薄桜鬼
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なみだを隠すように、笑う
from the theme of, 君が、笑う [確かに恋だった]
冷たい手の平。
細くなってしまった指。
力が入らない様子の白い手の甲。
骨が浮き上がった手首。
伏せられたまつ毛、目の下の隈。
『…総司さん』
「……んー…?」
『お薬は喉を通りますか?』
「…うん、きっと」
薄く目を開いて起き上る。
彼は咳を数回繰り返すとチラリと黒凪を見上げた。
粉状の薬を喉に通すと苦しげに吐き出してしまう。
やはり無理だった、と薬を下げようとすると彼の細い手がそれを阻んだ。
驚いた様に彼の顔を覗き込むと彼は静かに首を横に振る。
「飲ませて、次は飲めるから」
『でも無理をなさっても…』
「大丈夫。…お願い」
眉を下げる。
勿論許したと言う事ではない、寧ろもう止めてと伝えたかった。
それを理解してか解らないが総司は困った様に笑って手を差し出す。
君が飲ませてくれないなら自分で、そう言っているようだった。
「…僕はね、生きていたいんだよ」
『……、でも、』
「君ともっと一緒にいたいんだ」
ふいに顔を伏せる総司。
ぽたた、と布団の上に雫が落ちた。
それを見た瞬間、黒凪の瞳にぶわりと涙が溢れる。
泣いている。誰より強気で弱み何て見せなかったこの人が。
「君といたいんだよ」
『……っ』
「一緒に眠って、起きて。その日その日の奇跡に2人で笑うんだ」
それだけで良い。
僕はやっと気づいたんだ、1日1日がどれだけ大切か。
生きていられる今がどれだけ貴重なのか。
だからこそ。
「薬を頂戴?…無理をしてでも、どんなに痛くても」
『総司さ、』
手から薬がするりと抜き取られる。
僕は生きていたい。
そう言って顔を上げた彼の瞳にはまだ涙が残っていた。
少し充血している目、頬を濡らしている涙。
彼はゆるりと笑った。
「大丈夫。…僕はまだ戦える」
『!』
「君を護るよ。」
『…っ、~』
涙が次々零れて、顔を見ていられない。
思わず黒凪は顔を両手で覆った。
その間にも薬を飲み込む総司。
彼は少し苦しげに眉を寄せた。
「黒凪ちゃん」
優しい声が聞こえる。
始めて会った時は「殺すよ?」なんて普通に言っていたのに。
今私に向かって話す彼は何と弱々しい事か。
刀を腰に差しいつも尖っていた。
まだ寡黙ではあったが斎藤の方が心を開いていてくれたように思う。
「黒凪ちゃん」
『…、はい、』
「好きだよ」
『…はい』
私もです。
また涙が零れた。
ぽたぽたと落ちる涙に総司がまた笑った。
どうか逝ってしまわないで
(ねえ、側に居てよ)
(いますよ)
(…居る?黒凪ちゃん)
(はい)
(……ねえ、何も見えないんだけど)
(…、でもお傍にいるんですよ?)
(…そ、っか)
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