NARUTO
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大切で、大好きで、ずっと一緒にいたくて。
白成り代わりの再不斬オチ。
NARUTO中編 "桃色に染まる"とは全く関係ありません。
※夢主は女性です。
再不斬さん。
忌嫌われた僕を拾ってくれた、再不斬さん。
本当に僕は貴方が大好きでした。
僕には貴方しかいません。
《…お腹がすきました、再不斬さん》
《はぁ…、ったく。……乗れ》
《!…走ってくれるんですか?》
《…早く乗れ。》
僕の為に走ってくれた貴方も、戦う術を教えてくれた貴方も。
全部全部大好きでした。
例え道具としてしか見られていなくても良いです。
僕は道具として、手足として一生懸命働きます。
だってこの命は、
《僕は再不斬さんの武器です。盾にも喜んでなります。…お傍に置いてください》
《………好きにしろ》
《!…はい!》
貴方の為にあるのだから。
再不斬に迫る雷を纏った手にあの人が貫かれるまで後数秒。
何が何でも殺させるつもりは無かった。
例えそれが、僕と再不斬さんの永遠の別れになろうとも。
再不斬の前に滑り込んで、どうにか自分も助かろうと術を発動した。
が、術が間に合わない程の速度で迫っていたカカシの千鳥は容赦なく黒凪の左胸に風穴を開けたのだ。
せり上がる血が口から零れて、動かない腕を必死に持ち上げカカシの手を握り絞めた。
「!?(コイツ…)」
「にーちゃん!!」
「ククク…、よくやった。黒凪」
『(僕は女だと言ったのに、全くあの子は、)』
ナルトの悲痛な声に目を一瞬向けた黒凪は己を呼ぶ声に眉を八の字に下げた。
そして先程一瞬チラついた再不斬の驚いた様な表情を思い浮かべると満足だ、と目を細める。
僕が身代わりになった事を少しでも悲しんでくれたなら、僕はそれだけで…。いや、
再不斬さんが生きていられるなら、それで。
徐々に視界が歪んでいく。頭も重くて持ち上げていられない。
それでも手の平の力だけは抜かなかった。再不斬さんが少しでも殺しやすい様に。
もういっそ自分ごと斬ってくれても良い。
後数分で尽きる命なのだから。
「黒凪、動くなよ…」
『…わ、か………す』
「っ…!(まさか再不斬を庇って飛び込んでくるとは…、しかもこの子、)」
「なんで…っ、どういう事だってばよぉ!」
再不斬が刀を振りかぶり、一気に振り下ろす。
カカシは黒凪が踏ん張っている為動けずにいた。
それを見たナルトが走り出し、渾身の力で再不斬の一振りを受け止める。
足がミシミシと音を立てたが、その一瞬の隙を見てカカシが黒凪の足を払いナルトの襟を掴んで背後に跳んだ。
再不斬の刀は地面に衝突し、チッと再不斬が眉を寄せる。
するとカカシがまだ辛うじて生きている黒凪を覗き込むと再不斬に向かって口を開いた。
「この子、女の子だろ」
「…それがどうした?」
「え……」
「少年ではなかったのか!?」
カカシの言葉に遠巻きに見ていたタズナやサクラが目を見開いた。
そしてサクラはそんな、と口元を抑える。
私と同じ女の子なのに、カカシ先生の千鳥を自分から何の躊躇も無く受けたの?
そんなサクラの視線の先では黒凪が最後の力を振り絞ってカカシのまだ胸を貫いている手を更に力を籠めて握り絞める。
再不斬さん、早く。と掠れた声で言う黒凪。
その様子にナルトも悔しげに眉間に皺を寄せた。
僕は再不斬さんが大好きなんです。だから生きていてほしい。
『僕…は、再不斬、…さん…の…武、器です…から』
「違うってばよ…!お前は再不斬の事が…!!」
それ以上は言っちゃ駄目です。そう言っている様に黒凪がナルトに向かって微笑んだ。
ナルトは思わず口を噤んだが、再不斬は背後を振り返ると刀で背後から迫ったクナイを弾いた。
再不斬の視線の先には部下達を沢山従えたガトーが立っている。
ギロ、と睨みつければガトーは不敵に笑った。
ガトーの話によれば、もう再不斬は必要ないと言う事らしい。
つまり、再不斬は裏切られたのだ。
最悪のタイミングだった。もう少し早くガトーが来ていれば、黒凪が瀕死にならずに済んだかもしれない。
黒凪はガトーを睨む様に見るとすう、と目を閉じる。
「…カカシ。悪いが戦いは此処までだ。お前達と戦う理由が無くなったんでな」
「……あぁ」
「…ん?そう言えばこのガキィ…、腕を折ってくれたんだったかな?」
ガトーがゆっくりと黒凪とカカシに近づき、カカシの腕の中に居る黒凪を杖で思い切り叩いた。
黒凪の額からは血が流れたが、目を覚ます気配は無い。
カカシが静かにガトーを睨むが、ガトーは死んでるよコイツ、と大声で笑った。
それを見たナルトは青筋を浮かべ、再不斬を見上げる。
再不斬は黒凪を見ず、ガトーの大量に居る部下を目で数えていた。
「んで…、なんで平気で居られるんだってばよ!!お前の仲間だったんだろ!?」
「…そいつも言っていただろう。黒凪は俺の武器だ。使い捨てのな」
「違うってばよ!…っ、コイツはお前に道具として見てもらいたいたくなかったんだってばよ!!」
「…………」
黙った再不斬にカカシがナルトの肩を掴んだ。
が、ナルトは力任せにカカシの腕を振り払いガトーもナルトの剣幕に数歩後ずさる。
ナルトは黒凪を指差し、己との戦闘中に言っていた事を再不斬に伝えた。
拾って貰って嬉しかった事、武器として本当は見てほしくなかったという事。
自分は再不斬が大好きだった事。
そして、
「コイツは、黒凪は!死にたくなかったんだってばよ!お前と一緒にいたいから!!」
「…………」
「それでもお前の為に命を捨てたんだぞ!お前はあいつの気持ちを知ってたんだってばよ!?あいつは…っ、あいつはぁ…!」
「それ以上言うな。……あいつは優しすぎた。俺みたいな人間に付いて来るべきじゃなかったのかもしれない」
びり、と口元の包帯を自分で破る。
両腕は既にカカシによって使い物にならない。先程まで刀もほぼ辛うじて持ち上げて居た様なものだ。
だらりと下がった両腕を見た再不斬は少し目を細め、黒凪を見た。
分かっていた。あいつがどんな目で自分を見ていたのか。
あいつがどれだけ他人を殺す事を嫌っていたか。
あいつがどれだけ、死ぬ事を恐れていたか。
だからこそあの時飛び込んで来た時は本当に驚いた。あれ程臆病なあいつが、俺の為に…。
「…小僧、クナイを寄越せ」
「!……ん」
ナルトがクナイを投げ、それを再不斬が口でくわえた。
そして一気に走り出すとガトーは驚いて部下達の後ろに隠れた。
それを見た再不斬は速度を上げ、立ち塞がるガトーの部下をクナイで斬りながらその人混みを突き抜ける。
その先にはガトー。
ガトーは目を見開いて再不斬の剣幕に大量の汗を掻いた。
すると数秒で目の前に迫った再不斬のクナイが胸に刺さり、目を見開く。
「が、ぐ……!?」
「テメェを殺すまで俺は死なねぇぞ…。どうせ死ぬならお前も道連れだ…!!」
『………っ、』
「!?お前…」
再不斬の声に目を薄く開いた黒凪にありえない、とカカシが目を見開いた。
黒凪はそんなカカシを見ると「タフなんです」と笑い地面に手を置く。
すると瞬く間に地面が凍り、ずずず、とガトー達の方向へ。
ガトーの部下達は足元が氷漬けになった事に悲鳴を上げた。
その声に振り返った再不斬は小さく笑い、ガトーを数発斬りつけ川に蹴り落とした。
そして再不斬は足元が動かないガトーの部下達の間を縫って進むと、微笑んでいる黒凪の前で足を止める。
「……黒凪、」
『………』
何か言葉を発しようと口を動かす黒凪だが、声になる事は無い。
その様子に寂しげに眉を下げた再不斬は黒凪の伸ばされた手に顔を近づけた。
黒凪は力の入らない手で再不斬の首に巻かれた包帯を握る。
それを見たカカシが黒凪の背中を押してやり、黒凪は再不斬に抱き着く事が出来た。
黒凪は再不斬の血に濡れた肩に顔を埋めると目を閉じ、すうっと倒れ込んだ。
あ、と目を見開いたナルトは死んでいる黒凪に涙をぽろ、と流す。
「……悪か、ったなぁ…。俺は、お前に何も…」
「黒凪の、ねぇちゃん…」
再不斬はずるずると落ちる黒凪の背中に震える手で手を添えた。
ほとんど力の入らない腕だが、黒凪を支える事は辛うじて出来るらしい。
再不斬は黒凪の肩に顔を埋め、同時に2人は横に倒れた。
雪が静かに振り、黒凪と再不斬に降り注いだ。
その様子を見てナルトは、黒凪は雪の降る里で生まれたんだ、と呟くと涙を手で拭う。
カカシは悲しげに再不斬と黒凪を見て目を細めると額宛で左目を隠した。
死んでしまった僕たちは
(―――うわぁ!再不斬さん!?)
(…あ?)
(驚いた…、ほぼ同時に死んだみたいですね。僕達)
(あぁ…。そうらしいな)
(…再不斬さん、あの、その…ですね…)
(………)
(死んでからいう事でもないんですけど、その…)
(…俺もだよ)
(え…、…そう、ですか。……えへへ、)
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