ぬらりひょんの孫
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太陽のような人
奴良若菜成り代わりの奴良鯉伴オチ。
悲恋要素あり。
私にとってあの人は太陽の様な人でした。
黒い髪に金色の眼。
あの漆黒の髪は太陽とは言い難いと思うけれど、私にとっては太陽でした。
でもあの人はいつも私では無く虚空を見つめていました。
私は小妖怪達に聞いて、もうとっくに知っています。
私の事を愛してなどいない事も、全て。
『あなた』
「ん?…おう、黒凪か」
『リクオと遊んでいらっしゃるんですか?』
「あぁ。こいつ、偉く元気でよぉ」
きゃっきゃと遊ぶリクオを見る目は優しくて、少し安心した自分が居る。
自分は愛していないが、息子はやはりいとおしいのだろう。
私は馬鹿な女だ、こうなる事を知っていてこの人に惚れてしまったのだから。
小妖怪に聞かなくても知ってました。だって読んでいたから。
この先貴方が山吹乙女に殺されることも知っています。
だからこそ分かっているんです。
『ねえ、あなた』
「ん?」
『私とあなた、どちらが必要でしょうね』
黙って、鯉伴は静かに黒凪を見た。
黒凪は小さく笑っていた。
鯉伴が口を開こうとした時、リクオの元に黒凪が行ってしまう。
鯉伴は通り掛かった鴉天狗にリクオを任せると黒凪の手を引いて部屋に入る。
連れられて部屋に入った黒凪は笑顔で鯉伴を見上げた。
鯉伴の顔は苦しげに歪められていた。
「あんたは必要だよ、俺にとっても、組にとっても」
『…ええ、分かっています。ちょっと聞いてみただけですよ』
「………」
『ああそうだ、洗濯物干さなくちゃ』
彼女はわざとらしく去った。
それを見た鯉伴はくそ、と壁を叩く。
こうなってしまったのは自分の所為だろうと悔やみながら。
そんな事があって1週間程だったろうか。
鯉伴はリクオを連れて散歩をしていた。
そんな時自分が愛した女性、山吹乙女にそっくりな少女が現れたのだ。
その様子を隠れて見ていた黒凪は目を細め、静かに歩き出した。
少女が持つ刀を見つけたからだ。何となく気が付いていた、今日があの日だと。
後少し。後少しであの人が殺されてしまう。
好きなの。どうしても好きなの。
他の人を愛していても。
「!?」
「…おかーさん…?」
『………この人は殺させないわ』
ぐさ、と刺さった刀を手で掴んだ黒凪は少女の手から刀を抜き取った。
そして自分の腹部からも刀を抜き取る。
何故抜き取ったか?私が死ぬためです。
もうこれ以上、この人を傷付けては駄目。
『私の、役目は……おわ、たから…』
「黒凪…!黒凪!」
『…ふふ、私が、居なくなって…』
よかったですね。
その言葉は重く彼の心に響いただろう。
助けを呼ぶ為にリクオを行かせようとした鯉伴だが、リクオの手を掴んだ黒凪によって阻止される。
此処で私が死んで、この人の心に刻みつける。
これが、私の愛し方。愛してもらえなかった、女の末路。
「…俺が行く。リクオ、母さんを護っててやってくれ」
「う、ん」
『……リクオ…』
黒凪は静かにリクオを抱きしめた。
愛してるわ、と優しく言うとリクオの頭を撫で黒凪は微笑む。
この子にだけ。愛しているわと言ったのは、この子だけ。
あの人には愛していると言った事は無い。
これも全部あの人は気づいているのかしら。
私は嫌な女よ、私を愛してくれなかった人を恨んで、こんな仕打ちをして。
「黒凪様!」
「どけ、俺が見る!」
『鴆、さ…ま』
「待ってろよ、今助け――…」
鴆は目を見開いて言葉を止めた。
なんで、この人はこんなにも嬉しそうに笑ってるんだ?
まるで助けなくていいと言っているようだった。
鯉伴が黒凪の側で膝を着いた。
そして口を開こうとするが、黒凪の手によって閉ざされる。
『………せ、……い、わ』
「!!」
鴆と鯉伴だけだろう、彼女の言葉が聞こえたのは。
その言葉に目を見開いた時、彼女の意識が途切れた。
鯉伴は言われた言葉に座り込むと悔しげな表情で側に寄ったぬらりひょんを見上げた。
言わせないわ
(なぁ、)
(はい)
(夫婦になってくれねぇか、俺と)
(―――はい!)
(あの頃は大好きでした。あの頃は、ね)
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