犬夜叉
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伝えたい
『殺生丸様、この着物りんにどうでしょう』
「あぁ」
『うふふ、きっと喜ぶわ』
「おい黒凪!貴様殺生丸様と祝言を上げたからと言って馴れ馴れし……」
殺生丸が咎める様に「邪見」と一言言った。
その一言に震え上がった邪見は魚でも獲ってきますー!と走り出す。
そんな邪見にくす、と笑った黒凪は側の殺生丸を見上げた。
目が合い、小さく微笑めば殺生丸はフンと目を逸らす。
『りんを人里に置いてもう3年ですか…、早いものです』
「……お前は」
『はい?』
「…子は要らんのか」
え?と素っ頓狂な声を上げた黒凪に黙って背を向ける殺生丸。
彼の言葉の意味を理解した彼女はぼん、と顔を赤くさせ俯いた。
そして「ああ、幸せな事だ」と笑顔が零れる。
誰が予想し、暗示しただろうか。
大妖怪である殺生丸様と奈落の分身として生まれた私が祝言を上げる事など。
…そして子を成す事など。
『(ああ、かごめに見せてあげたい)』
私が此処にいるのはかごめのおかげなのだ。
あの子が居なければ奈落の毒に侵され、此処には居なかった。
チラリと此方を見る殺生丸に「是非、授かりとうございます」と笑顔を見せた。
ぽろ、と目の端から零れる涙。
殺生丸は静かに黒凪に近づくと彼女の頬を伝う涙を指で掬い取った。
「…お前はよく泣く」
『嬉しいのでございます』
「泣く程か」
『勿論。…貴方様と共に居られるだけで、本当に』
ふわりと笑った黒凪に目を細めた殺生丸。
彼は徐に空を見上げるとひょいと黒凪を持ち上げ、歩き始める。
すると丁度良いタイミングで魚を片手に邪見が戻って来た。
殺生丸が邪見の名を呼ぶと、邪見は返事を返しながら殺生丸に捕まる。
そうして走り出した殺生丸に黒凪は不思議気に首を傾げた。
『何処に向かうのですか?』
「…人里だ」
『りんの元へ行くのですか?どうしてまた急に……、!』
風がさあ、と髪を撫でる。
目を見開いた黒凪はばっと殺生丸を見上げた。
鼻が利く彼の事だ、恐らく気づいたのだろう。
黒凪は驚いた様に口を開いた。
『…かごめが、此方の時代に帰って来たのですか…?』
「……。匂いは確かだ」
『私も今風達に聞きました。……連れて行ってくださるのですね』
「あぁ」
ありがとうございます。と殺生丸に身を任せ、微笑む黒凪。
殺生丸は飛び上がると黒凪を落とさぬ様にと彼女の背中に手を添える。
その事にまた微笑んだ黒凪も応える様に殺生丸の首に腕を回した。
殺生丸は頬に当たる黒凪の黒髪にチラリと目を移す。
『殺生丸様』
「……」
『大好きです』
「……。あぁ」
ぶっきらぼうに返した彼にふふ、と笑う黒凪。
やがてすぐに人里に辿りつき、かごめの匂いに向かって速度を上げた。
ばさっと草むらから抜け出し木の枝を蹴り上げて飛び上がる。
ふわりと浮いた拍子に地面を見れば、犬夜叉と共に歩くかごめが目に入った。
かごめは微かに目を見開くと黒凪の顔を見て笑顔を見せる。
「黒凪!」
『かごめ、帰って来たのですね』
「うん!つい昨日なんだけど…。……」
かごめは黒凪の背後に何食わぬ顔をして立つ殺生丸を見上げた。
チラリとかごめを見る殺生丸。
かごめはそんな殺生丸ににやりと笑った。
その表情に「ん?」と同じ顔をする犬夜叉と黒凪。
「2人ってお祝言あげたんだよね?」
「………」
「ね?」
「…あぁ」
渋々と言った様に頷いた殺生丸。
かごめはにっこりと笑うと犬夜叉の腕にぎゅっと抱き着いた。
その行動にぎょっとする犬夜叉と変わらず無表情の殺生丸。
かごめは嬉しげに口を開いた。
「私達も近い内にあげようと思うんだけど、来ない?」
「…行かぬ」
「えー。来てよ、お兄さん」
"お兄さん"。かごめのその言葉にむっと眉を寄せた殺生丸。
確かに犬夜叉の兄であるのだから、その犬夜叉と祝言をあげるかごめにとって殺生丸は兄だろう。
が、犬夜叉と殺生丸の嫌そうな顔に「え?」と驚くかごめ。
一方黒凪はくすくすと笑った。
『良いではありませんか。行きましょうよ、殺生丸様』
「……行かぬ」
「ケッ。くんなくんな」
「えー!来て欲しいじゃないお兄さんなんだから!」
兄貴じゃねぇ!と間髪入れず言う犬夜叉。
何も言わない殺生丸にまた黒凪が笑った。
ではこれはどうでしょう?と口を開いた黒凪。
殺生丸は何も言わず彼女に目を移した。
『私がかごめの祝言に友人として出席します』
「おう。それならまー…」
『殺生丸様は私の付添いです』
「げっ」
眉を寄せた犬夜叉、殺生丸。
良いでしょう?殺生丸様。と微笑み掛ける黒凪。
そんな黒凪をじーっと見た殺生丸はため息を吐いた。
ごちゃごちゃと無礼だなんだと騒ぎ立てる邪見を無言で叩く殺生丸。
かごめはそんな2人の様子に嬉しそうに微笑んだ。
「でもよかったぁ、殺生丸もちゃんと幸せになれて…」
「………」
「殺生丸の事なんてどーでも良いじゃねーか」
「何言ってるのよお兄さんでしょー。」
だから兄貴じゃねぇ!そう言ってガルル…、と威嚇する犬夜叉。
かごめははいはいと軽くあしらって黒凪の手を握った。
黒凪は眉を上げ、首を傾げる。
「黒凪も幸せそうで良かった。祝言、来てね。」
『ええ、勿論』
「うん。……所で子供は産まないの?珊瑚ちゃんの所もう3人目だよ?」
『そうなのですか!?なら私達も、』
張り合う物ではないだろう。
そう言って黒凪を抱えた殺生丸。
もう耐えられなかったのだろう、主にかごめの目から。
走り出した殺生丸にかごめはムスッと眉を寄せた。
「もー。まだ話してる最中だったのに…」
「あの殺生丸が逃げるなんて…。お前スゲェ女になったな…」
「何じーんとしてるのよ、もう」
ふんと犬夜叉から目を逸らしたかごめはすうっと息を吸った。
そして「祝言来てねー!おにいさーん!」と殺生丸に向かって声を張り上げる。
殺生丸は"お兄さん"と言う言葉にまた眉を寄せた。
黒凪はその様子を見てまた小さく笑う。
『これから毎回言われるやもしれませんね』
「……」
『怒ってらっしゃるのですか?』
ちょいちょいと寄せられた眉間を擦る黒凪。
すっと表情を元に戻した殺生丸は黒凪をチラリと見て目を細めた。
少し咎めるような彼の表情に眉を下げ、笑う黒凪。
黒凪はぷっと笑うとぐっと彼に顔を近づけた。
貴方との幸せを。
(ゲッ、本当に来てんじゃねーか殺生丸のヤロー…)
(わっ、すっごい眉寄せてる!)
(殺生丸様、笑ってくださいなこんな時ぐらい…)
(馬鹿者!殺生丸様が笑うわけ無かろうが!)
(………)
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