ぬらりひょんの孫
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太陽のような人
『私を殺してくださらなかったようで』
「……」
鋭い眼光を向けられたのは鯉伴では無く、その父親であるぬらりひょん。
ぬらりひょんはキセルを吹かせると頭をがしがしと掻き、困った様に黒凪を見た。
黒凪は見て頂いたのでしょう、とぬらりひょんの側に置いてある血に濡れた封筒を指差した。
まあ、な。と頷いたぬらりひょんは鯉伴には見せていないと言った。
その言葉に更に目を鋭くさせる黒凪。
『あの人にも見せて頂いて構いませんでしたが』
「…あんたはアイツを何か誤解してるよ、黒凪さん」
『いいえ、私は知っています。ずっと見て来たんです』
すっと向けられたぬらりひょんの眼。
それを見返した黒凪はもう隠す事も無いと全て話した。
全て知っているのだ、と。
そしてあんなにも自分か前妻の事で揺れている男を許せないと。
それを聞いたぬらりひょんは小さく笑って黒凪を見た。
「儂も言われた事あるのう、妻に」
『…そうですか。私は特に気が短いんです。直接言わせて頂きます』
「鯉伴にかい?」
『えぇ。喧嘩になってでも、此処を出させて頂きます。リクオは…あの子の気持ちのままに』
そこまで言って、黒凪は静かに笑った。
出させて頂きますって、誰も引き留めて居ませんよね。
そう言うとぬらりひょんはあのなぁ、と声を掛けるが黒凪は静かに立ち上がった。
その様子を見てぬらりひょんは何を言っても無駄か、と目を閉じる。
そして彼の側に在る封筒の中には離縁を求めますと大きく書かれていた。
黒凪はぴしゃんと襖を閉じると鯉伴の部屋に向かった。
鯉伴の部屋には明かりがついており、襖を断りなく開けば独り座る鯉伴が黒凪を見た。
『鯉伴様、話がしとうございます』
「……あぁ。俺も丁度あんたと話したかったんだ」
『…私は近々此処を出ようと思います』
「駄目だ」
間髪入れずに帰ってきた言葉。
その言葉に笑った黒凪は何時まで私を縛り付けるおつもりですか、と彼を睨んだ。
が、鯉伴は何も言わず口を開く。
「何処にも行くな。俺はあんたを愛してる」
『馬鹿言わないでくださいな』
「言ってねぇ」
『言っています!!』
ばんと封筒を机に叩き付けた。
その音に驚く様子も無く黒凪を見上げる鯉伴。
そんな鯉伴を見下した黒凪は彼の頬を思い切り叩く。
赤く腫れた頬を抑える事もせず黒凪を見た鯉伴。
『貴方は、私がどれだけ嫌だったか知らないのでしょうね…!私が!私がどれだけ貴方を愛しているかも!!』
「…………」
『そんなに中途半端に私と居るなら、いっそ捨ててください!!』
鯉伴は全て言い切り肩で息をする己の妻を見上げ、目を見開いた。
黒凪は、泣いていた。
鯉伴は立ち上がって黒凪を強く抱きしめる。
かなりの痛みだ、こんなに痛い抱擁があろうか。
痛みからか、この男を許せない気持ちからか。
胸板を思い切り押し、鯉伴から離れる。
そして鯉伴は慌てた様に黒凪の両手を掴んだ。
黒凪の手には包丁が握られている。
『此処で死にます!もう沢山!』
「止めろ」
『貴方の側に居ること自体生きた心地がしないんです!鯉伴さんなんて大嫌い!!』
「止めてくれ!!」
黒凪の大声に勝る程の大声だった。
いつも落ち着き払っている彼からは想像もできない程の大声。
その大声に言葉をいったん止めた黒凪だったが、掠れる声でもう一度「大嫌いよ」と言った。
そこまで聞くと鯉伴にもう一度抱きしめられ、黒凪も次は抵抗しなかった。
「…本当に愛してるんだ、確かにあいつを忘れられねぇよ」
『…っ』
「でも、俺はちゃんとあんたを愛してる。リクオも愛してる、…悪かった、…悪かったよ」
今まで留めていたのに
(勝てるわけないじゃない)
(あんな綺麗な人に)
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