銀魂
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交錯する経過
河上万斉成り代わりの坂田銀時寄り。
※夢主は女性です。
「掛かって来い! 伊東ォ!」
「言われずとも…!」
『はは、やる気満々で何よりでござる。』
小さく笑ってバイクの速度を上げる。
前方には1台の車、その前には列車。
列車に伊東を降ろして微かに振り返る。
車の中に居る銀色の天パ野郎。…私の相手はあれだぁね。
『よう、そこのお兄さん』
「あぁ!?」
『私と遊ぼうや。』
バイクの前輪を持ち上げ車に衝突させる。
元々車から体を半分ほど乗り出していた銀時だけを車から落とすのは簡単だった。
ニヤリと笑って掛けているサングラスをしっかりと掛け直し追いかける。
「んの野郎…!」
『っ!』
ブンッと振り降ろされた木刀でバイクが殴られすぐさま飛び降りた。
ゴロゴロと転がって行ったバイクは岩にぶつかり大破。
その様子を見た黒凪はげんなりと肩を落とす。
『あーあ。晋助に買ってもろたのに…』
「おいおい、ござるが抜けてるぜ?」
『おおっと…キャラを立てる為にござるを付けてみたが、中々慣れないでござるな』
「良いんじゃねーの?…十分キャラは立ってるよ!」
振り降ろされた木刀を刀で受け止め体を捻って腹部を蹴り飛ばす。
ちょっとずれたヘッドホンもちゃんと着け直した。
口の端を流れる血を手の甲で拭き取る銀時。
彼はじっと佇む黒凪を見つめた。
「…テメェ…、どっかで…」
『私は知らないでござる。』
「…似合ってねーんだよござる口調は…!」
ヒュンッと目の前を木刀が通過する。
その風でサングラスが少しずれた。
前髪が風に揺られて浮き上がる。
額から目を通過する傷跡に銀時が目を見開いた。
『…女の古傷は、』
「!」
『覗くものではないでござるな』
一瞬傷に目を取られた銀時に刀の切っ先を向け押し出す。
間一髪で避けた銀時は一気に距離を取った。
そして顔を上げた銀時の顔は随分と驚いた様で、…そして微かに悲しみを含んでいる。
その顔を見た黒凪は無表情のままにサングラスを掛け直した。
「お前、黒凪か?」
『その様な女は知らん。』
間合いを詰めて刀を振り上げた。
それを避けた銀時は木刀を振り上げる。
くいと手首を曲げて刀を受け止めたがその威力にビキッと筋肉を傷めた。
少し眉を寄せた黒凪は左手を胸元に差し入れ針の様なものを握ると銀時の目に向かって投げる。
「っ!」
『死ね!』
「死ぬかよ!!」
針をギリギリで避けて黒凪の額に額をぶつける。
ゴッと響いた音と同時に鈍い痛みが広がった。
額から血が溢れる。
銀時の左手が黒凪の刀を握る手を掴み左手も刀を握りつつ銀時が掴み取った。
「これで動けねぇだろ…」
『(なんて力を…っ)』
「ちゃんと目ェ見て話せ…!松陽先生に教わっただろうが!!」
『っ!』
脳裏に記憶が過る。
人と目を見て話すのが苦手なんだ。
ふーん。
…銀時は凄いね。ちゃんと目ぇ見て話せてさぁ…。
『…私はお前とは違うんだよ』
「黒凪…っ」
右手の力を抜いて刀を落とした。
フラッと揺れた刀は刃先を地面に向ける。
銀時の腕を掠って落ちた刀に一瞬銀時の手の力が抜けた。
その一瞬を見計らいクルッと回転して彼の背後に移動する。
「な、…弦か…!」
『さっき投げた針に1本、弦を結んでおいたでござる』
暴れると肉が千切れるぞ。
銀時の身体を横一文に縛る無数の弦。
抜け出せない様に銀時の周りを一周して彼の目の前に移動した。
薄く笑った黒凪は傷の開いた古傷に手を触れ眉を下げる。
『あーあ。傷が開いてしまったでござる』
「…それ取れ…!」
『あ?』
「サングラスだよ!お前は!」
前を見て歩けた筈だろ…!
眉を寄せて言った銀時を無表情に見上げる。
確かに私はお前達とは違ってあの戦争に参加はしなかった。
…あの場所にもいなかった。
無表情に話す黒凪に銀時が近付こうと一歩踏み出した。
しかし背後に括られた弦は銀時の行く道を阻む。
『笑わせるな。…奴等に斬られたこの傷を抱えて、どう前に進めと?』
「黒凪…!」
『奴等を斬る。壊滅させる。…この傷の恨みと先生の恨みは忘れない。』
前を向いて歩けた事なんて無かったさ。
人様に顔向け出来る様な事なんて昔から無かった。
裕福な家で生きて来た皆と一緒に学ぶなんて事、最後まで慣れる事が出来なかったんだ。
『何を勘違いしてるか知らへんけどなぁ銀時』
「!」
『あの頃に人を1人も斬らんかったのはその必要が無かったからや』
…だが生憎、今は斬る必要がはっきりしてる。
ギリギリと腕や足に弦が食い込む事を気にせず此方に近付いてくる銀時。
黒凪は一歩身を引いた。
『先生の仇を取る、…顔の傷の恨みを晴らす。…立派な理由や。』
そこまで言って黒凪が言葉を止めた。
震えた銀時の右手が黒凪の顔に近付いてくる。
弦で縛られた箇所からブシュッと血が溢れていた。
「バカ言ってんじゃねェ…!お前はそれが正しくないって分かってる筈だ…!!」
『…。腕、千切れるよ』
一歩身を引こうと足を踏み出した。
しかし一瞬早く銀時の手が黒凪のサングラスを弾き飛ばす。
カラン、と落ちたサングラス。
右目を縦に斬られた傷跡。
それを見た銀時の顔が歪んだ。
ブチッと弦が切れて黒凪に凭れ掛かる様に銀時が倒れ込む。
『……。』
「…るかった」
『!』
「…悪かった、」
先生を離せ…!
銀時!来てはいけない!
声が過る。
あの時、刀が見えたんだ。
…銀時の顔を傷付けようとする、刀が。
『…。斬られるべきは私だと思った』
「っ、」
『それだけの事や』
「…お前、今一体何処で何してんだよ…!」
昔は京言葉なんか使ってなかっただろうが!
静かに目を伏せて笑う。
色々やり過ぎて何をしていたか忘れた。
あっけらかんと言った黒凪に銀時の顔がまた歪む。
『どんな手段を使ってでもこの復讐は必ず成し遂げる』
「黒凪、」
『色んな方面から敵を追い詰めて行けば良い。』
晋助の側で私も色々探ってるから、…どっちが早いか見ものやなぁ。
にやりと笑いぐっと銀時を押し退けドサッと地面に倒す。
起き上ろうとした銀時の顔すれすれに刀を突き刺した。
アンタが責任を感じる必要はない。
目を見て言った黒凪に銀時が大きく目を見開いた。
『さて、…計画も失敗した様でござるな』
「おい…っ」
『私は晋助の所に戻るでござる』
「おい!」
高杉の所に居て、…本当にそれで良いのかよ…!
短く切った髪が風に揺れる。
サングラスを掛け直し、ヘッドホンの音量を上げた。
『…はー…、調子に乗ると色んな方言が出る癖、直した方が良いでござるな』
≪…黒凪≫
『…。なんでござるか、晋助』
≪クク、その口調だとまだ外だなァ≫
もう終わった頃だろ?
そう問うた高杉に黒凪も小さく笑った。
あぁ、終わったでござるよ。…失敗でござる。
そう言うと一瞬黙った高杉が「だったらさっさと帰って来い」と低い声で言った。
『…あぁ。すぐにでも。』
≪伊東はどうした?≫
『あれは駄目でござるな。恐らく死んだ』
≪ま、元々真選組と心中する様に仕向けたもんだ…別に構わねェよ≫
フッと笑って近付いてきたヘリコプターに乗り込んだ。
そして上空に飛び上がった時。
「待てやゴラアァァアア!!」
『っ!?』
≪あ?≫
無線で高杉の元まで抜けていく様な大声。
まずいと思った時には遅かった。
舌を打って運転席を抜け前方のガラスを突き破った木刀を掴んで後ずさる。
ったく、一体何処をどう通れば飛んでるヘリコプターに突っ込んで来られる…!
『ん、の…!』
≪……。≫
「泣きそうなツラして男の前から消えんじゃねぇよ…!」
「黒凪様、前が全く…!」
もう少し踏ん張れ、どうにかする。
そう言った黒凪が刀を掴み銀時の肩を貫いた。
舞う鮮血、歪む銀時の顔。
しかしそれでも木刀を突き刺す力は抜けなくて。
『離せ銀時、もうお前は私も晋助も捕まえられはしない』
「っ…!」
『…護るべきものが増えてしまえば、減らすにはそれなりの労力が足を引っ張ってくるでござる』
そんなものに囚われたお前など、…もうあてにもせんわ。
眉を下げて言った黒凪に銀時も眉を下げる。
泣きそうな顔してんのはどっちだよ。
そう吐き捨てて蹴り落とした。
≪…おい…≫
『…大丈夫でござる、始末した。…死んではおらぬと思うがな』
≪……さっさと戻って来い≫
分かってるでござるよ。
切れた無線に息を吐いてヘリコプターの中に座り込んだ。
晋助の所に戻るでござる。
呟く様に言った黒凪に部下が頷き方向を転換する。
戻るのだ、…あの鬼の元へ。
(…くそったれェ…)
(銀ちゃん!)
(大丈夫ですか!?)
(…大丈夫じゃねぇよ、)
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