番外編
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せかいはまわる
工藤新一は幼児化していない世界線。
しかもなぜか夢主と赤井秀一と共に工藤宅で暮らしている謎設定。
『あら、おはよう新一君。良く眠れた?』
「ふあぁ、…はよーございます…」
しょぼしょぼとした目をこすりながらとぼとぼと歩いてくる新一君。
世間では高校生探偵と噂される天才、工藤新一も目が覚めたばかりの時は年相応に子供だ。
『洗面所で秀一を見てないかしら。そろそろあの人も起きないといけないんだけれど。』
「いやー…いなかったです。まだ寝てるんじゃないですかね…。」
『駄目ねえ、本当寝起きが悪くて困るわ。』
思わず零れる笑みを隠すように下を向いて朝食を盛り付け、片手でぼさぼさの髪をとかす新一君の前へ。
そして箸を渡せば新一君は素直にそれを取り、朝食を口に運び始めた。
「…ん、うま…」
『よかった。』
ここで寝起きでぼんやりとしか考えを巡らすことができなかった青年…工藤新一がついに覚醒した。
相変わらず、共に組織を追うために同居することとなったこの人…宮野黒凪さんの手料理はいつ食べてもおいしい。
それをなんでもないことのようにやってのけるのだから、この人がかつてミス・パーフェクトだなんてもてはやされていた意味も分かるというものだ。
ま、本人はそのあだ名を嫌っているため口には出さないが。
「…黒凪、」
掠れた低い低い声がリビングに響く。
小さな声なのに良く耳に響くその声は黒凪さんの恋人であり、FBI捜査官として俺とともに組織を追う…赤井秀一さんのものだ。
ミス・パーフェクトを射抜いた人だけあって、この人は黒凪さん以上に完璧だ。
…朝は苦手らしいけど。
『おはよう秀一。目の隈、やっぱり取れないわねえ。』
うふふなんて優雅に笑いながら赤井さんの両頬に手を伸ばし、親指で目の下をこねる黒凪さん。
本当、肖像画にしてしまいたいぐらいの美男美女だ。ここは洋服ブランドの撮影会の会場ですか? なんて言いたくなるほど。
『ほら、座って朝食食べて。その後はその寝グセを直さないといけないわよ。』
「まだ腹が減って無くてな…珈琲…」
『すきっ腹に珈琲なんて言語道断。はい、お味噌汁。まずはこれ。』
開けきらぬ目のままで味噌汁を飲む赤井さん。
俺の寝グセも酷いけど、赤井さんのは相当だ。
もともと何もしていなくてもくるくると波打つ天然パーマを持つこの人の寝起きの髪と言ったら…芸術だもんな。うん。
「黒凪さん、今日の英語の授業、宿題ありましたっけ。」
『教科書20ページの本文を日本語に翻訳する宿題があるわよ。授業までにやっておいてね。』
「げ、やってねーや。すぐにやっておきます。」
『蘭ちゃんに見せてもらったら駄目よ?』
そんな風に言った黒凪さんに「何言ってんすか黒凪さん」と笑顔を向ける。
「俺が英語ペラペラなの知ってるくせに。」
『それでも自然な日本語に訳すのはまたセンスが必要でね…』
「 Let’s speak English then. It’s easier for me. (なら英語で会話といこうじゃないか。そちらの方が俺としては楽なんでね。) 」
早速ブリティッシュアクセントで繰り出されたその英語に思わずぎょっとする。
げ、そうだったここにネイティブがいたなあ。寝起きから英語はきついぜ…。
『 Let’s not. He just woke up…you know that right. Shu. (いいえ。新一君が寝起きなの知ってるでしょう。秀一。) 』
余談だが、黒凪さんが赤井さんを英語を話しながら呼ぶとき…他のFBI捜査官の様にシュウ、と呼ぶ。
きっと英語の中にぽつりと出てくる日本名が少し違和感を感じさせるためだろう。
「 It’s Ok, I have to listen to English before I attend your class anyways…黒凪-san. (大丈夫ですよ。結局貴方の授業を受ける前に英語を聞いておかないといけませんし…黒凪さん。) 」
赤井さんがこちらを見てにやりとニヒルに微笑む。
やっと黒凪さんから出してもらった珈琲を片手に
「hmm, indeed. You do speak English very well. (ふむ、確かに。君は英語を流ちょうに話せるらしい。) 」
そう顎を撫でて言った赤井さんの隣に座って黒凪さんがぱん、と手を叩いた。
『はい、ここまで。新一君急いで支度しなきゃ。遅刻するわよ。』
「げ、ホントだ。黒凪さんごちそうさまですっ」
食器をばたばたとキッチンへ持っていき、自室と洗面所がある方向へと走っていく。
急いで顔を洗い、今日持っていく荷物の確認へ。
そして筆箱が見つからず小首を傾げつつも、迫る時間にネクタイをひっつかんで首に巻きながらリビングへ戻った。
「俺の筆箱知りませんか?」
「ん、あぁ…すまない。昨日使ったんだった。俺のテーブルの上だ。」
「ええ? もーちゃんと俺の鞄に返してくださいよー。」
どたた、と赤井さんの部屋へ向かって扉を開く。あった。確かに机の上だ。
筆箱をひっつかんでリビングへ戻り鞄に放り込んで鏡の前で髪を整える。
…と、赤井さんと食事をとっていた黒凪さんが徐に立ち上がり俺の傍へやってきた。
もしかしてネクタイやってくれる? と一縷の望みをかけてそちらへ身体を向ければ、やっぱり。やってくれるらしい。
「ありがとうございます黒凪さん。」
『しょうがないんだから。』
黒凪さんがやりやすいようにと顎を上げていれば、ものの数分でネクタイがきれいに結ばれる。
その手際の良さに何がどうなってそんなに早くできるのか動画を撮りたいほどだ。
『はい、出来た。忘れ物は無い?』
「あったら届けてくださいよ、遥先生?」
『私は貴方の保護者じゃないのよ?』
「保護者みたいなもんですよ。じゃ、また後で。」
片手をあげて出て行った新一君を見送り、小さくため息を吐いて俺の隣に戻ってくる黒凪。
毎日繰り返されるこの日常は、依然として心地の良いものだ。そう思う。
予定の時間ギリギリに起きてくる俺と新一君を笑顔で向かえ、まるで母の様に俺たちの身の回りの世話をし…。
どたどたと忙しい新一君の手伝いをして、そして神崎遥になり彼の学校でまた再会する。
俺はそんな風にしてから帰ってきた2人を仕事がない日は家で出迎えて、はたまた仕事が長引いた日には出迎えられて。
『お皿、時間があったら片付けておいてね。』
「あぁ」
『貴方も早く変装しないと。いつ誰が来るか分からないのよ?』
「分かってる」
朝食を片付け洗面所に向かって、数分後には神崎遥の姿となってリビングに戻ってきた黒凪。
そのまるで別人な容姿にほんの少しの寂しさを抱えて眉を下げる。
そんな俺には気づかず鞄を肩にかけて玄関へと向かう彼女を追って、ドアに手をかけた彼女がこちらに振り返ったその瞬間に口を開いた。
「気を付けてな。」
『…ええ。貴方も。』
「I love you.」
『I love you too.』
物騒夫婦ならぬ、物騒家族? 同居人?
(ええ? 今日も事件に巻き込まれた? 大丈夫なの?)
(はい。昴さんも偶然居合わせて、多分すぐに解決すると思います。)
(じゃ、夕食作って待ってるから。)
(はい。)
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