BLEACH
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貴方に会いに来たの。
市丸ギンはやっぱり松本乱菊のために死んだけど、乱菊さん以外にも心を許せる存在がいて、そこには何か愛のようなものがあったら。
「…やっぱりなぁ。」
声に少し目を瞬かせる。
「死ぬなゆうた所で死ぬ気やったもんなあ。」
…あぁ、懐かしいな。
しばらく聞いてこなかった声だ。
随分と前に死んだ男の声だ…。
「僕が死んだ時からいつか死んだろて思てたやろ、キミ。」
『…別に、貴方の為じゃないわよ。』
「アレ? そうなん?」
ぐっと意識を現実へと戻すと、尸魂界へと進行してきたクインシー達が破壊の限りを尽くす音がする。
隊士たちが私に縋り付いて泣く声がする。
空座町での決戦時にもなんだかんだ生きて帰っては来たけれど…やっぱり命の終わりというものはやってきた。
まあ、やる気の面で言うと今回と前回では天と地ほどに違っていたわけだけれど。
『(これでやっとあの世に逝ける――)』
目を閉じる。
死ぬ間際だと言うのになんと心地の良い事か。
「ほうら。死ぬ気やったやん。」
再び目を開く。
今度はまたあの世を映すことが出来たらしい。
ニコニコと笑ってこちらを見ている男…市丸ギンを呆れたように見上げた。
『…貴方は相変わらずずっとニコニコニコニコ。…でもそうね、すっきりしてる。』
「うん?」
『良かったんじゃない? 松本副隊長のために名誉の死を迎えられて。おかげで彼女、今でも貴方のことをたまには思いだしてどんよりしてるんだから。』
「なんやトゲある言い方やなあ。」
困ったようにぽりぽりと頭を掻いて言ったギンに「フン」と目を逸らし、いつもの癖で腰にあるはずの斬魄刀へと手を伸ばして、戻す。
死後の世界にまでは斬魄刀はついてきてくれなかったらしい。
手が空を切った。
『…私は今でも怒っているの。あなたが私を頼らなかったこと。』
「…」
『2人ならきっと上手くやれたわ。…きっと。』
「…そうかもしれへんね。」
でもボクがキミを乱菊のために巻き込むのもまたちゃう話やん?
そんなド正論にむっとギンを睨むと、「ま、言うてる意味は分かるけど。」とフォローのようなものをつけ足して彼は私の手を取った。
それを振り払うことはしない。しなかった。彼が生きていた時から。
「ゴメンなあ。ボクのこと好いてくれてたのに、こんなことになってもうて。」
『…』
「…ゴメンな、キミにやったら相談できそうやったのに、せんくて。」
キミの言う通り、2人やったらどうにかなったかもしれへんなあ。ゴメン。
そうギンが言い終わった時には、両目からぼろぼろと涙がこぼれていた。
『結局何も出来ていないじゃない。』
ぽたた、と涙が落ちて消えていく。
でも、ギンの手の甲に落ちた涙はそこに残ったのが見えた。
『一緒に暮らす事も、一緒にご飯を食べる事も』
「…うん」
『貴方は私と何もする事無く去って行ったじゃない…』
「…、うん」
愛していると、…そう言ったのは貴方だったのに。
眉を寄せて涙を流す黒凪にギンは困った様に笑って顔を伏せた。
「…うん。ボクもまあ口をついてキミに愛の告白をしたときはどうしようか思たんやで? …ま、キミのことが大事やったから相談出来へんかったんかなあ、藍染隊長のことは。」
『っ…』
「でもキミがそんなにボクのこと好いとってくれてたとは思ってなかったわ、正直。…ゴメンなあ。」
『…戦うことしか取り柄がなかった私にとって貴方の言葉がどれだけ嬉しかったか。だから貴方のこと、本当に大好きだった。』
ギンの私の手を握る手に力が入って、空いているもう片方の手が私の頬に回って、ぐいと顔を上げさせた。
ギンと視線が交わる。きっと私の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていることだろう。
「だから死ぬつもりやったん?」
小さく頷くとゆっくりと抱き寄せられる。
「僕に会えると思たん?」
…また頷いた。
『死ねば、会えるんじゃないかと思っていたの』
「うん」
『…会えたじゃない? ねえ?』
「…そやなぁ、」
僕もええ加減見てるだけは辛なってた所や。
もうちょっとキミのことを空から眺めててもよかったけど、せっかく来てくれたんやからなあ。
そんな言葉に背中に手を伸ばしてぎゅう、と強く強くギンを抱きしめた。
生きていたころにはできなかった、抱擁を必死に味わうように。
共に生きる為に死に逝く
(死は終わりではないのだと、誰が言ったのだろう。)
(死者はきっと私たちを待っていてくれていると、誰が。)
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