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中忍試験編
『…あれ?本当に今ので死んだのかな』
「……っ、(足が動かねェ…!)」
『どっちに飛んで行ったっけ…』
がさがさと草を分けて歩いて行く黒凪を見る。
居ないなぁ、とサスケの方を振り返った彼女の背後に巨大な蛇が音を立てずに現れた。
目を見開いたサスケが歯を食いしばり絞り出した様な声で黒凪の名を叫ぶ。
振り返った黒凪は蛇の尾に殴り飛ばされた。
「く、そ…!」
『……。』
静かに蛇を睨んだまま落下してくる黒凪の元へサスケが走り出す。
間一髪で受け止めたサスケを黒凪がチラリと見た。
大きく口を開いて迫る蛇をすぐさま黒凪が蹴り飛ばす。
木にぶつかって倒れた蛇の頭から先程蹴り飛ばした女が姿を現した。
蛇の体液で濡れた体は遠目に見ていても気持ちが悪い。
「全く…貴方良い線行ってるのに注意が散漫ねェ…」
「っ、大丈夫か?」
『うん。余裕。』
「自分の力に余程自信があるのかしら?」
ズルッと蛇から抜けた女が俊敏な動きで2人に迫る。
黒凪が徐に構えた時、2人と女の間にクナイが刺さった。
女は動きを止め顔を上げる。
サスケと黒凪も顔を上げ、其処に居るのがナルトだと理解すると微かに目を見開いた。
『…ナルトの事忘れてた』
「(ええ!?黒凪忘れてたの!?)」
「…まずい、ナルトが来た所で…!」
『…。そう思うならナルトと一緒に逃げてれば?私が倒しておくから』
ゆっくりと立ち上がった黒凪の首根っこを掴んで再び己の元に引き寄せるサスケ。
あ?と振り返った黒凪にサスケが首を横に振った。
眉を寄せる黒凪に声を潜めてサスケが言う。
「サクラと混ざり始めてるお前には危険だ」
『は?』
「考えてもみろ。今のお前はサクラと混ざり始めた事で治癒力も身体能力も大幅に落ちてる!」
絶好調のお前なら振り返った瞬間に蛇の一撃なんて防げた筈だ!
ピクリと黒凪が更に眉を寄せた。
此処は巻物を渡して見逃してもらうしか…!
サスケと黒凪の会話に目を細める女。
ナルトも近くに寄っていた為会話が耳に届いていた。
「…サスケ。ふざけんなってばよ」
「あぁ!?」
「何弱気になってんだ!あんな奴3人で倒せば良いだろ!」
「それが無理だって言ってんだ!次元が違いすぎる…!」
サスケを思い切り殴ったナルト。
黒凪の中でサクラが「キャ、」と思わず声を上げた。
勢いで木から落ちかけたサスケの襟元を反射的に掴んだ黒凪が木の上に持ち上げる。
頬を腫らしたサスケがナルトを睨んだ。
「巻物を渡した所でアイツが見逃してくれるのかよ!?」
「!」
「しっかりしろ!!」
「……っ、」
その通りよナルト君…。
不気味な声が掛けられた。
巻物なんて、殺して奪えば良いんだからねェ。
腕に彫ってある模様に血を付ける女。
黒凪が微かに眉を寄せた。
「口寄せの術。」
一瞬で巨大な蛇が出現しナルトを尾で殴り飛ばす。
何本もの木を折って吹き飛んで行くナルトを横目に蛇を見上げた黒凪。
サスケはナルトが飛んで行った方向を眉を寄せて見ていた。
ぐったりと倒れるナルト。
黒凪が足に力を籠めた時、溢れ出したチャクラにチラリと目を向ける。
「…んの…」
『!』
「(白と戦ってた時と同じチャクラ…!?)」
「!?」
顔を上げたナルトの瞳が赤く染まっている。
走り出したナルトは蛇の前に跳び上がると蛇を殴りつけた。
その威力に女が微かに目を見開きニヤリと笑う。
「成程ねェ…。面白いじゃない、この班。」
「あ、あれが…ナルト…?」
『……。』
でもちょっと邪魔だわ。
女が徐に術を発動し炎がナルトに向かう。
その攻撃をまともに受けたナルトは再び吹き飛ばされ落ちて行った。
次は、とサスケと黒凪を見る女に2人が構える。
蛇が物凄い勢いで2人に向かって行った。
サスケが黒凪を背に隠しその行動に黒凪が眉を寄せる。
『退いて。』
「駄目だ、お前がまた攻撃をくらったら…!」
今度こそ死んじまう、
サスケの言葉に黒凪が目を見開く。
動けない様子の2人にサクラが中で叫んだ。
黒凪の口から飛び出すサクラの声。
その声にナルトがぐっと起き上がった。
「お願い、逃げて2人共…!!」
『サスケ!』
「るせぇ!しゃべるなサクラ!」
「でも…!」
ほらほらどうするの?
女に目を向けると蛇はすぐ間近。
サスケがぐっと目を瞑った。
しかし衝撃はやって来ない。
目を開くと蛇を背で受け止めているナルトがそこには居た。
「怪我はねーかよ…」
「!!」
「…ビビり君。」
ナルトが顔を上げてニヤリと笑った。
その瞳は依然赤いまま。
するとナルトに舌を絡ませ持ち上げた女がじっとナルトを見た。
ふぅん、と目を細める女に黒凪が跳び上がる。
「…。邪魔よ貴方。」
『っ!』
蛇の巨大な尾が黒凪に向かった。
ぐりっと体を捻じって回避する黒凪。
その間にも女はナルトに向けて右手を向けると指先にチャクラを集め思い切りナルトの腹に突きつける。
その瞬間に叫んだナルトはぐったりと倒れ女が笑った。
「五行封印、完了」
『完了したなら返して。』
「っと。…良いわよぉ」
黒凪の拳を避けた女がナルトを放り投げる。
それをチラリと見た黒凪はナルトを追いかけ掴み取ると木の上に降ろした。
その背中に女の舌が伸びてくる。
すぐさまクナイを出したサスケが舌を止めた。
「……。やっとやる気になった?サスケ君。」
『!』
振り返った先に居るサスケの瞳は写輪眼。
随分と集中した様子のサスケは静かに女を睨んだ。
下がってろ。
静かに言ったサスケに目を向ける。
「…俺が、やる」
『……。』
サスケが構えた。
『……大丈夫かな。あれで』
「(…サスケ君…)」
物凄いスピードで女と戦うサスケ。
見ている分には互角の様にも取れる。
しかし明らかに女の方が手加減をしていた。
『…。助けに行くか』
「(え、)」
『え?』
聞き返して来たサクラに首を傾げる黒凪。
ううん、と言ったサクラを少し気にしつつ黒凪が走り出す。
徐々に押され始めたサスケに拳が入る寸前に入り込み黒凪が女を蹴り飛ばす。
その一撃で腕が折れた筈だがグキ、ゴキと嫌な音を立てて再生した。
「離れてろ!」
『!』
黒凪を押し退け女に向けて手裏剣を投げる。
その手裏剣にはワイヤーが仕掛けられており女は瞬く間に木に縛られた。
目を見開いた女に間髪入れずサスケが印を結びキッと睨み付ける。
「火遁・龍火の術!」
「ぐ、ぎゃあぁぁああ!!」
断末魔が響き渡り黒凪が少し眉を寄せる。
やがて炎が止まりサスケはどっと疲れた様に膝を着いた。
ぐったりとする女から目を逸らし黒凪もしゃがみ込む。
『うわ、汗ぐっしょり』
「る、せぇ…」
「――良いわねェ。写輪眼をその年でそれだけ使いこなせるなんて。」
聞こえた声にピクリと反応して振り返る黒凪。
女が印を結びサスケと黒凪の動きが止まる。
動かない体に目を見張った黒凪はぐっと力を籠めて動き出した。
ゆっくりではあるが動いた黒凪に女がまた笑う。
その目の周りは皮が剥がれ別人の目が覗いていた。
「やっぱり貴方が欲しいわ、サスケ君。」
『…っ、ぐ…』
「…ふふ。やっぱり兄弟ねェ。あのイタチよりも才能を秘めた目をしてる」
「!?…お前、一体…!」
私の名は大蛇丸。
いつの間にサスケから奪ったのか、その手には天の書。
徐々に巻物が燃やされていく。
その光景にサスケとサクラが目を見開いた。
「もしも貴方がまたアタシに会いたいと言うのなら、死に物狂いで登っておいで。」
「(巻物が…!)」
「く、そ」
「それと私の支配下にある音忍三人衆が貴方達を狙ってるわ。精々頑張りなさいね」
ニヤリと笑った大蛇丸が印を結びその首がぐにゃりと伸びる。
ひゅ、と息を吸った黒凪が身を乗り出した。
それを見た大蛇丸は目を見開き勢いを殺せず黒凪の首に噛みつく。
サスケも目を大きく見開いた。
「…。(ま、この子に残しておいても損は無いわね)」
『っ、』
「黒凪…!」
大蛇丸が離れぐったりと倒れ木から落ちて行く黒凪。
それを横目に笑った大蛇丸は改めてサスケの首にも噛みついた。
サクラがすぐさま黒凪と入れ替わり着地する。
すると続いてサスケも落下しサクラが受け止めた。
「…あら?貴方動けるのね。」
「っ!」
「(…呪印が無い…?)」
サクラを不思議気に見て目を細める大蛇丸。
まあ良いわ、と笑って大蛇丸がまた印を結んだ。
徐々に木に飲み込まれる様に姿を消す大蛇丸。
息を吐いたサクラは気を失っているサスケとナルトを見て眉を下げた。
黒凪の名を呼んでみるが彼女もサスケと同じ状況で反応を示さない。
サクラはぐっと眉を寄せて立ち上がった。
周りからは見えない木の影にナルトとサスケを運び込んだサクラ。
彼女は熱に魘されているサスケの額に水に濡らした布を置き側に座り込んだ。
日も落ち完全に周りは暗い。
サクラはいつの間にか眠ってしまっていた。
「……ん、」
朝日に目を開き目を擦るサクラ。
眠たい…そう呟いてふわ、と欠伸を漏らした。
「眠いなら眠れば良い。」
「!?」
声にばっと振り返る。
そして見えた姿にぎゅっと眉を寄せた。
第一試験の会場で黒凪を負傷させた音忍達。
すぐさま構えたクナイに音忍達がニヤリと笑った。
「あぁ、君と戦う気はないんだ。サスケ君を起こしてくれないかい?」
「!…何言ってるの?大蛇丸がサスケ君をこんな風にしたのよ!?」
音忍達が目を大きく見開いた。
やがて真ん中に立つ大柄の忍が目を細めて構える。
まあ良いか。それならとりあえず君を殺すとするよ。
呟く様に言った男に頷いた2人もクナイを構える。
「…っ、」
『(…サクラ、)』
「!(黒凪!?)」
『(逃げて。…私、今は…)』
苦しげな声に眉を寄せてクナイを構える。
サクラ、と再び呼ばれた名前に頭を横に振った。
駄目なの。サクラの言葉に目を見開く。
サスケ君とナルトを護らないと。
黒凪が眉を寄せて動かない体を動かした。
…でも。
『(間に合わない、)』
「――っ、」
『(サクラ…!)』
「木ノ葉・旋風!」
突風が吹き音忍達が吹き飛ばされた。
難なく着地した3人が現れた青年に目を向け眉を寄せる。
誰だ。その言葉に青年はビシッと背筋を伸ばした。
「ロック・リー。彼女を護りに来た者です」
「!…リー、さん」
「良かった。これ以上貴方が傷つく前に来る事が出来て」
リーの背中を見た黒凪はぱた、と体の力を抜いた。
首筋の呪印がドクンと波打つ。
久々に感じるその激痛に黒凪の頬を汗が伝った。
「…んじゃあやりますか。」
「黒凪さん、下がって」
「え?」
「え?」
顔を見合わせたサクラとリー。
サクラはすぐさま「あ。」と目を見開いた。
そうだ、リーさんには私の名前は黒凪だって…。
走り出した音忍の1人、ドス。
リーはすぐさまドスに向き直ると地面に拳をぶつけ地面を盛り上げた。
ドスは微かに目を見開きその地面を殴りつける。
「…君には何かがある。」
「あ?」
「以前一次試験の会場で黒凪さんが貴方と対峙した時、彼女はルーキー達から君を遠ざけた。」
まともにくらう事も、近くに寄らせる事も許されない様な能力だと黒凪さんが気付いた可能性が高い。
ドスが目を細めた。
まともに受けるつもりは毛頭ありませんよ。
ニヤリと笑ったリーがすぐさま両手の包帯を少し緩めた。
シュッと消えるリー。
次の瞬間にはドスの真後ろに居た。
「くらえ、…表蓮華!!」
「っ!?」
「(…ありゃまずい、受け身が取れねぇ!)」
「ザク!」
分かってる!そう返してザクが印を結び地面にチャクラを流し込んだ。
リーと共に頭から落下したドスを見てザクがふうと息を吐く。
リーは妙な感触に眉を寄せつつサクラの前に戻った。
「危ねえ危ねえ。術が間に合わなかったらヤバかったなァドス。」
「ええ。恐ろしい術だ、土のスポンジの上でもかなり効きましたよ」
「く、そ…(まだ反動で体が…!)」
「次は僕の番だ」
動けない様子のリーに向かって拳を振り降ろすドス。
間一髪で避けたリーだったが耳に届いた微かな音に膝を着いた。
歪む視界と反響する声にリーの顔色がどっと悪くなる。
サクラが不安気に「リーさん…?」と名を呼んだ。
「確かに君の技は驚異的に早い。でも僕等はそれを越える音速だから」
「ぐ、」
「終わりだよ。」
ドスが目を細め拳を振り上げた。
その拳を見るリー。
歪んだ視界の中で眉を寄せるリーにサクラの目に涙が浮かんだ。
「(…私が、)」
『(…サクラ?)』
「私がやらなきゃ…!」
『(サクラ!?駄目、危険だって!)』
黒凪の言葉を振り切って走り出すサクラ。
サクラはドスの腕をクナイで弾きリーの前に立って手裏剣を投げた。
しかしザクの衝撃波で手裏剣は全て跳ね返される。
きゃ、と避けるサクラ。
すると瞬く間に音忍の紅一点、キンがサクラの髪を掴んだ。
「ふーん。私より良いツヤしてんじゃない」
「っ!」
「髪に気ィ使ってる暇あったら修行しろ、ポンコツ女。」
髪を掴まれぐいと横に振り回される。
その様子に黒凪の額に青筋が浮かぶが体が思う様に動かない。
サクラ…!と黒凪の悲痛な声がサクラの頭の中で呼応した。
あぁ、心配してる。…いつもそうだ。
「ザク、この女の目の前でサスケを殺したら?」
「あー。良いなソレ」
「くく、相変わらず趣味悪いねキン…」
いつも黒凪は私の為に心配してくれて。
今も傷ついて、疲れてる筈なのに。
黒凪だけは私をずっと護ってくれた。
ずっと、嫌な事だって引き受けてくれた。
怖い事だって、辛い事だって。全部。
サクラの両目から涙が零れ落ちる。
黒凪が息を飲んだ。
『(…サクラ)』
「(私、今回も護られてばっかり…)」
『(そんな事、)』
「(悔しい…!)」
サクラの言葉に黒凪が動きを止める。
…悔しい?唖然と聞き返した黒凪。
いつも思ってた。今度こそは私が大切な人を護るんだって。
黒凪が大きく目を見開く。
ピシ
微かに鳴った音に黒凪が周りを見渡した。
サクラがクナイを取り出す。
フンとキンが鼻で笑った。
「無駄無駄。私にそんなの効かないから」
「…貴方にじゃないわ」
「……な、」
サクラの桃色の髪が舞った。
その様子に黒凪がまた息を飲む。
クナイで切り裂かれた髪を掴んでいたキンは引き寄せていた勢いのままにサクラから離れた。
ピシッ
…音が鳴る。
一人前の忍になったつもりでいた。
サスケ君の事が好きだって言って、ナルトの事を馬鹿にして。
私、あの2人の隣に立っていた事一度でもあった?
…ピシ
カラン、と額当てが地面に落ちる。
ゆっくりと立ち上がるサクラに音忍達は目を見張ったまま。
風が吹いて桃色の髪が揺れた。
「…今度は私が」
『っ、』
「皆を、護るから。」
音忍を睨んだサクラの右目から、金が退いた。
走り出したサクラがザクに向かって行く。
変わり身の印を結ぶサクラに気付いたザクが衝撃波でサクラを吹き飛ばした。
すぐさま変わり身になったサクラに目を細め右側を振り返る。
また印を結ぶサクラに目を細め再び衝撃波で変わり身を弾いた。
「…また変わり身かよ。バカの一つ覚えだな」
「……」
印を結ぶサクラに次はクナイを投げて「次は何処だァ?」と周りを見渡した。
しかし上空から落ちる血にザクの目が真上に戻る。
そこには腕にクナイを受けたサクラが居た。
「っ!?」
「変わり身じゃないわよ…!」
「くそっ」
クナイをザクの胸元に刺しサクラが腕に噛みついた。
チッと舌を打ったザクがサクラの頭を殴る。
キンがサクラを引きはがしザクが衝撃波でサクラを吹き飛ばした。
黒凪さん、と掠れた声で言うリー。
ザクによる衝撃とリーの声に黒凪が顔を上げる。
『(…護らないと)』
でも、どうやって――?
地面に落下したサクラは突然現れた何者かに受け止められた。
痛みの無い背中にサクラが目を見開いて振り返る。
そこに立っていたのはイノで、その周りにはシカマルとチョウジも居て。
…ピシッ
「イノ、アンタどうして…」
「…ずっと見てたの」
「!」
「サクラのくせに、よくやったじゃない」
笑い交じりに言ったイノにサクラの瞳に涙が溢れた。
ったく、めんどくせー事してくれたぜ。
呆れた様にイノを見て言ったシカマル。
そんなシカマルを見てもう一度イノを見た。
「…私の為に…?」
「勘違いしないでよね!…偶然通りかかったら゙サクラ゙だったから気になっただけよ!」
「…ありがと」
フンッと目を逸らしたイノ。
音忍達を睨んだイノ達第十班が構える。
行くわよ!とイノが煽るとシカマルとチョウジも「おう!」と返した。
「フォーメーション、イノ!」
「シカ!」
「チョウ!」
まずチョウジが印を結び巨大化、そして木ノ葉流体術である肉弾戦車でザクの元へ転がっていく。
衝撃波で吹き飛ばす事が出来ない様子のザクを見かねたドスが其方に向かうがシカマルがすぐさま影真似の術で動きを止めた。
最後にイノがキンに向けて心転身の術を発動させキンの身体を乗っ取る。
ドスとザクの元へ向かおうとしていたキンが突然動きを止めた事に2人が眉を寄せた。
「キン、どうした!?」
「……。心転身の術、完了♪」
「「!?」」
キンの中に入ったイノがクナイを取り出し自身の首元に刃を宛がった。
少しでも動けばこの女の首を斬る。
そんなイノの言葉にザクとドスが顔を見合わせた。
「さあ、さっさと巻物を置いて何処かへ行きなさい!」
「…。ドス」
「あいよ。」
ドスがキンに手の平を向け衝撃波を放つ。
吹き飛ばされたキンが木にぶつかりイノの口元から血が流れた。
ニヤリと笑った2人にシカマルとチョウジが目を向ける。
「僕等の目的は巻物じゃない。ましてやこの試験をルール通りに突破する気も更々無い」
「じゃあアンタ等一体何の為に…」
「サスケ君を殺す事。それだけだよ」
「な、…ぐ、」
シカマルの影真似の術が解けドスが自由に体を動かした。
5分が限界ってトコか。そんなドスの言葉にシカマルが眉を寄せる。
ザクが静かにキンに手の平を向けた。
「それにその女の術、キンを殺りゃあ一緒に死ぬのか?」
「…仲間を殺せるのか、テメェ等」
「必要ならな。」
「……クソ」
こりゃ駄目だ。
シカマルがため息を吐いて言った。
その言葉にドスとザクがニヤリと笑う。
「惜しかったなァ。後少しだったのによ」
「ま、所詮はアカデミーから出てきたばかりの新米って事だね」
「…だったら俺達が相手になろう」
聞こえた声にドスとザクが顔を上げる。
木の上に立っているのはリーと同じ班であるネジとテンテン。
テンテンがリーを見て眉を下げた。
それを横目に音忍を睨んだネジの目がギンッと変化する。
その眼力に全員が一斉に息を飲んだ。
「随分好き勝手やってくれた様だな。…音忍風情が」
「あんだと?」
「…やるぞ、テンテン」
そう言って足を踏み出したネジだったが突然動きをピタリと止めた。
どうしたの?と振り返るテンテン。
ネジの視線は下の木の影へ。
「どうした、やるんだろう?」
「降りて来いよ。」
「…いや、どうやらその必要はないらしい」
「あ?」
ピッとネジが真下を指差した。
其方に目を向けるドスとザク。
ゆらりと立ち上がったサスケとそのチャクラに2人が同時に目を大きく見開いた。
サクラもその巨大なチャクラに怯え思わず腕を抱え込む。
「…あれが、サスケ君…?」
『(明らかに別人じゃないの、あれ)』
「(う、うん…)」
「……黒凪」
サスケの言葉にピクッとサクラが目を見開いた。
誰だ。低いサスケの声が、目が。
サクラに向けられた。
「誰がお前をそこまで追い詰めた?」
「さ、サスケく…」
「黒凪」
サクラが言葉を止めた。
サスケの体中に炎の様な模様が浮かび上がっている。
それを呆然と見つつサクラが目を伏せた。
「…どうして…?」
「…あ?」
「どうして黒凪ばっかり…!」
ピシッ
「…黒凪…?」
「私は!」
ピシ、
「サクラよ、サスケ君…!」
涙ながらに言ったサクラ。
微かに目を見開いたサスケ。
そこでやっと黒凪は自分の手の平を見下した。
そして、やっと事態を理解する。
壊れてるのは、私…?
(手の平が)
(足が、…頬が。)
(崩れてゆく)
.