緒に居て随分経ってから見せてくれた笑顔。
頑張って身に着けましたと言わんばかりの変な笑顔。
あぁ、ニコラスだ。ウォレスだ。
『ちょ、次はニコラス!ニコラスを抱きしめる!』
「え、早くね?俺は?」
『アンタは十分堪能したから良いの。』
「ええー!?」
ほら退いて、そんな容赦のない言葉と共に押し退けられるウォリック。
自分の倍ほどある巨体を押し退けた黒凪は目の前のニコラスに大きく手を広げた。
そこで気付く。
少し前までは小柄なニコラスをすっぽりと私が抱きしめていたのに、今は。
『!?』
「おぁえり」
一瞬固まった隙を見事に突かれた。
成長したニコラスが黒凪をすっぽりと包み込む。
ぎゅうう、と縋りつく様に抱きつくニコラスにウォリックが片眉を上げて微笑んだ。
『わあ、でっかくなったねニコラス』
「…」
抱きしめていて言葉を読めないニコラスの頭を撫でて顔を上げさせる。
そうして全く同じ言葉を手話で示すとコク、と何も言わずに頷いて首元に鼻先を擦り付けてきた。
犬か、と突っ込みたくなるぐらいだ。
『ただいま、ニコラス。…ウォレス』
「…あぁ。おかえり。」
微笑んでいるウォリックに笑顔を返してニコラスを抱きしめる。
ニコラスはその心地良さに目を閉じた。
こんな再会はアリ? ナシ?
(戻ってきた。)
(俺達の)
(私達の)
(時間ってやつが。)
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