家庭教師ヒットマンREBORN
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銀色が赤く染まる
スペルビ・スクアーロ成り代わりのザンザス寄り。
※夢主は女性です。
血が舞った。それはもう、かなりの量が一気に。
目の前には鋭い眼光を己に向ける山本武が立っていて、黒凪はすっと目を細めた。
そうか、それがあんたの流派…最強無敵、ねぇ。
斬られた箇所を抑えても、流れる血が止まる様子はない。
長い長い銀髪に赤い血の色が染み付いて、はらりと上着が捲れた。
露わになった傷口を見た黒凪は此処までか、と眉を下げる。
すると山本は目を見開いて自ら鮫が放たれた水に入り込もうとする黒凪の手を掴んだ。
『…何だ、情けは掛けるな』
「!ちが…」
『貴様の勝ちだ、山本武』
早く逃げろ、と告げて手を振り払い水の中へ入り込む。
水面の向こう側からは山本のスクアーロ、と呼ぶ声が聞こえたが、自傷気味に思わず笑ってしまった。
ずっと名乗り続けた偽名だ、その名前に敏感に反応する程スクアーロと言う名前で呼ばれてきた。
目を閉じれば、色々な事が思い浮かぶ。
いつも荒い扱いを受けていたあのクソボスも、いつも自分を馬鹿にしていたあの生意気な後輩も。
何かと私を気づかうオカマに、ボスが大好きでしょうがない奴。後は不思議なガキ、と変なロボット。
何かと濃い毎日だった様に思う。
なんでこんなに思い出してるんだ?…ああ、そうか。死ぬからか。
『…死、…ぬ』
「なぁ、ボス…アイツ沈んだけど」
「……ほっとけ」
「ふう、まさか黒凪が負けるなんてね」
ごぽ、と空気の塊が零れだした。
死ぬ、会えなくなる、もう、あの憎たらしいボスにも。
そこまで考えて目の奥がじわりと熱くなった。
今まで男として生きて来た、誰も女として自分の事など見ていなかっただろう。
でも、それでも。
目を大きく見開いた。
目の前には鮫の大きな口が迫っている。
頭を食われるわけにはいかない、と義手を代わりに鮫の牙に絡ませた。
――――…死にたくない。
そう思った自分に思わず笑みを零した。
どの口が言うんだか。生きていてもどうせあの男に殺されるだろう。
でも、こんな鮫に殺されるよりはいいかな、なんて思ってしまった。
「スクアーロ!スクアーロ何処だ!?」
「おい野球バカ!早くそこから出ろ!!」
「でもスクアーロが…!」
「そんな奴どうでも良いだろ!」
そう獄寺が山本に向かって怒鳴るが、山本は聞く耳を向けない。
その様子に只々眉を潜める獄寺。
ヴァリアー側も同じだ。
先程まで躊躇なく戦っていて、最終的に自分の手で斬ったんだろう。
何を今更焦っているんだ、と。
すると静かに山本を見ていた綱吉が徐に口を開いた。
「何かあったの?」と言う率直な質問に歯を食いしばった山本は水の中を見渡しながらこう言った。
その言葉にヴァリアー側は目を見開き、拳を握りしめる。
「だって、アイツ…!スクアーロは女だったんだ!!」
「…え」
「女ぁ!?」
そう、スクアーロは女だ。
だがそれを悟られない程強い奴だった。
彼女はヴァリアー内では本名である黒凪と言う名前で呼ばれていたが、外ではスクアーロで通している。
そんな女だった。女である事を悔いている、男みたいな女だった。
恐らく上着が破けた時に体格を見て判断したんだろう。
最期に後味の悪い事を思い出させて、いや、正確には再認識させてくれたものだ。
思わずぽろ、とベルフェゴールが呟いた。
「黒凪ってさ、ムカツク奴だったけど」
「ベル」
「…嫌いじゃなかったな、俺」
「………」
ザンザスが言葉を止めようと名を呼んだが、ベルは呆然とモニターを見て言った。
その言葉を咎めようとしないザンザスは静かにモニターに目を戻した。
モニターにはもう何処にもスクアーロの、黒凪の姿は無い。
もう恐らく鮫の餌食になっているんだろう。あの傷では助かる筈も無い。
一方綱吉は微妙な表情のザンザスを見ると呟く様にベルフェゴールが言った名前を復唱した。
「…黒凪」
「え、なんか言いましたか?十代目」
「え?…ううん、何でもないよ」
これが、スクアーロの本名。
確かに強いし言葉も荒いし目付きも悪かったけど、いざ女だと思うと女にしか見えないものだな。
と微かに眉を下げた綱吉。
そんな綱吉の前に静かに現れた山本はバツが悪そうな顔で足を止めた。
山本は水で濡れていて、刀をぎゅっと強く握っている。
今になって隣に物足りなさを感じるのは。
(よう、黒凪)
(…テメェか、ディーノ)
(お前も今回は無茶したな。…そんなにザンザスが好きなのか?)
(はぁ?馬鹿な事言うな)
(…お前が着いちまった立場もしんどいよな。あんまり無理すんなよ)
(……るせぇよ。)
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