本編【 原作開始時~ / 映画作品 】
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赤と黒のクラッシュ
『…私のすべては志保だった…』
「…懐かしいな。」
そう返して口にくわえた煙草に火をつければ、隣に立つ黒凪が小さく笑ってその長い髪をかき上げる。
『あら、覚えていたのね。私があなたに言った…初めての本音。』
「あぁ。忘れもしないさ…。」
組織に潜入し、恋人のような関係になって暫くしてから突然そうぽつりと黒凪が漏らしたとき、俺はその表情から目が離せなかった。
初めて見た彼女の涙だった。…人間らしい表情だった。
『…志保だけだった私は貴方と出会って、…恋をしたわ。…あんなに灰色だった世界が貴方と出会った途端に色づいたの。』
貴方は私たちの仕事がない時間帯を見つけては色々なところに連れて行ってくれた。
…本当に楽しかった。今まで志保だけだった私の世界がどんどん変わっていった。
『こんな時間がこのまま続けばいいと思っていたわ。本気でね。…でも』
「あぁ。…ジンがそんなお前の変化に気づいてしまった。」
『…ええ』
あの人の誤算。それが貴方。
黒凪が俺に目を向ける。俺は何も言わず、煙草の煙を肺いっぱいに吸い込み吐き出した。
『志保を護ると言うこの気持ちが、志保の為なら死んでもいいと思っていたこの覚悟が。…揺らいだの。あなたと…、秀一と生きたいって思った。』
貴方がFBIのスパイだと気づいた時にはもう遅かった。
だから計画を変えることにした。
ちらりと目を向ければ、黒凪がまっすぐな目で言った。
『組織を抜けて、貴方の元へ…FBIの元へ行く。もちろん志保も組織から助けだす。』
そして貴方と一緒に組織を潰して、幸せに生きるの。
なんのしがらみもなく、普通の人みたいに。それが今の私の夢なの――。
笑顔で言った黒凪に眉を下げて微笑んで、彼女の手を掴み彼女へと向き直る。
「俺が何に代えてもお前の夢を叶えさせてやる。だから心配するな…。」
『…うん、ありがとう。…そのためには今回のことを乗り越えないと、ね。』
「あぁ。そうだな。…なら、扉の向こうにいるボウヤに意見でも仰ぐとするか――。」
そう言えば、ゆっくりと開かれる扉。
扉を開いたのは予想通り、江戸川コナンとかいうボウヤだった。
「え、えへへ…いつから気づいてたの?」
「ずっと前から気づいていたさ。…俺たちに用があるんだろう?」
「…うん。本当は赤井さんにだけ話そうと思っていたけど…2人でいれば赤井さんと黒凪さんは、最強みたいだから。」
そんなボウヤの言葉に俺と顔を見合わせて、黒凪がそれはそれは嬉しそうに笑った。
「――それで赤井さんと黒凪さんはどうする? この一か八かの勝負に…乗る?」
水無怜奈の病室に入り、ベッドの上で静かに眠る水無怜奈を見てコナン君が改めて私と秀一の意見を仰ぐ様にそう言った。
秀一が徐にこちらに目を向けてくる。私はその視線を受けて、小さくうなずいた。
それを見たコナン君が不敵な笑みを浮かべ、蝶ネクタイ型変声機をぐいと口元へと引っ張り上げる。
「それじゃあ、さっき言った通りに “彼” をここに。 “ 赤井さん、作戦会議が始まるようです。 ”」
「…分かった。行くぞ、黒凪。」
『…ええ』
コナン君が変声機で変えた、FBI捜査官の声に従って私と秀一だけで部屋を出る。
そしてほかの部屋に移れば、そこには今回のことで増員として来日しているアンドレ・キャメル捜査官が私たちを迎えた。
「よう、キャメル。」
「お久しぶりです、赤井さん。それから…。」
『初めまして…宮野黒凪です。』
「…はい。アンドレ・キャメルです。」
そう感慨深く言ってキャメルさんが握手を求めた私の右手を両手で包んだ。
そして彼が深々と私に頭を下げる。
「…本当にすみませんでした。」
『え…、あの、』
「貴方が組織に始末されかけたのは…私のせいなんです。」
あの日…赤井さんがジンとの初任務に行くはずだった、あの日。
私がミスをしたんです。組織の仲間だと思われる老人に声をかけてしまった。
「結果的に赤井さんの努力をすべて無駄にした上、貴方の命を危険に晒した。…本当に申し訳ありません。」
『…頭を上げてください、キャメルさん。』
結果はどうあれ私は生きている。貴方のやってしまったことは確かに取り返しのつかない失敗だったかもしれない。
でも、大丈夫。謝ってくださる必要なんてないんですよ…。
そう言えば、その強面に似合わずじんわりと目元に涙を浮かべるキャメルさん。
「…その涙は後にとっておけ、キャメル。…ボウヤからの合図だ。」
「は、はい…」
『…いきましょうか。』
そうして3人で水無怜奈の病室の扉を開けば、そこには本堂瑛祐とコナン君…そしてその目を開きこちらに視線を送る水無怜奈がいた。
「キャメル、この青年をどこかへ閉じ込めて…お前は会議へ向かえ。」
「分かりました。」
「なっ、は、離せよ! 姉さん、なんで…なんだよCIAって⁉ 姉さ――」
キャメルが本堂瑛祐の口を塞ぎ、そのまま病室から引きづり出して扉を閉める。
それを見送って秀一がコナン君へと目を向けた。
「彼に水無怜奈の正体まで伝えてやったのか? お人よしだな。」
「まあ…ここまで来れば隠し通す方が英祐兄ちゃんにとっては危険だからね。もちろん組織の話はしてないよ…。」
「賢明な判断だ。」
そんな風に会話を交わす秀一とコナン君の間を縫って進み、水無怜奈の傍にある椅子に座る。
彼女の青みがかった瞳が私を映し、かすかに揺れた。
「…。」
『…私のことが信用できないその気持ちはよく分かるわ。でも貴方も分かっているように…貴方は後戻りできない。結局私が貴方を裏切ろうと、そうでなかろうとね。』
「…それには同意するわ…。」
はあ、と諦めたようにため息を吐いて水無怜奈が秀一へと目を向ける。
私のことは信用ならないが、組織が恐れる秀一は信頼できる…と、言ったところか。
「…俺のことは知っているかな?」
「ええ…組織が最も恐れるFBI捜査官…赤井秀一。」
「なら話は早い…早速本題に入らせてもらおうか。」
「その前に1つだけ聞かせてくれる? …どうして私の正体を?」
水無怜奈がコナン君へとその視線を投げかける。
コナン君はその視線を受けて徐に口を開いた。
「まず、組織の暗殺を止めたあの時…怜奈さん僕を軽く尋問したよね。首元に片手を当てて脈拍や呼吸の乱れを観察して嘘を見抜く方法を使って。あれはCIAがよく使う手だし…。」
その言葉に水無怜奈が驚いたように顔色を変える。
まさかこんな子供がそんなことを知っているとは夢にも思っていなかったためだろう。
それから無意識にCIAで培った技術を組織での任務の中で使っていた自分自身にも。
もしジンがコナン君と同様の知識を持っていれば、今頃スパイだと言うことがバレて殺害されていたことだろうし。
「それに…あの英祐とかいう青年と君の父親…イーサン本堂の正体も踏まえれば、ある程度はな…」
「…その口ぶりだと、私と父の間に何があったのかも大体見当はついているようね…。貴方たちの傍には宮野黒凪もいることだし。」
『…本当なの? 貴方のお父様が貴方を守るために貴方に殺されるふりをして自害した、というのは。』
私の言葉に少しだけ沈黙を落として「ええ…」と目を伏せて水無怜奈が答えた。
「すべて父の計画よ。…4年前、CIAは父とのつなぎ役のCIA捜査官を組織に殺され、それを受けて私は新しいつなぎ役を紹介する役として組織へと潜入した。だけどある日、父との密会中にジンに仕掛けられた発信機に気が付いて…やってきたジンに私が殺されることを避けるために、父は…」
「良い腕の捜査官だったんだろうな…君を尋問するようなMDを事前に作っておき不測の事態にも完璧に対応できるようにしていた…。」
「ええ…おかげで私はコードネームを与えられ、組織の中枢に入り込むことができた…」
けれど誤算だったのは、組織の命令でアナウンサーとしてメディアに出ざる得なくなったこと。 おかげで英ちゃん…私の弟は私に会おうと画策したりとその行動が目立つようになってしまった。
「だから毛利探偵事務所にやってきたの?」
「ええ…事情を話して英ちゃんを匿ってもらうようにお願いしようと思って。今思えばその相談相手は毛利探偵よりも貴方の方が適役だったかもしれないけどね…小さな探偵さん。」
さて…それで?
そこまで話してから水無怜奈が秀一へと目を向ける。
「本題と言うのは? 組織も徐々に私を奪還するためにこちらに手を伸ばしているようだし…」
「あぁ…今回俺たちはあんたと協力関係を結びに来たんだ。」
「協力関係? …まさか、もう一度組織に戻れ…なんて言わないわよね。」
「…そのまさかだ。」
水無怜奈は表情を変えなかった。
ある程度予想はしていたのだろう…目を細め「計画を聞こうかしら」と冷静に答えた。
「簡単に言えば、あんたには組織に奪還された体で奴らの元へ戻ってもらう…そしてスパイとしての活動を再開してもらいたい。」
「…そしてCIAだけでなく貴方たちにも情報を提供しろ、と?」
「あぁ…あいにく現在潜入中のFBI捜査官はいずれもコードネームを与えられるまでには至っていないからな…。」
なら、見返りは?
その言葉にすぐに秀一が答えた。
「君の弟…本堂英祐を我々FBIが責任を持って保護しよう。」
「…。貴方たちの計画は分かったわ…でもきっとジンなら私の奪還に成功したからといって手を引きはしない。」
特に貴方たちに匿われていた形の私がFBIとの協力関係を万が一にも結んでいないことを証明するために…FBIの主要人物を殺す任務を与える。だとかね…。
そう言った彼女の目が向いたのは秀一。そして…私。
「私の予想では、おそらく貴方…赤井秀一を殺すようにと言われる。」
「うん、それは僕も同感だよ。だからこんなのはどうかな?」
僕の知り合いにベルモットと同じぐらい変装に長けた人がいるんだ。それからびっくりするような装置を作る博士も…。
恐らくジンなら怜奈さんに最終的に赤井さんの頭を撃つように指示をしてくるはず。だから赤井さんのニット帽に血糊を仕掛けて、本当に撃ったように見せかける。
そして死体を調べさせない為に車を爆発させて証拠隠滅をする…。
「どんな殺害方法を装うにしても代わりの死体が必ず必要なるわ。当てはあるの?」
「それは組織の仲間としてこの病院に潜入していた…楠田陸道のものをダミーとして使うことになるだろう。」
あいにく頭を銃で撃って自害してしまったんでな…。
そう言った秀一をじっと見つめて水無怜奈が目を細める。
「…なるほどね。死を偽装したあとは、その変装に長けた協力者の力を借りて別人として行動を続ける。と。」
「あぁ。これがこのボウヤが考えた作戦だ。」
水無怜奈が沈黙を落とす。
そして言った。
「もしジンが私たちの予想通りに赤井秀一の殺害を私に課すだけならいいけれど…問題は、彼が貴方の殺害をも計画する可能性が0ではないこと。」
そう言った彼女は私を見つめている。
その時はどうするの? 以前ジンから逃れたようにどうにかするのかしら。
『…それに関しては手はあるわ…。組織…特にジンは私が妹を…シェリーを第一に考えて常に行動していることを知っている。それは事実だしね。』
今回私は…FBIがまんまと貴方の居場所を組織にばれたこの状況を見てFBIを離脱する。
FBIを見限り、シェリーを連れて逃げる。…ということにしておく。
「理由付けはそれで良いと思うけど…逃げられるの?」
『彼らの手が伸びる寸前の今なら、容易にね。』
「…そう。分かった…ならこの作戦に乗るわ。」
≪ちょ、ちょっと待ってよ――…水無怜奈をまんまを奪われた上…黒凪さんもいなくなった⁉≫
≪あぁ…大方、水無怜奈の居場所が組織にばれた上、簡単に奴らの作戦に嵌った俺たちFBIを信用できなくなっての行動だろうな。≫
≪そ、そんなこと言ったって…どうしてそうも冷静なのよ⁉ 黒凪さんは貴方の…≫
≪…覚悟はしていたことだ。あいつにとって最も優先すべき存在は昔も今も妹のシェリーだけ…。≫
ひそかに傍受していたFBIの無線の会話を聞き、目を細める。
そんなジンを横目にウォッカは彼の愛車であるポルシェを走らせていた。
後部座席にはFBIから逃げ出してきたキールを乗せている。
「…。」
「どうやら宮野黒凪の野郎、逃げちまったみたいですね。兄貴…。」
「あぁ…奴が本気で姿を消せば、向こうが尻尾を出さねえ限り見つけることは難しいだろう。」
あいつの死に顔を今回拝めると踏んで楽しみにしていたんだがな…。
そう地を這うような低い声で言ったジンを横目にバイクに乗って近付いてきたベルモットをサイドミラーで確認するウォッカ。
ベルモットはキールを車外から睨むようにして見ていた。
まあ、FBIに捕まっていたのだから仕方がないことだ…ジン自身もキールのことを信用しきれていない部分はこちらから見ていても分かる。
「…念のために部下にも探らせたが、本当にあの野郎姿を消しやがった…。」
舌を打って自身の携帯を閉じ、ジンが不機嫌に呟く。
この時ウォッカは気づいていなかった。
ジンのつぶやきを聞いて内心舌を巻いていた、後部座席に乗るキールに…。
「キール」
「! (…ジン)」
FBIの…いや、赤井秀一とあのボウヤ、江戸川コナンの要請で組織に戻ってから数日後。
私を複数の備考と盗聴器で監視することばかりをしていたジンがついに接触を図ってきた。
この数日で、本当に彼女…宮野黒凪が組織の捜索をかいくぐって完全にその消息を絶ったことは確認済みである。
本当に彼女は得体がしれない。いったいどんな人生を歩んでいればここまで完璧に動けるのか。
まあなんにせよ…これで本当に彼女の暗殺はあの方もジンも分かっているように、現在は不可能であることが分かっている。と、なれば…。
「あの方からの命令だ。…とある人物を殺し…信頼を取り戻させてくれ、とな。」
「…とある人物?」
「…FBI捜査官…赤井秀一…。」
どくん、と心臓が小さく跳ねた。
本当にあのボウヤは末恐ろしい。
あの方とジンの命令が…まさにあの子の筋書き通りに、私の元へと舞い込んできた…。
赤井秀一を殺せ、という命令が…。
そうして私はジンの言うとおりに赤井秀一を来葉峠へと呼び出し…彼を”殺した”。
それは組織につけられた首の監視カメラからも、オンタイムでジンとウォッカも確認していたことで。
…まさに完璧な計画だった…あのボウヤが作ったこの計画は。
ジンもウォッカもここまでの殺害がすべて偽装だとは全く気づいていない様子だった。
≪…今、赤井秀一の指紋を、日本警察が来葉峠で回収した焼死体と照合したFBIが出てきたわ。≫
「…」
≪あの様子だと、成功したみたいよ。キール。≫
「…そうか。」
ウォッカが運転するジンのポルシェの中で、ベルモットと通話をしていたジンが一言そう彼女に返し、その通話を切る。
そして片手でその携帯を閉じ…ジンがバックミラー越しに私を見た。
「よくやった…キール。」
「お褒めに預かり光栄だわ。これで信用してくれたかしら? 私は貴方たちの味方だって…」
「あぁ…あの方も満足だろうよ。」
これで随分と楽に動けるようになる…。
そう言ってにやりと笑みを浮かべたジンをバックミラー越しに見て、目を伏せた。
本当に…ここまで上手くいくとは。
「…どうして…どうして黒凪さんが見つからないのよ…!」
「…ジョディ君。まだこんなに遅くまで残っているのかね? そろそろ君もゆっくり休むべきだと思うが…。」
はっと顔を上げれば、心配げな表情を浮かべてジェイムズ・ブラック捜査官へと目を向ける。
きっと私の目は長らくパソコンを覗き込んでいたせいか、充血してしまっていることだろう。
目を伏せ、徐にデスクから立ち上がった。
「すみません…人捜しをしていて。」
「…宮野君かな?」
「…。」
「…彼女を恨むことはできんよ。もちろん水無怜奈も…。」
彼の言葉にぐっと口を強く結ぶ。
そんなことは分かっている。…だけど。だけど…!
「宮野君も水無怜奈も…今回この決断をしなければ彼女たち自身の身が危うかった。我々が失ったものは大きい…だがここで挫けてはいけない。」
「…はい。」
どうして黒凪さんはシュウをおいて消えてしまったのか?
シュウを愛していると、そう言っていたではないか。
これほど早く決断を下せるほど…シュウはどうでも良い存在だったの?
それとも、貴方の妹…シェリーがそれほどまでに大切なの?
ねえ、教えて。黒凪さん。
シュウを失った今、貴方は何を思うの――?
「――はい、完璧♪ 我ながらものすごい美人さんを作っちゃったわ~ ♪」
目の前でぱちんと両手を合わせてにこにこと微笑んで言った美女…工藤 有希子さんを前に慣れない変装の感覚に、すぐに鏡を覗き込んだ。
そこには釣り目気味の日本人の顔。私の顔は元々少しハーフっぽいものだったので、これは新鮮だった。
「見て見て新ちゃ…コナン君!」
うん、思いっきり正体をばらしかけているけれど、大丈夫ですよ有希子さん。お構いなく…。
私も…そして私と同じく変装を施されて目の前に立つ彼…赤井秀一も、すべてしっかり理解していますから。
すでに変装を終えて私の変装姿を待っていた彼、秀一は私の顔を見ると小さく微笑んだ。
「ほう、その顔も中々。」
『あら。こっちの方が好みなの?』
「いや? お前の本来の顔の方がそりゃあいいさ。」
『白々しいわよ?』
そんな風に軽口を叩き、そんな私たちをニコニコと眺めている有希子さんと…そしてコナン君へと目を向ける。
この2人の協力が無ければこんな風に2人揃ってジョークを言い合うこともできなかっただろう…本当に感謝している。
「じゃあこれから赤井さんは “ 沖矢 昴 ” さんとして…それから黒凪さんは “ 神崎 遥 ” さんとして。よろしくね? 変声機はこれなんだけど、サイズは大丈夫そう?」
『これ…スイッチは?』
「スイッチはね、…ここ!」
言われるがままにスイッチを押せば、まあ自然と声が変わること。
アガサさん、本当にすごい…。
「…それでは、遥。」
『え、何その口調。』
「口調も念のために変えておこうと思ってね。」
にっこりと笑ってそう話す秀一を見ていると、本当に同一人物には見えない…。
遥も口調を変えたらどうだい?
なんて宣う秀一にひく、と少し表情を引きつらせて少し沈黙し、ごほん、と咳を1つ。そして…。
『…わかった! わかったよ、昴。 これでいーでしょ?』
と変声機を使いつつ口調を変えれば、そんな私を見ていた秀一、コナン君そして有希子さんが笑みを浮かべた。
Kir..
(のちに彼女…宮野黒凪の恋人かつ組織の幹部だったライが組織を抜けた。)
(途端に彼女は警察官を辞め、組織にいることが多くなった。)
(実のところ…ジンに彼女の暗殺を指示されたことがある。)
(結局常日頃から彼女は警戒心が強くとても私が暗殺できる相手ではないと判断し、自分から辞退した。)
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