D.Gray-man
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必ずまた会おう
聖母ノ柩(グレイブ・オブ・マリア)成り代わりのクロス・マリアンオチ。
D灰中編 "蓮華の儚さよ"とは全く関係ありません。
「――…"聖母ノ柩"発動」
聞き慣れた声に薄く目を開く。
が、やっぱり視界は薄暗くて。
目元に巻かれた黒い包帯の隙間から辛うじて外が見える。
十字の形に開く柩の中で、外からの光に少し目を細めた。
「よお、マリア」
『――――…』
「!あれが元帥のイノセンスさ…?」
「ええ。グレイヴ・オブ・マリア…、師匠のイノセンスと言えばそうなんですが…」
言葉を濁したアレンに首を傾げるリナリーとラビ。
そんな中、クロスが徐にマリアの手を取った。
マリアが徐に前方に立つティキ・ミックを見据える。
クロスが微かに口元を吊り上げた。
「マリア、"聖母の加護"」
「…!」
「讃美歌…?」
「…マグダラ・カーテン…。マリアの技の一つです」
アレンがそう言った時、しゅん、と彼等の周りに薄い膜が張った。
それを見たティキは焦った様に周りを見渡す。
その様子を見たアレンは徐に地面に座り込んだ。
次にクロスが懐から"断罪者(ジャッジメント)"を取り出し発砲する。
「!イノセンスが2つ…!?」
「…実はマリアは、元々師匠のイノセンスでは無いんです」
「え?」
「彼女は師匠が唯一本気で愛した女性…。かつて教団のエクソシスト、しかも元帥だったそうです」
その言葉に目を見開いた一同。
ばっとマリアを見れば、イノセンスでティキに攻撃を仕掛けているクロスをじっと見守っている。
ティキが反撃を仕掛ければ、何も言われずとも美しい声を響かせ、クロスを護った。
その為クロスは余裕の表情でティキに攻撃をし続けた。
「って事は、2人は一緒に行動して…?」
「ちょっと待って、マリアなんて元帥知らないわよ…?今までだって聞いた事は、」
「マリアは多分本名じゃありません。師匠がぽろっと黒凪って呼んでたの訊きましたし」
「?……あー、分かんなくなってきたさ」
頭を抱えるラビに、アレンが困った様に眉を下げた。
そしてマリアに目を移す。
彼女は表情も見えない上にピクリとも動かなかった。
それでも何故か優しい、穏やかな表情をしているように見えるのは何故だろうか。
「…彼女は師匠が側に居たにも関わらずアクマに殺されたそうです。」
「殺された!?」
「はい。悲しみに打ちひしがれた師匠は彼女を禁忌で蘇らせて…」
「…マリアに意識はあるんさ?」
はい。アレンが小さく頷いた。
アレンの脳裏に残る彼女との記憶。
師匠は毎晩ナンパをして連れて来た女性と酒を飲むのが日課だった。
が、稀に1人も捕まらなかった時などはマリアを召喚していたのだ。
毎日毎日浮気をしている様なクロスだったが、やはりマリアは何も言わない。
「…てっきり僕は、彼女に意識は無いんだと思っていました」
「俺だってそう思うさ。動かねーし、まるで人形みたいな…」
「あはは、笑うんですよ?マリアも。…一度だけ見た事があるんです」
マリア。
クロスの低い声が聞こえる。
薄く目を開いたアレンは体を起こし、戸の隙間から部屋を覗き込んだ。
足を組んで座るクロスの周りには酔いつぶれた美女達が眠っていた。
《マリア》
《(師匠…?)》
《………》
もう一度「マリア」と呟く様に言うクロス。
マリアは小さく首を傾げるだけだった。
眉を下げて笑うクロス。
彼はマリアの頬に手を伸ばし、彼女の頬を撫でる。
彼女はやっぱり表情を変えなかった。
《―――…黒凪。》
《……ク、ロス》
《あぁ。》
マリアの声を初めて聞いた。
…否、今まで歌声は聞いていた。
話している所を見たのは初めてだった。
ゆっくり、ゆっくりとマリアが笑顔を見せる。
綺麗に孤を描く口元。
クロスは満足した様に目を細めると彼女を抱き寄せた。
《…いつか、いつか必ず元に戻してやる…》
《……クロス、》
《あぁ、…待っててくれよ。黒凪》
《クロス》
クロスの名前しか話す事が出来ないのか、何度も繰り返すマリア。
それはやはり壊れた人形の様で、無性に胸元が締め付けられた。
やっとイノセンスを扱えるようになってきた数日前。
クロスはポツリポツリとアレンにマリアの事について話した。
《マリアは師匠のイノセンスなんですか?》
《あ?…ちげーよ、俺の女だ》
《……。いくら女の人が好きだからって…》
《…馬鹿にしてるだろ、お前》
はい。そう言って頷いたアレンの頭に拳骨が落ちた。
蹲るアレンを見下し、舌を打つクロス。
するとクロスの隣にマリアが出現した。
彼女は無表情にアレンを見下し、アレンはビクッと縮こまる。
《マリアはな、数年前に死んだ……》
《…死んだ?》
《……死んだ、俺の、》
そこまで言ってクロスは目を逸らし、「あ゙ー!」と頭をがしがしと掻いた。
その様子をじっと見るマリア。
感情の無い彼女の姿にぞっとしたのを今でも覚えている。
…そして、あの時師匠が何と言おうとしたのかも、僕はずっと…。
「おい、馬鹿弟子」
「はいっ!?」
「ええ!?今の声聞こえたんさ!?スゲーなお前!」
「……マリアの話をしてんじゃねーよ…」
あっちも聞こえてる!?
そう言って絶句するラビ。
アレンは「すみません!」と頭を下げるとチラリとクロスの隣にいるマリアを見る。
彼女はやはり無表情で、ピクリとも動かなくて。
クロスはそんなマリアを見て徐に目を逸らした。
哀しい程、愛している
(俺の、大切な)
(――クロス)
(美しい声が蘇る。)
(俺の名前を呼ぶ、彼女の声が。)
(クロス元帥!?)
(…るせぇ、)
(どうしたんですか!?…まさか黒凪元帥に何か…)
(うるせぇっつってんだ!!)
(…っ、)
(それから、クロス元帥は教団に帰らなくなったのだという。)
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