ソウルイーター
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愛する人か、望みか。
メデューサ・ゴーゴン成り代わりのフランケン・シュタインオチ。
「この日を待ち望んでいた」
『あら、そうなの?』
「ああ。お前が死武専に入り込んだ時から、ずっと」
『そう言えば貴方だけは随分前から気づいてたみたいね』
しゅる、と背後の黒い矢印が揺れた。
その様子を見ていたシュタインは手元にあるデスサイズを握り、腰を落とす。
鎌の状態でシュタインに握られているデスサイズ、スピリットは徐に眉を寄せた。
シュタイン、行けるか。そんな彼の言葉にシュタインは笑みを浮かべる。
「先輩、一体誰が彼女の相手をしていると?」
≪はは、確かに。≫
『貴方に斬れるのかしら?私を』
「斬れるさ」
迷わずそう言ったシュタインにふふふ、と笑うメデューサ。
その声に怪訝な表情を浮かべたスピリットとシュタイン。
そして徐に上げられた彼女の顔に、その表情に。
シュタインが凍りついた。
「……何だよ、その顔は」
『貴方はてっきり私の事を好きだと思ってたんだけど…』
≪…シュタイン?≫
「………。」
シュタインはふるふると頭を振るとデスサイズを握り直した。
そして徐に走り出し、ブンッと振り降ろす。
それを軽々と避けたメデューサはベクトルを作りシュタインを壁に追いやった。
壁に激突したシュタインは背中の痛みに息を吐き、微かに眉を寄せる。
『話は最後まで聞きなさいな。』
「…てっきり会話は終わったものだと。」
『屁理屈。』
「君も普段はそうだろ」
むっとメデューサが眉を寄せた。
ペッと血を吐いたシュタインは緩く笑い、長い前髪の隙間から彼女を睨む。
一方のスピリットは2人の会話の違和感に眉を寄せ、2人を交互に見る。
そしてはっと目を見開いたスピリットは「まさか…!」と声を上げ、シュタインの目がデスサイズに向いた。
刀身に姿を映したスピリットはギロ、とシュタインを睨んだ。
≪シュタイン…。まさか、お前≫
「?」
≪…メデューサちゃんとそんな関係に…!?≫
「はい?」
しゅるん、と元の姿に戻ったスピリット。
彼は静かにメデューサを睨み、彼女を観察する様につま先から頭までをじっくりと眺めた。
沈黙する事数秒。
シュタインが徐に彼を呼べば、ばっと振り返ったスピリットはシュタインに向かってずびしと指先を向けた。
「お前!やっぱり俺があんなにアタックしてるの知ってて!!」
「……は?」
「メデューサちゃん!」
『は?』
次にメデューサを見たスピリットについ数秒前のシュタインと同じような反応を返す。
スピリットはじっとメデューサを見つめた。
……心なしか目に涙が浮かんでいる様な。
メデューサはとりあえずベクトルを消し、スピリットを見る。
「俺、俺…。アンタの事結構好きだった!」
『…はぁ』
「君は俺に何も感じなかったのかい!?」
何処の恋愛ドラマだ。
そう言いたくなるような悲しげで力のこもった言葉。
まさに熱演。いや、本心なのか?
そんなスピリットにメデューサもシュタインも固まった。
なんだ、何が始まったんだ。
『……相手が敵だと解ってて好きになる筈無いじゃない』
「正論」
「うがあああ!」
「…先輩。そろそろ武器に戻って……」
ベクトルアロー!と声が響いた。
その声に反応したスピリットはすぐさま武器になり、シュタインと共に回避する。
うねる矢印を見た2人は眉を寄せ、構えた。
メデューサは腕を組むと一言「くだらない」と吐き捨てる。
ぐすん。と武器から聞こえたのは聞かなかった事にしよう。
『でもシュタイン、貴方は別よ?』
「!」
≪…へ!?今なんて!?≫
『シュタインは別。』
素直に復唱したメデューサに今度こそメンタルがやられたスピリット。
すっかり静かになったスピリットを気づかいながらもシュタインは静かにメデューサを睨んだ。
ああ、またその顔か。
目に映る彼女の表情にシュタインが更に眉を寄せる。
「…その顔、止めてくれないか」
『あら。どうして?』
「……君を斬れなくなる」
『…ほら、やっぱりそうじゃない』
そう言って笑ったメデューサにシュタインが目を伏せた。
互いに戦意は無い。
それを感じ取ったスピリットは微かに目を見開き、眉を寄せる。
どういう事だ?そう問いたいが、話せる空気ではなかった。
「…どうしても鬼神を復活させるのか?」
『ええ。』
「……。なんで君なんだ」
『仕方ないじゃない。私がやりたいのよ』
肩をすくませてそう言ったメデューサに息を吐くシュタイン。
彼は片手で目元を覆った。
項垂れるシュタインにメデューサが徐に眉を下げた。
シュタインは「あー…。もう」と呟きながら深いため息を吐く。
「こんな筈じゃなかったのに」
『それはこっちも同じよ』
「……。なぁ、俺は君を斬りたくない」
『……』
カラン、とデスサイズを地面に落としたシュタイン。
彼はそのままふらふらとメデューサに近づいて行く。
スピリットは思わず「シュタイン!」と声を上げるが彼は何も反応を示さなかった。
ふらふらと近づいてくるシュタインを見上げ、すぐに目の前に来た彼を見るメデューサ。
徐にメデューサが両手を広げた。
シュタインは何も言わずその腕に応える様に彼女を抱きしめる。
「……、こんな筈じゃなかった」
『そうね。』
「鬼神は諦めてくれないか」
『…。』
何も言わないメデューサにぎゅう、と腕の力を籠めるシュタイン。
すり寄る様に頭を下げた彼をチラリと見たメデューサは目を伏せた。
彼女の脳裏に様々な事が蘇る。
今まで鬼神復活の為にやって来た事全て。
クロナを生み、仲間を集め、死武専に潜入して。
……この男に出会った。
「……メデューサ」
『!』
離れたシュタインから片手が差し出される。
俺と一緒に来てくれ。
そう言っている様だった。
差し出されているシュタインの手。
その手をじっと見下すメデューサ。
反応を示さない彼女を見たシュタインは目を伏せ、手を降ろしてデスサイズに向かって歩き出す。
『―――シュタイン!』
「!」
シュタインはばっと振り返った。
そして自分の片手を見る。
先程まで差し出していた片手をメデューサが両手で掴んでいた。
目を見開いてメデューサを見れば、彼女は顔を伏せている。
スピリットもその光景を見て、大きく目を見開いた。
『…っ、まさかこんな事になるなん…!?』
「…ありがとう」
ぎゅうう、と抱きしめるシュタイン。
彼の胸元に顔を埋めたメデューサは小さく笑い、目を細めた。
そして応える様に彼の背中に腕を回せば、スピリットが元の姿を現す。
じっとメデューサを見ていたスピリットは徐に微笑んだ。
演技だとは思えない。恐らく彼女の本心。
『…私の名前、メデューサじゃないのよ』
「え」
『黒凪』
「……そうなんだ、知らなかった」
誰にも言ってないからね。
そう言えばシュタインが眉を下げて笑う。
黒凪とスピリットはシュタインの表情を見ると大きく目を見開いた。
そしてスピリットは成程、と妙に納得出来た自分自身に眉を下げる。
恐らくこれで、彼の歪んだ心は安定する事だろう。
何故かそう思えた。
「はー…、…落ち着く。」
『……そう。』
「好きだよ」
『…。…狂気は?』
頬を微かに赤らめてそう言った黒凪。
今は全然。何とも。
そう言った彼にスピリットが胸を撫で下ろした。
この日以来、黒凪は死神様に厳正な処罰を受けた後に死武専に受け入れられた。
とんとん拍子に事が進み、皆驚いていたがそれ以上にシュタインのスッキリした表情に安堵した方が大きい様だった。
衝撃のハッピーエンドを。
(…それが死神様の"罰"?)
(えぇ)
(随分無様な姿だね)
(…貴方、もうちょっと言葉に気を付けなさい)
(お前、メデューサか!?)
(随分小さくなったね)
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