D.Gray-man
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愛する人と同じ人間に。
スキン・ボリック成り代わりの神田ユウオチ。
D灰中編 "蓮華の儚さよ"とは全く関係ありません。
※夢主は女性です。
『――1対1になってくれてありがとう。イケメン君』
「あ?別にテメェの為じゃねぇ」
『君の師匠を私が狙っていたからだろう?律儀だね』
「………」
次は返事をしない彼にため息を吐いた黒凪。
彼女の額にはノアの一族である証の聖痕が深く刻まれている。
その聖痕と灰色の肌を見ていたエクソシスト、神田は静かに己のイノセンスを構えた。
それを見た黒凪は小さく笑い、右手で微かに放電する。
『君のそれさ、イノセンスでしょ?君達エクソシストって名前付けるんだよね。何て言うの、それ』
「少し黙れ。……六幻、抜刀」
『むげん?…洒落てるじゃん』
「二幻、八花螳蜋!」
此方に向かってくる神田を迎え撃つ様に地面に電気を流し、ボコッと地面を崩す。
が、ものともせずに此方に迫った神田は刀を構え物凄い速度で黒凪の背後に着地した。
振り返った黒凪はブシュ、と舞った血液に目を見開き驚いた様に腕を見下ろす。
両腕に4本ずつ傷跡があり、血が流れていた。
『凄いね、今の僅かな時間で8回斬ったの?』
「……。(効いてねぇ、な)」
『ふーん。…痛いじゃん』
「っ!」
突然落ちて来た雷に直撃した神田は眉を寄せると一歩下がる。
六幻を見れば、微かにひびが入っていた。
眉を寄せて己を見る神田に笑みを見せた黒凪は右手の拳をぐっと握る。
バチバチと放電する彼女の拳を見た神田は静かに立ち上がり、六幻を構えた。
「…お前、戦えたんだな」
『ん?』
「いつもお前は俺達を遠くから見ているだけだっただろ。」
『ああ。あれはね、戦う順番考えてたんだよ。あたしタイマンが好きだからさぁ』
そう言えば「は?」と怪訝な顔をされた。
あれー?と首を傾げれば彼はすぐに納得した様に眉を寄せる。
挙句の果てにはため息を吐かれ、なになに、と黒凪は神田に近づいた。
が、神田は刀を構え彼女を睨みつけ、黒凪は足を止める。
『…でもね。何回考えても君と戦ってみたかったんだよ。1番にね』
「俺もテメェはいつか斬るつもりでいた。丁度良い」
『物騒だなぁ。あたしは結構君の事気に入ってるのに』
「知らねぇよ」
確かにそうだけど。
がしがし頭を掻いていれば彼の刃がギュンと迫って来た。
ギリギリで避けた黒凪は神田の背中にぽんと手を付き、一気に電気を流す。
ゔ、とうめき声を上げて倒れかけた神田はブンッと刀を振り、黒凪が一気に距離を取った。
『くくく、良い動きするねぇ。』
「黙れ…」
背中が痺れるのか、眉を寄せて背中に片手を回す神田。
その様子をケタケタ笑いながら見ていると虫みたいなのが飛んで来た。
それに吹き飛ばされた黒凪は「あいたたた」と呟きながら立ち上がり笑顔で神田を見る。
神田の冷たく冷え切った目がギロリと向き、その整った顔に黒凪が目を細めた。
『ねぇ。…君がもしもこっち側だったらあたしは結構君が好きだったと思うよ。』
「神に嫌われたテメェ等程めんどくせェモンはねえだろ」
『何言ってんのさ。神に好かれた君等はじゃあ幸せなのかい?』
「…アンタ等よりはマシだ。俺はごめんだな」
そりゃあ残念と肩を竦める黒凪。
一方完全に回復したらしい神田は刀を構えると一気に走り出し黒凪に向かって刀を振り降ろした。
次々迫る刃を軽々と避けていく黒凪は六幻の刀身を掴み取る。
目を見開いた神田に笑みを向けた黒凪は物凄い電圧を流し込み六幻を圧し折った。
『はい。終了』
「なっ…」
『悪いけど死んでもらうよ。君の事は好きだけどあたし達の敵だから』
「ぐ、」
神田の胸元に拳をぶつけ、電圧も共に流し込んだ。
倒れて動かない彼を見た黒凪は腕をぐっと伸ばして息を吐く。
結構お気に入りだったのに。と頬を膨らませた黒凪は静かに歩きだした。
その内この空間も消滅するし、彼のあの美しい顔を見る事はもうないだろう。
そう、思っていたのだが。
「まだ、…終わって…」
『…え』
「ねぇぞ、クソ女…」
『っ!?』
胸を貫いた刀に目を見開いた黒凪は背後を振り返る。
長い髪で顔が隠れていて表情は見えないが、確かに彼は立っていた。
何故だ、刀も折ったし彼も殺したはず。
確かに息の根は止まっていたのに。どうして。
ぐらりと視界が揺れて自分が倒れたと理解した。
痛いと言うよりは、熱い感じ。
『…何、生きてたのー…?』
「どうやらテメェ等よりは頑丈に出来てるらしい…」
『なに、それ。……あーあ』
「……終わりだ。ノア野郎」
彼の言葉にフッと笑った黒凪はせり上がって来た血を吐きだし、横にごろりと転がる。
視線の先では疲れた様に息を吐いている神田が座っていた。
目が合った神田と黒凪。
黒凪は徐に口を開いた。
『ね、君名前は…?』
「……神田だ」
『下の名前。』
「…言わねぇ」
ケチ。と呟く様に言って目を瞑る。
自分の下に溜まっている血が髪にまとわりついて気持ち悪い。
予想以上に簡単にやられてしまった。
…あれ?ちょっと待ってあたし何分戦った!?
やっばこれもしかして時間稼ぎでもないしましてや負けてるし最悪じゃない?
笑顔の千年伯爵を思い浮かべ黒凪は乾いた笑みを浮かべた。
「……お前は」
『ん?あたし?黒凪。』
「………」
『ねぇ神田君』
視線だけが此方に向いた。
薄く笑った黒凪は彼が持つイノセンスに目を移す。
相変わらず嫌な感じしかしない物質だと思った。
『…私も君達側が良かったよう』
「は?」
『だって楽しそうじゃん?…君も居るしさぁ…』
「………」
黙り込む神田。徐々に瞼が閉じていく黒凪。
既にこの空間を出て行っても良い筈なのに、彼は何故が動こうとしなかった。
ずっとあたしが死ぬのを待っている様な。そんな気がした。
殆ど閉じられた黒凪の目をじっと見る神田。
彼は彼女の小さな小さな言葉を聞き逃す事はなかった。
『好きだよ神田君。…死なないで』
「…………」
目を閉じた黒凪。静かに立ち上がった神田。
今でも俺には、あのノアの言った言葉の意味が分からない。
今でも俺は、あの女の言葉の真意を理解できない。
…今でも俺は。
あれがどういう意味だったのか、なんて。
(あーあ。死んじゃったよ、ティッキー)
(知ってるよ。だから涙が止まらねーんだろ)
(最期は幸せだったかな?)
(さあ。でもアイツ確かエクソシストに惚れたとか言ってたよな)
(ちゃんと伝えられたのかなぁ…)
(さあな。…不器用な奴だったから知らねーよ)
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