名探偵コナン
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絶対に認めない。
降谷零の姉と赤井秀一のお話。
≪――姉さん。何度も言ってるだろ、止めた方が良い≫
『はー…。またその話?何度も言われ過ぎて何を止めた方が良いか言わなくても理解出来るわ。』
「どうした?」
『また零がねぇ…』
あぁ…。と赤井が"またか"と言いたげな顔をした。
全く君の弟君には困ったものだな。折角奴等との方も付いてやっと自由に動ける様になったのに。
そう言った赤井に「ほんとにねえ」と黒凪が笑うと「姉さん」とまた電話越しに呼ばれた。
≪今すぐそんなクソ野郎とは離れた方が良い。≫
『"今すぐ"って事はあんたどっかで見てんの?もー、尾行は止めてよ。ホントそう言う所職業病ねー』
「くく、大したものだな。FBI捜査官を白昼堂々と尾行出来るなんて」
電話越しに時折入り込む赤井の声にぎり、と歯を食いしばる。
そうして路地から少し顔を覗かせて遠目に見えるカップルを睨んだ。
携帯を片手に話している女性は金髪で色黒のモデル体型。
彼女は降谷零の姉である降谷黒凪。公安である弟とは違いFBI捜査官である。
そしてそんな姉の隣で歩く男、赤井秀一。あの男も日本国籍でありながらFBI捜査官だ。
『てかあんた長期休暇取ってこっちに来てから何日よ。いい加減に秀一に顔見せなさい。』
「そうだぞ零君。いい加減に未来の兄に顔を見せてはくれないか」
≪ふざけるな。≫
その一言でブツッと切られた通話にげんなりしている黒凪が見える。
降谷はため息を吐いて携帯を仕舞うと腕を組んで苛立った様子で人差し指を上下させた。
2人が知り合ったのは勿論FBIの中でだ。同じ様な境遇の日本人捜査官が惹かれ合うのは分からんでもない。
しかしその赤井秀一はかつて自分と同じように組織に潜入し、奴が手を下したわけでは無いとは言え幼馴染の死に関わっている。
幼馴染を殺したのだと思い込んで恨んでいたわけだが、その疑いが完全に晴れた今でもあの男が嫌いだと言う気持ちに変化はない。
「(まして赤井が俺の兄だなんて耐えられない…!)」
何としてでも姉と赤井を別れさせてみせる。
だから態々休暇を取ってアメリカにまで来たのだ。
『?(零からメール…)』
赤井が2人分のジュースを買いに行っている間に来たメールを黒凪が開く。
中にはびっしりと文字が並んでいた。
『("同い年での結婚に俺は反対だ。そもそも恋愛も上手く行かないと思う。何故なら同い年だと喧嘩になればどちらも譲れないだろうし――…")』
延々と続いている長文を最初はしっかりと読んでいた黒凪だったが、やがて面倒になり飛ばし飛ばしで大まかに読む。
そして大体を理解すると返信を打つ為にメールを開いた。
迷いなく文字を打つ姉を横目に隠れていると降谷の携帯がメールの受信を知らせる。
…以外にもメールの中身はそこまで多くは無かった。
「("年上は偉そうだからキライ。年下はあんたみたいについて回るからキライ。よって同い年。")……。」
「黒凪、これで良かったか?」
『あ、うん。いくらだった?』
「後でまとめて返してくれれば良いさ。行こう」
ジュースを片手に歩き出す2人の背中はどう見たってお似合いのカップルだ。
2人共背が高くてスタイルが良いし、顔だって同じぐらいに整っていた。
そんな2人を見ていた安室は頭を横に振りぐっと気を引き締める。
「(いや、あんなレベルのカップルはそこら中に居る。むしろ姉さんにはもっと合う人がいる筈だ)」
『……。』
「零君の事が気になるのか?折角のデートなんだ、もう少し俺に集中してくれないか」
『集中したいのは山々なんだけどね…。あの子、頭が良いしその分ずる賢いでしょ?ちょっと怖くて。』
お前と俺が協力すればいくら零君でも敵わんさ。
…弟と言うものは姉や兄にはいつまでも勝てないものだからな。
笑って言った赤井に「そうよね」と笑って黒凪が彼の腕に腕を絡める。
その姿を見たくない降谷はすぐさま顔を背けた。
「…。くそ…」
思わず洩れたその言葉は、一体どういう意味なのか。
俺は理解する事を放棄した。
「…成程な。」
『うーん…』
確かにちょっとキツイ関門かもね。
そう言う2人の前にはきょろきょろと周りを見渡すジョディとキャメル。
この状況が何を意味するかと言うと、職場仲間に職場恋愛のデート現場を目撃された様なものだ。
しかも1人は彼氏の元カノ…。
「…あら?シュウ?」
「あ、降谷さんも…」
『おはようジョディ。どうしたのこんな所で』
「それが妙な人物から突然電話がかかって来たのよ。此処に来るようにって。」
僕の所にも…でも何もなくて。
困った様に話すジョディとキャメルに頭を抱えたくなる。
別に交際している事を隠しているわけではないが、あまり見せるべきものではない。デート現場など。
しかも元カノになど。…あの子1回ぶん殴ってやろうかしら。
『多分それ無視していいと思うわよ。助けてくれとでも言われたんでしょうけど』
「ええ…。いたずら電話なら良いけど本当に危険な状況だったら放っておけないし…」
『大丈夫よ。きっとその電話私の知り合いの所為だから。だから安心して帰って』
「そう?なら良いけど…」
それじゃあ休日デート楽しんで。じゃあね。
そう言って笑顔で去っていたジョディに心が痛まぬ筈がない。
ジョディに笑顔で手を振っていた赤井も手を降ろすと少し表情を歪めた。
「…これは来るな」
『来るわね…』
ま、ジョディに電話を掛けて彼女を呼び寄せる時間から計算して降谷が通っているルートは大体予想が着いた。
降谷は恐らくこのアメリカでは日本の携帯電話を外で使う事はない。
となると必然的に公衆電話。これまでの道のりの中で我々の様子を窺いながら公衆電話を使えるルートと言えば…。
「…それじゃあそろそろ反撃と行くか?」
『そうね。さっさととっ捕まえちゃおう』
顔を見合わせ先程までとあまり態度を変えずに歩いて行く。
そうして道を曲がるとすぐさま歩く速度を上げて降谷を撒いた。
2人を見失った降谷は「しまった、」と眉を寄せ周りを見渡す。
…途端に、彼の肩を誰かが叩いた。
「っ!」
「Game over.」
『FBI捜査官の足の速さを舐めちゃ駄目よ零。』
くそ、俺の居場所を…!
眉を寄せて言った降谷に赤井が小さく笑った。
此処はいわば君にとってのaway。
そんな中で我々を尾行する為にはあまりルート変更も出来ないだろうし、もはや大抵の位置を把握してしまえば我々が君を探し出すなんて簡単な事。
「ま、日本で勝負していれば我々が負けていたと思うがね。」
「っ、そんなフォローは要りませんよ…!」
「フォローじゃない、followだ」
「どっちでも良いです!!」
全くさっきから無駄に発音の良い英語をぺらぺらと…!
『零、Calm down.』
「…僕への腹いせですか、姉さん…」
『Who cares?』
「……」
姉さん。とジト目で言った降谷に困った様に笑って「冗談よ、冗談!」と黒凪が我が弟の背中を叩く。
赤井も笑って手を離すと「いや、すまない。少し冗談が過ぎたな」と両手を上げて言った。
そして赤井と黒凪は顔を見合わせると「上手く行ったな」と笑い合う。
その様子を見て降谷は舌を打って目を逸らした。
『零、一緒にお昼ご飯食べに行こ。』
「折角遥々アメリカまで来たんだ、評判の店にでも行こう」
「…よくもまあ平然とそんな事が言えますね。僕は貴方達の邪魔をしていたんですよ」
「あれぐらいどうって事は無いさ。多少は心が痛かったがな」
でも君がどれだけ姉を大事に思っているか分かっているし、彼女もそれは理解してる。
可愛い弟の度が過ぎた悪戯だと思っておくさ。
そう言って降谷の肩に腕を回して赤井が歩き出す。
降谷はぞわっとして「止めてくださいよ!」と暴れるが赤井は離す気は無いようだ。
「こっちでは普通の事だ。その内慣れるさ」
「何故僕がこっちに合わせなければならない…!」
『秀一、ステーキハウス行こうよ。』
「あぁ。俺もそのつもりでいた」
ちょっと!そう言って顔を上げた降谷は此方に向けられている笑顔に思わず目を見張った。
今日は私達のおごりだから沢山食べな。
そう言った黒凪にぐ、と眉を寄せて再び視線を降ろす。
「…普通は男が払うものでは?」
『何言ってんの、お姉さんとお兄さんに任せなって。』
「……」
『…あぁ、秀一が払えって事?良いじゃない、私達同い年なんだからそこの所の気遣いは要らないのよ。』
その言葉にはっとする。
…そう言う事か。目を細めてため息を吐いた。
姉は気遣われる事も、相手を気遣う事もあまり好きな方では無い。
――そりゃあ気は楽だろう。そう思って、降谷は徐にガッと赤井の肩に腕を回した。
ええい、こうなりゃヤケだ!
(ほら、さっさと行きますよ!)
(…どうした零君急に…)
(良いから行きますよ!本当にムカツク姉と………赤井だ!)
((兄とは呼ばないのか…))
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