ワンピース
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止める事さえ出来ない
サカズキ(赤犬)成り代わりのクザン(青雉)寄り。
悲恋です。
※夢主は女性です。
アンタが憧れだった。
綺麗で、強くて、…そう、強くて。
今の海軍の中でも断トツの強さを誇っているだろう。
黄猿でさえも直接の戦闘を避ける程に威圧感もある。
そして、前に起こった戦争でもエースを殺した張本人。
正直俺もアンタは怖い。だが……。
『…粘るねぇ、君も』
「……アンタに海軍を任せんのは癪なんでね…」
『勝つのはあたし。若造にやられるほど弱くないんでね』
これで何日目だ?10日は経ったかな。
戦力差は圧倒的だ、目の前の青キジはもうボロボロだし、対してあたしはそこまで傷を負っていない。
なのに何故10日も掛かってしまったのか…。
それに周りの地形もかなり変わってしまった。
後一捻り加えたらすぐに青キジは戦闘不能になるだろう。
『…時間だね。正直此処まで時間が掛かるとは思ってなかったよ』
「……っ…」
青キジの足をマグマで踏みつければ、青キジが苦痛に満ちた声を上げた。
マグマで氷を溶かしているのだから本当に足にダメージが行っている筈。
こうでもしないと倒れてくれないだろう?
片足が膝上程まで溶けてしまった所で、右手をマグマに変える。
そしてそれを振りかぶれば、痛みに眉を寄せた青キジが顔を上げた。
「…アンタは元帥には向いてない…!」
『向いてる向いてないの話じゃないのさ。…皆がそれを望んでる。君がそこに割り込んできたんだろ』
「っ、……どうしちまったんだよアンタ…」
『あ?』
アンタは駄目だ、と掠れる声で青キジが言った。
昔はそんなじゃなかっただろ?
なんでアンタはそこまで変わったんだ。
目を細めた黒凪は拳をぐっと握り、腕にまとわりつくマグマの火力が上昇した。
熱気が伝わるのだろう、青キジが出した氷達が徐々に熔けていく。
「なんでアンタは仲間も躊躇なく攻撃できる…?おかしいだろ、」
『邪魔をする奴は排除する。何がおかしい』
「アンタはそんなじゃなかった筈だ…!」
青キジの足を溶かしていた片足が微かに凍った。
黒凪は小さく笑うと「命乞いか?」と青キジを見下す。
その言葉には流石に頭に来たのか、青キジは目付きを鋭くさせた。
青キジは少し沈黙すると徐に小さく口を開いた。
―――アンタはやっぱり、好きになれねぇや。
はっ、と笑った黒凪は拳をぐっと振り上げた。
『君に好かれようとした事は無いね』
「…なぁ」
『あ?』
「アンタに惚れてるって言ったら、どうする?」
今好きになれねぇって言ったトコだろ。
そう言ってやろうと思ったが、真剣な顔に言葉が喉につっかえた。
拳もビタッと動きを止め、沈黙が降り立つ。
そこまで反応するとは思ってなかったんだろう、青キジも少し驚いていた。
が、流石は大将にまで上り詰めた男と言うべきか。
その一瞬の隙を驚きながらも見逃さなかった青キジは最後の力を振り絞る。
『っ!』
「……、」
氷の刃が一瞬で形成され、黒凪の体を貫いた。
無数の刃は黒凪のマグマを凍らせ、痛みに顔を歪める黒凪。
油断した、と眉を寄せた黒凪は口から溢れ出た血に目を見開いた。
唖然と口元の血を拭った黒凪は指先に付着する赤に目を見張るとそれと同時にゴウ、と彼女のマグマが爆発的に膨張する。
頭が真っ白になり、無意識とも取れるほど自然に腕が持ち上がった。
腕には先程とは比べ物にならない程のマグマが腕を覆っている。
『(しまった。)』
「っ、……」
『(―――加減が、)』
出来ない、と頭で考えた時。
どおん!!と巨大な音と地響きが周りの海の水面を、島の地面を。
並ぶ木々を大きく揺らし、一瞬にして島が焼け爛れた。
はっと目を見開いた黒凪の視線の先にはピキピキと意識が無いながら傷を覆うクザン。
そして氷が解けた為だろうか、水たまりが足元に疎らに広がっている。
島の有様を見た黒凪はすぐにクザンに目を向け、彼の様子に微かに目を見開いた。
『…生きているのか』
「………」
『……流石だな』
微かに上下する胸元に目を細め、黒凪は歩き出そうと足に力を込めた。
が、感覚の無い両足になす術も無く倒れ込む。
地面に膝をついた黒凪は足を見下し目を細めた。
凍傷にでもなっているのだろう、此処まで自分が追い詰められたのは久々だった。
ましてやマグマの体を凍らせるなんて本当に驚かされる。
黒凪は近づいてくる船を見ると地面に腰を下ろした。
「…黒凪」
『安心しな、息はしてる』
「…殺す気だっただろう」
すう、と細められた目がガープに向いた。
ガープは眉を寄せ、黒凪を見下している。
ふっと笑った黒凪は「彼には恨んでもらわないといけないんでね」と呟く様に言った。
目を細めたガープは海軍の帽子を深くかぶった黒凪を見ると彼女の頭に手を置く。
酷い傷です、どんな戦いをしたんですかと医者に訊かれたが、黒凪は何も答えなかった。
…大きな戦力を失う事になるだろうな。
ふー…、と口に先程加えた葉巻を口から離して息を吐く。
もう、戻れない?
(やあクザン。仕事は捗ってるか)
(捗る訳ないでしょ。)
(仕事をしろバカタレ。冷気を漂わせてんじゃないよ)
(相変わらずアンタは暑苦しくて敵わねぇや)
(もう顔を合わせる事もないのだろうね)
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