犬夜叉
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伝えたい
神楽成り代わりの殺生丸オチ。
神楽の性格は180度ぐらい違います。
ずっと、お慕いしていました。
ただそれだけ、伝えたい。
なのに口は動いてくれないの、声が出てくれないの。
肩から漏れる大量の毒がどんどん自分の体を蝕んでいく。
内側から熔けていくようだ。
『……無…様…ですよ、ね』
「………」
『私だと分かって、さぞ、がっかり…なさっ、て』
私の臭いは奈落そのものだ。
あの男を追って来たのだろうに、悪い事をした。
いつの間にか居た、銀色の髪を持つ彼が私は大好きだったのに。
最後の最後まで邪魔ばかり…。
「分かっていた。…お前だと、分かっていた」
『!』
目を見開いた黒凪は小さく笑い、眉を八の字に下げる。
嬉しいけど、もっと話していたいけど。
もう、無理なのかな。
話す事も、出来ないのかな。
もっと近くで綺麗な顔だなぁって眺めておけばよかった、あの人が連れてる女の子には嫌われちゃってるかな。
一度戦かった時、本能で敵わないと思った。
そんな人に、もっと触れていたかった。
最期の力を振り絞って腕を動かそうにも、指先が少しと腕がほんの少し動いただけだった。
『…(もどかしい、この人に触れたいのに)』
「………」
影が差して、顔を上げればすぐ側にあの人の、殺生丸の顔があった。
目を見開けば、力も入らない黒凪の手を掴む殺生丸。
この人は心が読めるの?
悲しげに眉を下げる。
いっそ居なくなってしまった方が気が楽なのに、この人は私を生にしがみ付けさせるのが上手だ。
死にたくない、死にたくないよ。
自由に空を飛びまわりたかったのに。ただ、それだけだった。
…それだけ?それだけじゃない、
『……て、………ま、す』
「?」
殺生丸が静かに耳を近づけた。
黒凪は掴まれている手を動かすと力を振り絞って、殺生丸の着物を掴んだ。
そして力が抜けたまま凭れ掛かる様に殺生丸に倒れ込む。
殺生丸は抱き留める事をせず、普段の無表情のまま黒凪を見下した。
『お慕いして、おりました』
「………」
『ず、と…初めて、お会いし、た…時から…』
「……逝くな」
低い声が響いて、ぎゅっと抱きしめられた。
片手で抱きしめられただけなのに、とても温かい。
殺生丸の一言に、遂に涙腺が崩壊してしまった。
こんなにも、こんなにも大好きなのに私は…。死ぬ事しか、出来ないのか。
そんな時、己の名を呼ぶ声が届き殺生丸が振り返る。
そこには犬夜叉達が立っていた。
殺生丸の腕の中に居る黒凪を見た犬夜叉達は目を見開き、かごめが走り寄ってくる。
「黒凪!…酷い邪気…っ」
『……は、…日暮…かごめ…』
「邪気はきっと浄化できると思うけど…」
生きたい、です。
そんなか細い声が聞こえ、動きを止めたかごめ。
かごめはぎゅっと口元を噛み締めると意識を集中させて黒凪の傷口に手を振れた。
浄化されていく邪気と比例する様に目を細めていく黒凪。
完全に邪気が浄化された時には目が完全に閉ざされていた。
息をする音さえも聞こえない、そんな黒凪の様子にかごめの瞳から涙が零れる。
「嘘…、黒凪!黒凪!!」
「………、」
「殺生丸…?」
殺生丸は静かに黒凪の亡骸を置き、立ち上がった。
それを唖然とかごめが見る中、殺生丸が静かに刀を抜く。
それは天生牙だった。
殺生丸の意図を理解したかごめはその場から離れ、殺生丸が何も居ない虚空を斬る。
すると黒凪の瞼が持ち上がり、その瞳が殺生丸を捕える。
殺生丸は少し、ほんの少しだけ目を細めていた。
『…私、は…』
「殺生丸が助けてくれたの…、良かった…」
『……殺生、丸様…?』
殺生丸は何も言わずに黒凪の腕を掴んで立たせた。
立ち上がった黒凪の顔を見た殺生丸はやはり何も言わず歩き出す。
そんな殺生丸を見る黒凪の背中を押すかごめ。
振り返れば、かごめや珊瑚、弥勒が微笑んでいる。
黒凪は今までごめんなさいね、と手短に伝えて頭を下げると走り出した。
その先には銀色の髪を靡かせる殺生丸がいる。
『殺生丸様、お供させてください』
「……好きにしろ」
『…はい、好きに致します』
ずっとお慕いしておりました。
言いたかったことを、やっと伝えられた。
九死に一生を
(さっきの言葉だが)
(はい?)
(すべて終わった後に話す)
(!…ふふ、ずっとお慕いしておりますよ)
(殺生丸ってあれ照れてるの?)
(ケッ、知るかよ)
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