BLEACH
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私を陥れた世界で、君達は。
藍染惣右介成り代わりのオチなし。
結界師長編×BLEACH "世界を護るには"とは全く関係ありません。
※夢主は女性です。
「藍染!!」
『…ああ、君か』
ゆらりと振り返った女を睨みつけ、刀を構える。
日番谷隊長。そう言った彼女の声にゾクリとした感覚を覚えた日番谷は眉を寄せた。
相変わらず不気味で、まるでそこに居ない様な。…そんな。
にやりとあげられた口元は綺麗に孤を描いていた。
『雛森君は元気かな?』
「っ!…どの口が言ってやがる…」
『はは、そうだね』
彼女には本当に―――悪い事をした。
その言葉にカッと目を見開いた日番谷が刀を振り上げる。
すぐさま刀を抜いた黒凪はその一撃を受け止め、ぐいと日番谷に顔を近づけた。
懺悔をしているのに随分な反応だね。
ガキィン!と音が響き、日番谷の冷ややかな目が此方に向く。
「テメェは此処で斬る…」
『…勿論君にも悪い事をしたね。雛森君に君を殺させようとしたり…』
「っ!」
『―――悪かったと思っているよ』
黙れ!!と言う怒号と共に再び刀が迫る。
次は避けた黒凪。
すぐさま足が日番谷を蹴り飛ばした。
真っ直ぐ下に落ちていく彼を眺めながら徐に黒凪の眉が寄せられる。
……ああ、嫌だな。あの時もずっと嫌だった。
『(でも私は、この男に成り代わってしまったのだから)』
「藍染隊長」
『…なんだい、ギン』
「!」
眉を寄せて、少し笑う。
そんな顔で振り返った黒凪に市丸が眉を寄せた。
…なんや、あの顔。初めて見る。
どうしたんだい、ともう一度声を掛けた時、迫ってくる殺気に目を向けず刀を構えた。
ガッと再びぶつかり合う刀身。
市丸がはっと日番谷を見た。
『…まだまだ遅いよ、日番谷隊長』
「っ、」
『―――…早く私を、…この男を殺してくれないか』
黒凪の言葉に目を見開いた市丸と日番谷。
今の言葉はギンにも言ったつもりだったんだが、……通じたかな。
ゆっくりと黒凪の目が市丸にも向き、市丸が更に眉を寄せる。
それよりも今の言葉だ。
「この男、だと?」
『…おっと。口が滑ってしまった』
「ぐっ!?」
『……。』
日番谷の刀を往なして柄で胸元を一突き。
再び彼は吹き飛んで行った。
側に立つ市丸は何も言わない。否、言えない。
どういう事だ。
彼女の名前は藍染黒凪。尸魂界に反逆した、隊長格だった女だ。
彼女は今日この日の為に破面の集団を作り上げ、同じく隊長格である市丸と東仙を引き抜いた。
…そんな女が何故、殺してくれと懇願するのか。
『…ギン』
「!」
『君ももう行きなさい。…彼女が君を睨んでいる』
「……乱菊」
振り返った市丸の目に乱菊が映り込む。
が、彼女は地面に倒れ此方を虚ろな目で見ているだけだった。
彼女が殺されかけている所は見ていた。
立ち尽くす市丸を見た黒凪は静かに目を伏せ、刀を振り上げる。
「っ!?」
『………。』
「な…――」
『素直に行けないのなら、手助けをしてあげよう』
黒凪の小さな声に目を見開いた市丸。
彼は右肩から臍の辺りまで斬りつけられた事を知ると痛みに血を吐く。
血を流して落下する市丸に、そしてその様子を笑顔で見る黒凪に。
戦っていた残り少ない破面達や護廷十三隊が目を見開いた。
『まさか今になって洗脳が解けるなんて』
「!?」
『…非常に残念だよ、ギン』
彼女の言葉に絶句する市丸、そして護廷十三隊。
まさか、と護廷十三隊の目が狛村との戦いで倒れている東仙に向いた。
東仙も驚いた様に藍染を見上げている。
彼は既に狛村との戦いで己の行いを悔い、戦闘の意志は消失していた。
喉元を斬られているのか、東仙の口からヒューヒューと息だけが洩れる。
「東仙、お主まさか…!」
『要も同じだよ。…尸魂界を抜け出す為に利用させて貰った』
「っ、あ、……っ」
驚いた様に声を出そうとする東仙。
彼を見た黒凪は嫌味に微笑んだ。
それを見た東仙の肩から力が抜ける。
絶望した様子の彼に護廷十三隊の目が黒凪に向いた。
私が悪かったのだ。全て。
『…それでいい』
「藍染!貴様ぁあああ!!」
「手の空いている者は一斉に藍染に向かえ!」
『………。』
日番谷、そして狛村の言葉。
その言葉に立ち上がる死神達。
仮面の軍勢も刀を構えた。
徐に周りを見渡す黒凪。
既に破面達は全滅している。
『(ああ、これで。)』
「死ね!藍染!!」
『(終われる)』
鏡花水月で自分の姿を作り上げ、それと死神達を衝突させる。
その様子を横目に静かに市丸の元へ移動する黒凪。
市丸の側に寄った黒凪は涙ながらに市丸にすり寄る乱菊を見下した。
死んではいない。乱菊は市丸が洗脳されていたという事に喜んでいる様だった。
小さく笑った黒凪は市丸の胸元に宝玉を隠した。
『さようなら、ギン』
「―――!」
聞こえる筈のない声。
市丸がゴホッと血を吐きだし、咽る。
体をくの時に曲げて血を吐く市丸に乱菊が涙を流した。
すぐさま医療班が彼に駆け寄ったし、恐らく大丈夫だろう。
静かに鏡花水月によって作り出した自分の元へ向かう。
偽物の黒凪は今丁度斬られた。
『(…私もやがてそうなる)』
「やった、か…」
『いや。殺せてないよ』
「「「っ!」」」
黒凪の声に振り返る死神達。
その憎悪に満ちた目に、小さく笑った。
背後で黒腔が開き黒崎一護が現れる。
…本当は君に殺されるつもりでいたが、止めておくよ。
刀を振り上げる死神達を前に目を閉じる。
『君には話したね。黒崎一護』
「!」
《黒崎一護…。君に私は殺される》
《!?》
目を見開いて、そして痛みに眉を寄せる一護。
何を言っているんだ。そう思った。
今だって…、向かって行って一瞬で斬られたんだぞ。
そう目で訴えている一護に小さく笑う黒凪。
黒凪は一護の胸ぐらを掴み、持ち上げる。
…徐々に隊長格達の霊圧が近づいていた。
《これは私の我儘だ。聞いてくれるかい》
《っ、ぐ、》
《私を殺してくれ。出来るだけ、早く》
分かったね。
そうとだけ言って手を離す。
そうすれば一瞬で刀を首元に宛がわれた。
此処までは前世で読んでいた。
右には夜一、左には砕蜂。
ああ、悲しい。皆からの憎悪の目。
《兄様…っ》
《(だが、"これ"が無ければ朽木ルキアは死んでいた)》
《藍染。大人しくしろ》
《…君は、私の名を知っているかい。四楓院夜一》
夜一が微かに眉を寄せた。
チラリと彼女を振り返った黒凪は少し口元を吊り上げ、口を開く。
警戒する様に砕蜂の刀を近づけられるが、何も恐れる事は無かった。
私が成り代わったこの男はとても強い。
この場から逃げる方法など幾通りもあるのだから。
《私の名前は藍染黒凪》
《…知っておる》
《そうか。…それは良かった》
はっと大きく目を見開いた一護。
舞う鮮血、歓喜の表情を浮かべる死神達。
そして落下する藍染黒凪。
チリ、と脳裏を掠めた名は何だったのだろうか。
……藍染惣右介。その名前を、俺は。
聞いた事が無い筈なのに。
ああ、誰かが私の名を叫んでいる
(ギン、要。)
(君達だけは、)
(どうか幸せに。)
(――付き合わせてごめんね)
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