GANGSTA.
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
君だけは知ってた
from the theme of, きっかけの恋のお題 [バツ印の使い方]
私にとって強さは必要なものだった。
私は黄昏種だから、只管強くなることに夢中だった。
人生の転機は17歳の時。
"A/0級"の私は"S/3級"の男を殺す事に成功した。
5年経った今、私の首には"S/3"と記されたタグがぶら下がっている。
でも今、私は強くなることが全て、だったのに。
『……"A/0級"、か』
「ぎゃあああっ!?」
「や、やめっ―――」
「タグ付きだ、逃げろ!」
私は恋をした。
偶然屋根の上で昼寝をしていた日。
偶然真下で抗争が勃発していた日。
それを鎮圧する為にとある便利屋が、現れた日。
『格好良いなぁ―――』
「おいニック!ちょ、待てって!」
「………、」
手の形を素早く変える所から恐らく我々特有の欠陥は耳にあるらしい。
下で金髪の男と共に走り去るアジア系の黄昏種。
刀を使って戦う彼に私は一目で恋に落ちてしまった。
……それから私は随分と変わったと思う。
まず、彼よりも強いと言う事実が嫌になってしまった。
だから私はそこらにいた黄昏種から"B/5"のタグを奪い取った。
そして、私は――――。
「"何だ、そいつ"」
「この子は路上で座り込んでたかわいそーな黄昏種。」
「"……捨てて来い"」
「それは無理だ。だってこの子珍しい事に契約者が居ないって言うのよ?ほっとけねーじゃん」
はあ?と怪訝な目を向けられた。
これが私とウォリック、ニコラスとの出会いだった。
出会い、と言うよりは私が仕組んだようなものだけれどね。
それからまた5年経ち、私は27歳に、ニコラスは34歳になりました。
「おーいニック、黒凪!仕事だ、黄昏種が暴れてるんだってよ!」
『うえ?マジで?』
「マジで。……つか何やってんのよお二人さん…」
『一緒に昼寝だねぇ』
そう言ってごろりとウォリックに体ごと向き直る黒凪。
そんな彼女の頭は筋肉質なニコラスの腕に乗っかっている。
俗にいう腕枕と言うヤツだ。よくもまあムキムキで堅そうな腕に頭を預けていられる。
耳が聞こえないニコラスはウォリックの気配に目を覚ましたらしく、ついと眠たげな目が彼に向いた。
「よ、仕事だ。準備してくれや」
「………」
『黄昏種が相手だってさ。ほれほれ、急げー』
ばっと起き上った黒凪はニコラスを起こし、適当にシャツを彼に投げる。
それを着たニコラスは着替える黒凪を見ているウォリックの顔にシーツを投げつけた。
うわっ、止めろよ!とシーツを退かそうとするウォリック。
それから目を逸らしたニコラスは黒凪がタグを首に着ける様子をじっと見る。
「(B/5級…)」
『ん?あぁ、…ほい』
「"どーも"」
手話で礼を言ったニコラスは投げ渡された"A/0"と記されたタグを首に掛ける。
準備が出来た事を確認したウォリックはシーツをベッドに戻し、よっこいせと立ち上がった。
3人で走り出し、暴れている黄昏種2人を見つけ出す。
どちらも屈強な男で、彼等の首にはタグがぶら下がっていた。
互いにタグを見せ合う。
「(C/0級とD/3級か)」
『んじゃあ"D/3級"は頂戴ね、ニコラス』
「"あぁ"」
「チッ…、"A/0級"と"B/5級"かよ…!」
どうする、と話し始めた2人に容赦なく走り出すニコラスと黒凪。
すぐに戦闘が終わり、力なく倒れる黄昏種2人。
ニコラスはウォリックに渡された紙で刀の血を拭き取り、黒凪も同様に持っていた刀の血を拭き取った。
やがて死体をそのままにゆっくり歩き始める3人。
ウォリックと話す黒凪を見て、ニコラスは徐に彼女のタグに目を戻した。
「(B/5級)」
『?どうしたのさ、ニコラス』
「"なんでもねぇ"」
『…変なの。』
そんな会話をして、夜になった。
2人でベットに寝転がり、黒凪はニコラスの腕の中で目を閉じる。
するとニコラスの低い声が耳に届いた。
顔を上げればじっと自分を見つめるニコラスの目と視線が絡まった。
「ぉあぇ…、は」
『(お前、は)』
「ほんぉうぁ、ぉえより…」
『(本当は、俺より)』
眉を下げて笑った黒凪はぎゅっとニコラスの胸元に顔を埋めた。
少し黒凪を抱きしめている腕に力が入る。
ニコラスはアイツは気づいてない、とまたたどたどしく黒凪に伝える。
ウォリックは、と言う事は、貴方は。
今考えればあの時からだろうか。
自分が彼女に惚れているという事を認識したのは。
あの、雨の日だろうか。
《や、止め…、ぐ!?》
《ひいい!》
《あ、ちょっとちょっと。待ちなって》
"B/5級"である筈の黒凪が、いとも簡単にハイカテゴリの男を倒していた。
その瞬間を偶然目撃した俺は直感で彼女が自分よりもハイカテゴリである事に気が付いた。
雨の中、男2人を足蹴にして佇む彼女に、黒凪に。
俺は、何故か見とれていた。
俺だけは、気づいてた
(だって貴方は言っていたじゃない。)
(自分よりも強い女は嫌いだって)
(お前は別だと)
(そう言ってくれた貴方に涙が溢れた。)
.
1/3ページ