名探偵コナン
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トリプルフェイスの真実
赤井秀一成り代わりの降谷零(バーボン)オチ。
探偵連載"隙ありっ"とは全く関係ありません。
※夢主は女性です。
「――ただいま…」
酷くくたびれた様子の声が部屋に響く。
がた、と音を立てながら靴を脱いで片手で金色の髪をがしがしと掻き混ぜる。
そして背中を丸めて足を上げ、部屋に上がった。
電気をつけて部屋を見渡しながら着ていた上着をハンガーに掛ける。
…扉の開く音がした。
『――ただいま。』
「…おかえり」
『ああ、帰ってたんだ。おかえり。』
「…ただいま」
酷く疲れてるな。大丈夫?
そんな風に笑い交じりに言いながら此方の部屋へ近付いてくる足音がする。
男の自分とは違って静かな足音。床がきしむ音はない。
するりと部屋に入ってくる。まるで幽霊の様に。
癖毛の髪が視界の端に過った。
『夕食は?』
「外で食べた。」
『そ。じゃあ1人分作る。』
「…今からか?」
酷くぶっきらぼうな会話が続く。
自分の短い言葉にも「うん」と返してくれる彼女の小さな小さな優しさに、心が綻んだ。
今日の任務、そんなに激務だった?
冷蔵庫が開かれる音がする。自分とは違ってまだ体力の残った様な声色が此方に掛けられた。
「あぁ。2人殺した。」
『ふーん。それはご苦労様。』
「…あぁ」
『…ドーピングしたら?』
そう言ってひょいと放り投げられた栄養ドリンクを受け取った。
迷わずその栓を開いて喉に流し込む。
しゅわ、と炭酸が喉を通った。飲み干した様子を見越して彼女の掌が此方に向けられる。
その手の平に瓶を放り込めば難なく指が瓶を包み込んだ。
『風呂入りな。』
「…あぁ」
『…くく、もうちょっと元気出せよ。恋人の前だろ。』
「……。」
何も返さずに部屋を出る。何て愛想のない。
そんな自分に何も思っていない様な様子で彼女は背中を見せる。
そう言う所が好きだった。風呂から上がって部屋に戻れば彼女は珈琲を片手にテレビを見ている。
その隣に座れば彼女の緑色の瞳がちらりと向けられた。
『組織に居る時の紳士は何処へやら。』
「家の中でぐらい素で居させてくれ。」
『おお、ちょっと元気出たじゃないか。』
そう言って頬にキスが1つ。
外国で長く暮らした事があると言っていただけはある。
そのスキンシップは日本人からすると少し西洋的だ。
「…元気が出た様に見えるか?」
『見えるね。言葉が長くなったから。』
もう寝たら?
そう言って席を立った彼女の背中を見送る。
疲れている時の干渉はきわめて少なく。
そう言ったルールを決めた事はないが、何処と無く暗黙のルールとなっている様な気がした。
そう言った部分も心地良い。
「…黒凪」
『うん?』
「明日、任務は?」
『あるよ。早朝から。』
早朝から任務だなんて機嫌の一つでも悪くなりそうなものだがな。
そんな風に思う。
零は明日休みだったっけ。
その言葉に視線を彼女に戻して小さく頷いた。
『そ。じゃあ明日はゆっくりしなよ。』
「…明日は、」
『え?』
「明日は俺が食事を作るよ。」
そんな言葉に小さく笑って「うん」と黒凪が笑う。
伝わっただろうか。明日頑張るから、だから今日のこの態度は許してくれ、と暗に言っている事が。
きっと伝わっている。じゃないとこんなに長く恋人関係ではいられない筈だから。
…だから。
どうか。
(赤井黒凪はFBIのスパイだ)
(!)
(言葉が、詰まる。)
(息が止まる。)
(急いで戻った俺達の部屋には、もう。)
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