本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
波の国編
周りを徐に見渡した。
またポト、と音が耳に響く。
あぁ。寒い。
歪む視界に眉を寄せつつ足元に目を落とした。
『―――、』
花が、…白い、花が。
一輪だけ―――
その瞬間に、意識が遠退いだ。
「…さて、と。とりあえず血を吐かせて…」
「いい。自分でやる…」
「あぁ、もう起きちゃったんですか?」
ゆっくりと起き上り口布を降ろす再不斬。
それを見て面を取った青年はにっこりと笑った。
おはようございます。
笑顔でそう言った青年を横目に首に刺さった針を抜いた。
「ったく…手荒にしやがって」
「1番危険が無いやり方を取ったんですよ?再不斬さん、首以外は筋肉が固すぎて針が通り難いので」
「…フン」
再不斬は胡坐を掻き立ち上がろうと腕に力を籠める。
しかし起き上れない彼の様子にふふふと笑った。
1週間は動けませんよ、悪びれる様子も無く言った青年に再不斬が舌を打つ。
「にしても、ちと遅かったんじゃねぇか?」
「すみません。花を供えに霧隠れに戻っていたもので」
「また戻ってたのか…。お前なら捕まる事もないだろうがな」
「はい。ただ僕ももう少し早く戻っていれば良かったなと。…次は大丈夫ですよね?」
当たり前だ。
…次なら写輪眼を見切れる。
無表情に言った再不斬に青年が微笑んだ。
「――…何よ、案外簡単じゃない!」
「サクラちゃん!?」
「ほー。今1番チャクラコントロールが上手いのはサクラみたいだな。…ちなみに黒凪はまだ戻らないのか?」
「それが…」
ピチョン、と音が頭に響く。
直感でサクラば戻ってきだと感じた。
目を閉じたサクラに片眉を上げるカカシ。
サスケとナルトもそんなサクラに気付き口を閉じた。
「(黒凪、)」
『(…はーい。)』
目を開けば一面の花畑が見えた。
足元に目を移す。
自分を映す湖が広がっていた。
その湖に向かって名を呼べば水の中に黒凪が現れ2人の目が合う。
黒凪は金色の目を細めて微笑んだ。
『おはようサクラ』
「おはよう…何処か行ってたの?」
『なんで?』
「さっきまで水の中にいなかったから…」
ちょっと散歩してた。
そう言って目を逸らした黒凪にため息を吐く。
黒凪が外を覗き込む様に水の中から鼻まで外に出した。
サクラが目を開きその瞳が金色に染まる。
「お、黒凪か」
『(サクラ、交代して良い?)』
「(いいよ。今木登りやってるの。)」
木登り?そう問いかけながら水から這い出る。
交代する様にサクラは水の中に沈んで行った。
うん!と頷いたサクラを最後に表に出れば、確かに納得。
今゙サクラ゙は木の上に登っていた。
『…木登りって何?』
「あぁ、チャクラコントロールの修行だ。」
『チャクラコントロール?…じゃあ私には関係ないかな。』
「まあ待て。やってみたらどうだ?サクラは出来た事だし。」
ふーん、そう言って地面に降り立った黒凪。
ナルトが二ヒヒと笑い「こうするんだってば!」と走り出す。
木に足を着けすぐさま落ちた。
頭に?を浮かべているとサスケが何も言わず木に足のみで登って行く。
途中で木に弾かれ地面に降りたが。
『…成程』
「え、ちょ…」
一気に走り出した黒凪は勢いのままに木を登って行く。
その様子に頭を抱えるカカシ。
よっこいせと木の頂点に降り立った黒凪の側にゆっくりとカカシが歩いて行った。
「違う違う。足にチャクラを集めて木に吸着させる練習。」
『そうなの?勢いで登るものかなって思った』
地面に降り立ち足を覗き込む黒凪。
チャクラを集める…と1人呟き首を傾げた。
するとそれを見ていたナルトが「あー!!」と黒凪を指差して叫ぶ。
ん?と全員がナルトを見た。
「黒凪!お前ってば水の上歩いてたよな!?」
『へ?…そう?』
「…そう言えば…」
思い返せば、…確かに。
何も考えない方が良いのだろうか。
ふー…と息を吐き歩いて行く。
次の瞬間に落ちた黒凪に全員がぽかーんと目を見開いた。
寝転がったまま黒凪は空を見上げる。
『…怠い。無理。』
「いやいやいや、頑張って下さいよ黒凪サン」
『チャクラなんて使った事無いし…』
「!…ま、頑張ってみなよ。もっと強くなれるから。」
笑って言って頭を撫でたカカシ。
黒凪は起き上がるとサスケの元に向かった。
コツを教えて。
無表情に言った黒凪にサスケが思わず固まる。
「……。足にチャクラを集めろ」
『どうやって。』
「…集中するんだよ。」
『………。』
足元に目を移し眉を寄せる。
足から溢れる力に足元の草が微かに揺れた。
それを見たサスケが徐に木を指差す。
黒凪がゆっくりと木に足を付けた。
『お、くっついた。』
「そのまま進め」
『…んー…。』
眉を寄せながらゆっくりゆっくり登って行く黒凪。
カカシは微かに目を見開いた。
そしてやばい、と悟る。
『あ゙。』
「!?」
足元のチャクラが一気に暴発する様に溢れ木が耐え切れず黒凪の足元で折れた。
倒れる木を蹴り飛ばした黒凪。
吹き飛ぶ木にナルトとカカシが目をひん剥いた。
『…ごめん。』
「半端ないってば…」
『……チャクラコントロール覚えなきゃ駄目?』
「黒凪の場合は是非とも覚えてもらいたいね。」
にっこりと笑って言ったカカシに「デスヨネー」と目を逸らした。
黒凪は頭を掻いて木を見上げため息を吐く。
サクラは水の上で困った様に眉を寄せる黒凪に小さく笑った。
「タズナさん、何処かへ行くの?」
「!……なんじゃ、居たのか…」
「今日は朝からずーっといました。先生が私は修行はいいから護衛に着けって。」
「ほー。…ま、今から行くのは夕飯の買い出しじゃ」
ついて来い。
そう言って歩き出したタズナについて行くサクラ。
黒凪は町中に出ているサクラの目と同調し外の景色を見る。
随分と荒れ果て、孤児や仕事を失った大人達が放浪していた。
ズキ、と痛んだ頭に黒凪が眉を寄せサクラも思わず頭を押さえる。
「どうした?」
「っ、いえ…」
『(…ごめんサクラ、私だ)』
「(良いよ、…大丈夫?)」
外の景色を見ながら小さく頷く黒凪。
サクラも寄せていた眉を戻しタズナと共に八百屋に立ち寄った。
店に入ると店主が疲れた様子で「いらっしゃい」と呟く様に言う。
野菜が並べられている筈の棚を見渡すもお世辞にも種類が豊富だとは言えない。
寧ろ無いに等しいその様子にサクラが眉を寄せた。
「タズナさん…この里どうなって…」
「おねーさん」
「!」
服を引かれ振り返る。
布切れで作った服を身に纏い、身体は泥や土で汚れている。
髪も何日風呂に入っていないのか想像が付いてしまう程に汚くなっていた。
そんな少女が笑顔で両手を差し出して来る。
「なにかちょうだい」
「あ、…うん」
サクラは鞄から飴を取り出し少女に手渡した。
少女は数個の飴に目を輝かせサクラにそれはそれは嬉しげな笑顔を見せる。
歪んだ視界に黒凪が目を見開いた。
…泣いている。
「っ、…」
『(…サクラ…、っ、)』
《…黒凪さん、寒くない?》
『(痛、)』
涙を拭ってサクラが「黒凪?」と呟いた。
頭に響く声。
…今日もお花を摘んで来たよ。
子供の声がする。
《…ごめんなさい、僕の所為で》
『…っ』
《…だから出て来てください…》
「どうした?」
ぽんと肩に手を置かれサクラがビクッと肩を跳ねさせる。
振り返ったサクラの目に浮かぶ涙にタズナが目を微かに見開いた。
眉を下げたタズナに涙を拭い付いて行くサクラ。
徐にタズナが口を開いた。
「ガトーが来てからこの有様じゃ。…だからこそ今、儂が作っとる橋が必要なんじゃよ。」
「!」
「あの橋さえ出来れば、ガトーに立ち向かえる。…あの頃の里に戻る筈なんじゃ…!」
「…タズナさん…」
サクラ。
黒凪の声が聞こえる。
歩きつつ其方に意識を傾けたサクラは微かに目を見開いた。
…また黒凪の気配が遠のいで行く様な気がする。
どうしたの?と返事を返したが黒凪は何も返してこなかった。
「――黒凪さん」
『……』
微かに目を開いて、目の前の人影に焦点を定めた。
しかしやはり視界は歪んでいる。
目が合った様な気がした。
途端にその人影が黒凪に近付き手形が見える。
…あぁそうか。氷の中だもんね、此処。
「黒凪さん!?…久々に反応してくれた…」
『(…声、全然出ないし)』
「最近全然目も合わせてくれませんでしたね、…もしかして眠っていたんですか?」
微かに開かれた目が細まる。
人影は安心した様に息を吐くと覗き込む様に屈んだ。
黒凪の目にはやはりはっきりとは見えなくて、微かに眉を寄せる。
「いつか必ず其処から出してみせます。…だから待ってて下さい」
『……。』
「またあの人も連れてきますね。覚えてますか?依然氷を力付くで壊そうとした人です。黒凪さん、不機嫌そうにしてましたよね」
微かな目の動きでしか反応しない黒凪に根気よく話しかける人影。
黒凪は覚えのないその人影に目を伏せた。
…誰だろう、この人は。
――…あれから、
『(一体何年……)』
「ああすみません。眠そうですね」
『…、』
「また来ます―――…」
最後に聞こえたのばおやすみなさい゙だった。
次の瞬間にはまた意識が暗い闇に沈んでいて。
…ふと、私は一体何をしているんだろうと―――…。
目を開くと真っ暗な室内が見えた。
あぁ、夜か。
誰に言うでもなく呟いて起き上がる。
そうして外に出て木に近付いた。
『……。』
足にチャクラを集めて歩き出す。
寝起きの為か頭がぼーっとしていた。
至って当たり前の様に木を垂直に歩いて行く。
頂点まで登って一言、黒凪が言った。
『何だ、これだけの事か。』
「…真夜中に自主練か?」
『……あれ?起きたんだ…』
「気配がしたんでな。」
私の所為か。ごめんなさい。
ぼーっとした様子で言った黒凪の隣に座るカカシ。
黒凪は夜風に微かに眉を寄せ腕を抱えた。
『…寒い。』
「毛布あげるよ。」
『お、用意良いね』
「昼間から寒い寒いって言ってたからね」
カカシが笑って言うと黒凪は「そっかぁ」と、そうとだけ言った。
毛布に包まり海を見る黒凪の横顔を見る。
サクラの顔なのに、やはりその表情は全くの別物だった。
「…来るとしたら明後日ぐらいだろうなぁ」
『誰が来るの?』
「再不斬。」
『…死んだんじゃないの?』
そう訊き返した黒凪にカカシが微かに目を見開く。
聞いてなかったのか?そう言ったカカシに首を傾げると彼は困った様に空を見上げた。
…サクラに聞いたんだけどさ。
カカシの言葉に顔を其方に向ける。
「最近ふとした時に゙居ない゙んだって?」
『…あぁ、本体の方に戻ってるみたいで。』
「本体?…本体なんてあるのか?」
『あるよ。多分今は氷漬けだね』
当たり前の様に言った黒凪にカカシが片眉を上げる。
黒凪は無表情に言った。
全然覚えてないんだけどさ、…凄く大切な子の術に掛かってこの状態になってる。
内側から来る寒気に毛布を改めてかぶり直した。
『…誰か来てくれないかなぁ。』
「ん?」
『私の本体を助け出してくれる王子サマ。』
「……場所は分からないのか?」
さあねぇ…。
そう言って黒凪が眉を寄せて縮こまる。
寒い。呟く様に言った黒凪にカカシが目を向けた。
『随分今夜は冷えるねぇ』
「…そうだなぁ」
カカシがそう返すとふっと目を閉じて後ろに倒れて行く黒凪。
目を見開いてカカシが手を伸ばすとばっと現れた影がサクラの身体を抱えた。
そのままタズナの家の屋根に着地した陰にカカシが眉を下げる。
カカシも写輪眼の使い過ぎで体が思う様に動かない為結果的に助かったと言えるだろう。
「悪いなぁ……サスケ」
「…別に。」
サクラの身体を抱え直したサスケの側に行くカカシ。
カカシはサクラに毛布を掛け直すとサスケの頭をぽんと撫でた。
両手が塞がっている為カカシの手を眉を寄せつつ受け入れたサスケはサクラの部屋にカカシと共に向かう。
布団の上にサクラを寝かせるとサスケは横目でカカシを見上げた。
「ずーっと盗み聞きしてたな、お前。」
「!…チッ」
「"ばれてたのか"って?…まだまだ修行が足りないよ」
再びサスケの頭にぽんと手を乗せて歩き出すカカシ。
サスケはサクラの寝顔を見ると徐に歩き出した。
"誰か来てくれないかなぁ" その一言がずっと彼の頭の中で繰り返されていた。
「…また行ってたのか」
「はい。夕方頃に行ったら黒凪さんが少し反応を示してくれました」
摘んできた薬草を煎じながら嬉しげに言う白にため息を吐く再不斬。
白は作った薬を再不斬の元に運びながらチラリと側に置いてある首切り包丁を見る。
また「ふふ、」と笑った白に再不斬が呆れた様に眉を寄せた。
「再不斬さんを初めて連れて行った時は大変でしたね」
「あ?」
「黒凪さんを閉じ込めている氷を無理に斬ろうとして。」
「…別に。使えそうな奴なら出してやっても良いと思っただけだ」
再不斬の脳裏に金色の瞳が過る。
あの時のあの女の目は確実に嫌がっていたがな。
そう言った再不斬にまた白が笑った。
「…あの時は、話してくれたんですけどね」
「?」
「昨日会った時は一言も話してくれなくて。…僕が分からなかったのかな」
困った様に言う白から目を逸らし薬を飲んだ。
再不斬が黒凪に初めて会ったのは何年前だろうか。
雪の降る寒空の下で縮こまっていた白を拾い、数か月経った頃だった筈だ。
再不斬の元で過ごし身なりもそれなりに整った頃、彼は白に連れられとある洞窟に入り込んだ。
《…黒凪さん、起きていますか?》
《おい、氷漬けじゃねぇか。反応するのか?》
《します。少し時間が開いてしまいましたけど…》
《――…白》
洞窟に微かに響いた声。
目を見開いた白は嬉しげに「黒凪さん!」と彼女の名前を呼んだ。
片膝を立てた状態で氷に覆われている女。
黒い髪を三つ編みにした金色の目を持つ、女。
そんな黒凪を見た再不斬も白に習う様にしゃがみ込んだ。
《聞いてください、僕を拾ってくれた人が出来て…》
《へぇ…。だからかな…一瞬誰だか分からなかった》
《再不斬さんに良くして頂いて…。あ、この人が再不斬さんです》
金色の瞳が再不斬に向いた。
その目に微かに目を見開く再不斬。
恐らく自分と同じく沢山の人間の命を奪って来た目。
普通の人間の目ではなかった。
《……》
《再不斬さん?》
《…退け、白。》
背に背負っていた刀を持ち上げる再不斬に白が目を見開いた。
黒凪の目がそんな再不斬に向けられる。
その目を見返して再不斬が刀を振り降ろした。
ガキッと音が響くが氷はびくともしない。
《僕も色々と試しましたが全然駄目でした。かなり強力な術の様で…》
《お前が掛けた術だろうが》
《…あの時は必死で…》
《――…物騒な奴…》
笑い交じりに言われた様な気がして白が少し目を見開いた。
再不斬も黒凪の顔を覗き込む。
金色の瞳が徐々に瞼に隠れて行く。
眠いのか、と直感で感じ取った。
「……。」
「あれ以来黒凪さんに会ってませんよね?」
「あぁ」
「この仕事が終わったらまた付いて来てくださいね」
笑顔で言った白に「あぁ」とだけ返して再不斬が布団に倒れる様に寝転ぶ。
白は小さく笑って薬を入れていた皿を持ち上げた。
再不斬は右手をぐっと握りしめると徐に口を開く。
「…明日タズナを殺しに行く。」
「そう言えば昨日、ガトーから連絡が入りました。…橋も壊せと」
「チッ。ならそれも明日やっちまうか」
「はい」
再不斬は気だるげに眉を寄せると眠る様に目を閉じた。
白は皿を洗い窓から外を見る。
寒い。桃色の髪を持った少女が言っていた言葉が引っかかっていた。
まだ夏なのに、寒いとはどういう事なのだろうか。
「さあて。今日も橋を作らんとなぁ」
「サスケ、ナルトは?」
「まだ寝てる。」
「修行を頑張り過ぎて疲れてるんだろうな…」
カカシは空を暫し見つめると「寝かしといてやるか」とタズナの家に背を向ける。
それにはタズナやサスケ達も賛成の様で異論は示さなかった。
サクラは目を覚ました様子の黒凪に気が付くと笑顔を見せた。
「先生、こっちは起きました」
「おはようって言っといて。」
「(おはよう黒凪!)」
『(おはよー…)』
またカカシとサクラの妙な会話に首を傾げるタズナだったが、やはり気にする事は止め歩き出す。
数分程掛けて橋に辿り着くと全員が一様に目を見開いた。
黒凪も眉を寄せ橋をサクラと共に見渡す。
橋を作る作業をしていた男達が倒れていた。
「一体何があったんじゃ!?」
「!…先生、霧が…」
「…再不斬だ」
カカシの言葉にサクラとサスケがタズナの周りを固める。
霧が立ち込め始めた。
黒凪は寒気に眉を寄せサクラを見る。
「(黒凪、まだ良いよ)」
『(!)』
「(まだ私で大丈夫)」
『(…でも、)』
サクラは黒凪が感じている寒気に気が付いていた。
ぐっと眉を寄せてクナイを握りしめる。
黒凪は眉を寄せつつ口を閉ざしサクラと共に様子を窺った。
「…先生、これって再不斬の霧隠れの術よね」
「――…待たせたなぁカカシ…」
「!」
一瞬で周りを囲む複数の再不斬。
目を細めたサスケが走り出した。
サスケがすぐさま元の位置に戻ると再不斬の水分身が一斉に崩れ落ちる。
「サスケ君…!」
「…調子悪いのか?」
「え?」
「アイツ」
サスケの言葉に黒凪が目を細める。
するとゆっくりと全員の目の前に姿を現した再不斬が刀を持ち上げた。
その隣には再不斬を持ち帰った霧隠れの追い忍の仮面をかぶった青年が立っている。
「水分身をまさかあのガキが殺るとはなぁ…」
「成長してますね」
「あぁ。ライバル出現ってとこか?白」
「そうですね…。…依然再不斬さんと戦っていた彼女は動かない様ですが」
仮面の下の目がサクラに向いた様な気がした。
中に居る黒凪が眉を寄せる。
゙白゙と聞こえた。
聞いた事のある名前の様な気がする。
1人呟く黒凪にサクラが不安気に眉を寄せる。
すると一瞬で再不斬がサクラの目の前に移動した。
「よぉ。今日は不調か?」
「!!」
大きく目を見開いたサクラに振り降ろされる刀。
すぐさま入れ替わった黒凪が腕を交差させて受け止めた。
じわ、と滲む血。
己を映した金色の瞳に再不斬が大きく目を見開いた。
『…物騒な奴。』
その一言に再不斬と白が同時に息を飲む。
どくん、と動機がした胸を咄嗟に抑える白。
再不斬も目を見張ったままゆっくりと刀を持ち上げた。
…まさか
(ああ、似ている)
(血に塗れて不機嫌だった、あの人に。)
.