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 中忍試験


「…ココが試験会場…」

「何やってんのよナルト。入るわよ」

「わ、分かってるってば!」



 サスケが扉を開き3人で中に入り込む。
 すると他国の忍達が一斉に振り返り第七班を睨み付けた。
 その視線の鋭さにぎゅっと両手を握りしめるサクラ。
 黒凪は退屈そうに欠伸を漏らした。



「あ、やっと来たのねサスケ君~!」

「!お、おい」

「あー!?サスケ君から離れなさいよイノ!」

「あーらサクラじゃない。こんな場所に゙アンダが来るなんてねぇ」



 別の意味が含まれたイノの言葉。
 その言葉を理解したナルトとサスケは微かに目を見開いた。
 ニヤニヤとサクラを見たイノはその右目を見ると動きを止めずいと顔を近付ける。



「…何?どうなってんのその右目。」

「どうでも良いでしょ!」

「……アンタ、雰囲気ちょっと変わったわね」

「はぁ?」



 ったくうるせーな。
 気だるげな声に全員が顔を其方に向ける。
 そこにはイノと同じ班であるシカマルとチョウジが立っていた。
 イノは第七班と火影様以外に私の事を知っている唯一の人物である。



「おうおう、俺等抜きで盛り上がるなよ。」

「こ、こんにちは…」

「あん?お前等もこのめんどくせー試験を受けに来てんのか。…つか今年のルーキー全員かよ。」



 そんな会話を総勢9名で話していると1人の男がつかつかと近付いてきた。
 もう少し静かにした方が良いよ。
 優しい声色でそう言った男に目を向ける。
 その背後からは鋭い視線が此方を射抜いていた。



「試験前で皆ピリピリしてるからね。気を付けた方が良い」

「あの、貴方は…?」

「ああごめん。僕は薬師カブト。よろしく。」

「…随分落ち着いてられるんだな。中忍試験の経験者か?」



 まあね。これで7回目になる。
 眉を少し下げて言ったカブトに「は?」と皆目を見開いた。
 シカマルは「そんなに厳しいのかよ…」と眉を寄せる。
 そんなシカマルを見たカブトは笑って懐からカードを取り出した。



「君達じゃちょっと荷が重いかもね。…それじゃあ栄えある初挑戦の君達に少しでも有利になる様、情報を分けてあげるよ」

「?…そのカードに情報があるんだってば?」

「あぁ。気になる奴が居るなら言ってみると良い。大体出て来るから」

「…砂隠れの我愛羅。それと木の葉隠れのロック・リー」



 はいよ。軽く言ってカードを切るカブト。
 数秒で2枚のカードが取り出されサスケに向けられた。
 重ねられた上のカードにロック・リーの情報が映される。
 年齢はサスケ達の1つ上。体術の能力は非常に高いがやはり他の能力は全くと言って良い程良くない。



「次は砂隠れの我愛羅……。…彼は他国の新人だからかなり情報が少ないな」

「!…下忍なのにBランクの任務を…」

「あぁ。しかも彼はBランクの任務を含め全ての任務を無傷で帰って来たそうだ」

「無傷ぅ!?」



 キバが驚いた様に声を上げた。
 彼の頭の上に居る赤丸も耳を下げる。
 そんなルーキー達を見てカブトがフッと笑った。



「とは言っても凄いのはこの2人だけじゃない。此処に集まっているのは木の葉、砂、雨、草、滝、音の6つの里から集まった猛者達だ。」

「…音?音隠れなんて聞いた事無いわね…」

「音隠れは最近出来た小国の里だからね。僕のカードにも情報はほぼ無いと言っても過言じゃない。」



 受験者達の中に紛れていた音隠れの忍3人が目を細めた。
 その3人の目には音隠れなんて知らないと言ったイノが映っている。
 結構色んな里から来てるんだ…。
 サクラの呟きにカブトが小さく頷いた。



「ま、その沢山の里から集まってこれだけなんだ。選び抜かれた精鋭って事だよ。」

「…だりぃな…。本格的にめんどくさくなってきた」

「な、何言ってんのよシカマル…」

「私も凄く不安になってきました…」



 お前まで何言ってんだよ、とキバがヒナタを見下した。
 しかしナルトはそんなルーキーなど気にする事無く受験者達に向かって指をビシッと指した。
 あ?と眉を寄せる受験者達。



「よーく聞けェ!俺ってばうずまきナルトォ!!お前等には負けねーぞ!!」

『(うわ。…あれ、ナルトの声で起きるの2回目?)』

「ちょっとナルト!」

「キャー!挑発してどうすんのよこの馬鹿!」



 サクラとイノがナルトを睨み付け縮こまるナルト。
 ナルトを見てサスケは小さく微笑んだ。
 そんな中受験者達の中に紛れている音隠れの忍は顔を見合わせニヤリと笑った。



「ちょっと遊んでやる?」

「良いね。あの子にも僕達音隠れの忍の事、ちょっとぐらい知っといてもらわないと。」

「…行くか」



 シュッと走り出した3人。
 カブトが微かに眉を寄せた。
 受験者達の間を走る音忍達。
 黒凪が眠たげに顔を上げる。



『(サクラ。何か来るよ)』

「え?」

「何よサクラ。あの子何か言ってんの?」

「それが…」



 私達の所に向かってる。突っ込んでくる気だ。
 ええ!?と目を見開いてナルトを見る。
 先程煩くしたナルトに攻撃でもするつもりなのだろうか。
 今の内に怪我をするわけにはいかない。
 サクラが黒凪、と呟いた。



『(…ま、サクラに被害が行ったら嫌だしね)』

「…危ない!!」

「え、私!?」



 イノの声にサクラが振り返る。
 彼女はサクラの真後ろ。
 黒凪とすぐさま入れ替わりすぐ間近にまで迫った男を目に映した。
 右腕の奇妙な武器。そこから発される微かな音に黒凪が目を見開く。



『…ああもう。嫌な役回りだな…。(このまま逃げるか)』

「(駄目!せめてサスケ君とナルトは護って…!)」

『チッ』

「!?」



 男の懐に飛び込み部屋の隅まで移動する。
 一気に大きくなった音に黒凪が眉を寄せた。
 眉を寄せた黒凪を見てニヤリと笑う男。
 しかし何も起きない彼女の様子に目を見開いた。



「…何故だ?何故効かない」

『人間の鼓膜なんかと一緒にしないで欲しいね…っ』

「ドス、どうした!?」



 音の忍達が眉を寄せ黒凪に飛び掛かった時、ボンッと部屋の前で煙が上がった。
 静かにしろ!!
 次に聞こえた怒号にピクリと反応する。
 黒凪はよく聞こえなかったその声に「あ?」と眉を寄せた。



「待たせたな。俺は中忍選抜試験、第一の試験官イビキだ」

「…チッ。此処は手を引いてあげますよ」

『……っ』



 がく、と膝を着く黒凪にナルトとサスケが駆け寄った。
 黒凪は耳を叩き頭を少し降る。
 大丈夫か?そんなサスケの声もあまり耳に届いていない。



『(サクラ、交代)』

「あ、」



 サクラに入れ替わり顔を上げる。
 少し眉を寄せているサクラにナルトが首を傾げた。
 耳をやられたみたい。何も聞こえないって…。
 その言葉にサスケとナルトが音の忍3人を睨んだ。
 音の忍達はその様子を見てニヤリと笑う。



黒凪黒凪ってば…!」

「まだ駄目なのか?」

「うん…。まだ耳が聞こえないのかな」

「…。」



 おかしい。白の話では夜兎は人間ではありえない身体能力を持っている筈だ。
 回復面でも勿論ずば抜けたものを持っている筈。
 それは波の国の任務の時の黒凪の様子から判断出来る。



「(毒を抜く際に手の平をクナイで刺したあの後、アイツの手は驚異的な速度で治っていた筈だ)」

「もう第一試験も終わったのに…」

「ホントだってばよ。黒凪ってば大丈夫か?」

「それより第二試験が心配…。サバイバルなんて私1人じゃとても無理だし…。」



 ぼやくサクラの右目に目を向ける。
 ゙混ざってきてるのかもな゙
 カカシの言葉が過った。
 混ざってきている。…それは身体能力も、か?
 だとしたら危険だ。
 黒凪にとっても、サクラにとっても。
 これ以上この2人が混ざってしまったら―――。



「これより中忍選抜試験、第二試験を開始する!」

「!…サスケ君、始まるって」

「あぁ…」

「行くってば!」



 分かってる。ナルトにそう返して第二会場、別名死の森へ足を踏み入れた。
 中は外から見た通りの鬱蒼とした森。
 その森へ足を踏み入れて数分後、早速悲鳴が響き渡った。
 言い知れぬ不安にサクラが眉を寄せる。



「な、なんだか不安になって来た…。(黒凪、早く反応して…っ)」

「…。大丈夫だ。もしもの時はアイツが必ず目を覚ます」

「え、」

「そういう奴だって白が言ってたからな」



 そ、そうよね。
 サクラが微かに笑顔を見せた。
 その様子を見てうんうんと頷くナルト。
 すると彼は徐にサクラから少し距離を取った。



「ちょっと小便…」

「はぁ!?もっと離れてやってよ!私が見えない所で!!」

「わ、分かったってば」



 いそいそと草むらに消えて行くナルト。
 そんなナルトを待つ事また数分。
 すっきりしたってばよ~。と笑顔で出てきたナルトにサスケが眉を寄せた。
 次の瞬間に蹴り飛ばされるナルト。
 サクラは大きく目を見開きサスケを見た。



「さ、サスケ君!?」

「本物は何処だ。ニセモノ野郎」

「ニセモノ!?」

「はぁ!?何を…!」



 足のホルスターが逆なんだよ。
 サスケの言葉にナルトが目を見開く。
 下手な変化なんてしやがって。
 ぐっと眉を寄せたナルトが変化を解いた。
 現れた男の額には雨隠れの額当て。



「アンラッキー。バレたら仕方がねェ。巻物はどっちが持ってる?」

「…っ、」

「…ま、言わねェよなァ。実力行使って事で!」

『巻物って何?』



 サクラが目を見開いて口を押えた。
 黒凪の言葉がそのまま外に出ている。
 左目が金色に染まりサクラの目が細まった。



『やーっと治った。ちゃんと説明してよ?』

「ぐ…っ!?」

『はーい殺すよー』



 ゴキッと首を折りぽいと捨てた。
 無様に倒れた男の持ち物を確認するサスケ。
 すると木陰からナルトの声がする。
 黒凪がやれやれと其方に向かった。



『ようナルト。久々に会ったのに芋虫状態?』

「うっせーってばよ…。てか耳は…」

『もう大丈夫。大分時間掛かったけどね』

「…巻物はない。ハズレだ」



 ため息を吐いてサスケが言った。
 その言葉を聞いた黒凪がそうそう、と口を開く。
 巻物って何?てかこれが第一試験?
 そんな質問をした黒凪にサスケがまたため息を吐いた。
 少し歩いて3人で少し離れた木の上に座り向かい合う。



「…黒凪。サクラと交代しろ。その方が良い」

『あ、そだね』



 青に染まった左目に目を細めサスケが口を開いた。
 まずこれは第二試験だ。
 サスケの言葉に黒凪が「マジか」と驚いた様に口にする。
 サクラを経由して放たれた言葉にサスケが少し眉を寄せた。



『あれ?おかしいな。今まで゙中゙で話してもサクラの口から出る事は無かったのに。』

「変な感じ…、私は話してないのに口が勝手に、」

『凄いね。』

「うん…。」



 交互に1人で話すサクラにサスケがため息を吐く。
 とりあえず中に居る間は無暗に話すな。
 会話をする際は構わないが、常にサクラと同じ口調で話せ。
 いつ誰が何処で見てるか分からないからな。
 サスケの言葉に黒凪が小さく頷いた。



「まずこの第二試験はサバイバルゲームだ。第一試験から残ったのは26チーム」

『結構残ったね』

「あぁ。この試験では各チームに2種類の巻物の内1種類だけが渡される。俺達は持っていない方の巻物を他チームから奪う。」



 俺達が持っている巻物は天の書と地の書の内の天の書。
 どのチームが何の巻物を持っているかは不明。
 手当たり次第に奪っていく。2つが揃い指定の場所に行けばクリアだ。
 それは殺しもありなの?そんな黒凪の言葉にサスケが頷いた。



「その為の同意書にもサインした。」

『…死んでも構いません、みたいな?』

「あぁ。」

『サクラにそんな危険なもの書かせるなんてサイテー。』



 おい。お前はサクラだろ。
 サスケの言葉にてへ、と黒凪が笑った。
 照れた様に頬を掻きながらサクラが口を開く。



「時間制限もあるのよね?サスケ君。」

「あぁ。5日間の120時間以内だ。お前に頼り切るつもりはないが、もしもの時は頼みたい。」

『…ふーん。私ば自分゙以外は護る気無いケドね』

「……。まあ良い。とりあえず次またさっきの様な事が起きない様に合言葉を決めておく。」



 合言葉?ナルトがそう聞き返した。
 小さく頷いたサスケが一度しか言わないぞ、と念を押して口を開く。
 まず゙忍歌「忍機」゙と問う。
 その答えはこうだ。
 ゙大勢の敵の騒ぎは忍びよし。静かな方に隠れ家も無し。忍には時を知る事こそ大事なれ、敵の疲れと油断するとき。゙



「分かったわ。」

『(サクラ頼むね)』

「(うん)」

「…もっかい…」



 どうやら口に出さなければ外に洩れる事は無いらしい。
 黒凪は小さくため息を吐いた。
 ナルトはぐぐぐっと眉を寄せ「おーぜいの敵、うーんと…」と致命的なレベルで悩んでいる。
 すると突然突風が3人を遅いバラバラになってしまった。



「(ど、どうしよう黒凪…!)」

『(…。あそこにサスケが居る。とりあえずサスケに合言葉を確認しよう)』

「(私達は?)」

『(サスケが本物だったら会話をすれば良い。そうすりゃ確実でしょ)』



 私はサクラの中にしか居ないんだから。
 黒凪の言葉に頷いてサスケに近付いた。
 警戒する様にクナイを此方に向けるサスケ。
 サスケに合言葉を要求すると彼はすらすらと言い当てた。



『…おけ。本物だね』

「!…そっちもな。」

「おーい!大丈夫だってばー?」

「待て。…合言葉を言えナルト」



 あ、そうだったそうだった。
 笑ってナルトが口を開く。
 すらすらと出て来る合言葉に黒凪が「ん?」と眉を寄せた。
 一方サスケはニヤリと笑いナルトにクナイを投げつける。
 ナルトはギャー!と必死の形相でクナイを避けた。



「な、ななな何するんだってばよぉ!」

「チッ。今度は俺の攻撃を避ける程の奴か…!」

『さーて。やりますかね』



 チラリと見たサクラの目は両目とも金色。
 こんな状況で出し惜しみするわけにもいかない。
 サスケは何も言わずクナイを構えた。



「ちょ、ちょっと待って!ナルトはちゃんと合言葉を言えたじゃない!」

「?」



 ナルトがサクラを見てピクリと片眉を上げた。
 黒凪は独りでに動く口に少し目を見開いている。
 サスケは眉を寄せながら口を開いた。



「考えてもみろ。ナルトがあの合言葉を言える筈がない。」

『そうそう。おバカなあの子が言えたら凄いよねえ』

「…フン。そう言う事ね」



 ナルトがニヤリと笑いボンッと変化を解いた。
 現れたのは傘をかぶった女。口元から覗いている舌は随分と長い。
 冷たい目がサスケを捉え細まった。



「さて。じゃあやりましょうか…巻物の奪い合い。」



 ギロリと冷たい目がサスケと黒凪を貫いた。
 サスケが思わず固まる中、黒凪が徐に走り出す。
 女はニヤリと笑って黒凪の蹴りを片手で受け止める。
 しかしその予想以上に重い一撃に吹き飛んだ。



『人間なんだからもうちょっと気を付けなよね。』

「…っ、」

『おーいサスケ。いつまで固まってんの』



 振り返って笑ったサクラの表情は血に飢えた獣そのものだった。
 その表情にもゾクリとさせられる。
 あぁ。これが、夜兎か。



 結局人間って脆いよねえ


 (混ざっていく。)
 (桃色と黒が、混ざっていく。)
 (おい、お前、)
 (俺とナルトが見えてるか?)


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