鬼灯の冷徹
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from the theme of, きっかけの恋のお題 [バツ印の使い方]
鬼灯は良いヤツだ。
え? 仲良いみたいに言うなって?
…確かに。実は勝手にあたしが思ってるだけなんだよなぁ。
「あ、黒凪さまー。」
『ん?あ、茄子!』
「どうしたんだよ茄子…、ってまた黒凪様に声かけてたのか?」
「あ、唐瓜ー。」
今は仕事中だろ!と怒る唐瓜とそっかぁー、と微笑む茄子。
可愛い2人組にニコニコと笑っていた黒凪は仕事の邪魔をしない様にと胸辺りまでしかない2人の頭を撫でて別れた。
あたしは女の獄卒の中でも断トツに身長が高い。
しかも腕っぷしも強い。一部の獄卒の男には余裕で勝利出来るね。
『(ま、その所為で男が寄り付かなくなったんだけど。)』
「黒凪さまー、忘れてたんだけど、これを渡したくて」
『え?ああ、ありがと』
走り去っていく茄子を見送って再び歩き出す。
自分に近づいて来てくれるのは茄子だったり、それぐらいだと思う。
あと思いつくのはたった1人。そう。それが鬼灯。…様。
周りの男どもはあたしを怖がって隣を歩いてやくれない。
そんな事じゃ怒らないのに何勘違いしてんだか。
でもあの男だけは、鬼灯様だけはきっと違うのだろうな。
『(…話してみたいなぁ)』
「あの」
『ん?……あ。』
「はい?」
かなり低い声に振り返ってみれば、先程から考えていた鬼灯様が立っていた。
実際に話すのは初めてだ、遠目に見ていただけだから。
黒凪は静かに目の前の彼を見上げた。
やっぱり大きい。閻魔様と並んでる時点でだいぶ小さく見えるけれど、かなり高身長だ。
自分が思った通りに、ガタイも良かった。
「この方に会いたいのですが、ご存知ですか?」
『…あぁ、その人はあたしのお隣さん。何?会いたいの?』
「ええ」
『じゃあ付いてきなよ。送る』
どうも、と小さく会釈した鬼灯が歩き出した黒凪について行く。
やがて鬼灯が黒凪の隣に着き、黒凪は驚いた様に彼を見上げた。
一方鬼灯も少し目を見開いて黒凪を見下している。
バチッと合った視線に目を見開いた黒凪は歩く事を止めずに眉を下げた。
『……何?』
「…いえ。私の歩く速度について来るとは思っていなかったもので」
『…別に普通の速度だけど?』
「………。よく見れば貴方、随分ガタイが良いですね」
直球の言葉にゔ、と固まる黒凪。
何でも周りに居る女性は全員ある程度鬼灯が速度を落とさなければ付いてこれないのだとか。
やっぱり身長と歩幅は比例するらしく、随分気を使っていたらしい。
そんな話をしながらも鬼灯の視線は黒凪を捕え続けている。
全く、前を見ていないのに誰にもぶつからないのは不思議だ。
あ、皆が避けてるのか。
『…よく見なくてもそうだろ?』
「……確かにそうですね」
『あたしは嫌なんだよ。小さくなりたいね』
「…。それにしても貴方」
何だよ次は、と顔を上げる。
すると再び合う視線。
鬼灯の細い目が黒凪を捕えると彼は徐に口を開いた。
「獄卒の中では顔の整い具合が断トツに綺麗ですよ」
『……は?』
「身長もありますし、どうです。私の秘書でも」
『…はあああ!?』
何の冗談だ!?と目を剥くが、鬼灯は真顔だった。
冗談って、何が。と訊き返してきそうな真っ直ぐな目。
言葉を詰まらせた黒凪は顔を真っ赤に染めると顔を背けた。
真顔って怖い。うん。
(な、なななな何を…)
(すみません、女性を口説くのは初めてなもので)
(…へ?口説いてたの?)
(えぇ)
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