過去編【 子供時代~ / 黒の組織,警察学校組 】
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9年前のあの頃 with VODCA, KORN
大人になってから感じるあの独特の時間がたつ時間の速さは…どうやら身体の成長とは関係がないものらしい。
2回目の人生で16歳になった私は常々そんなことを感じながら今日もまたジンの任務のサポート役を勤めていた。
集合場所へと到着して彼を待てば…いつもと違って、足音が2人分。
「…ウォッカだ。」
そう一言だけ言ってくい、と隣に立つ大柄のサングラスをかけた男を顎で示したジン。
ウォッカと呼ばれたその男へと目を向ければ、私の身長が彼の胸元までしかないためだろう…少し腰をかがめて笑みを浮かべる。
「どーも。会うのは初めてだな…。」
『…黒凪です。ジンと任務に出るということは、随分と前から幹部なんですね。』
「まあ…幹部2年目ってところだ。ヨロシク。」
差し出された手を掴んで一応握手に応じておく。
よろしくするつもりなんてないけど、大人として、ね。
それにしてもこのまま車に乗らないということは、他にも今回の任務に参加する人がいるのだろう…。
私は何も言わず、ジンの機嫌を損ねないようにと黙って待つことにした。
「(確かにジンの兄貴のことを理解しているってのは、あながち間違いでもないらしい…)」
追加でやってくる他のメンバーを無言で待つ黒凪を横目に、ウォッカが1人そう考える。
噂で聞いてはいた…ジンの側近にあたるコードネームを持たない女の存在は。
まさか高校生になったばかりの子供だとは予想していなかったわけだが。
「…待たせた。すまない。」
3分ほどして現れた、俺と同じくサングラスをかけた細身の男。
なるほどこいつとは初対面だ…。
「…初対面。」
『…ええ。黒凪です。』
「コルン…」
「ウォッカだ。」
このメンバーの中で1人コードネームを名乗らない彼女は少し異質に見えた。
なぜ俺よりも組織の在籍年数が長いこの女がコードネームをもらっていないのか…まだ子供だからか?
「標的の元へ向かうぞ。ウォッカ、運転しろ。」
「へい。」
何も言わずにジンの兄貴が乗れるように助手席の扉を開く黒凪。
ジンの兄貴が入ったと同時に扉を閉め、自身も後部座席に乗り、コルンは自身のバイクで移動するらしく駐輪場へと歩いて行った。
『…居場所はここです。』
ジンの兄貴が煙草に火をつけている間にも、運転席に座った俺に居場所を伝える手際の良さ。
こりゃあ確かにジンの兄貴が側近として置いておくわけだ…。
任務が終了し、帰路に就く我々。
行きと同じくウォッカが運転するジンのポルシェの後をバイクでついてくるコルンを横目にしつつ、私は現在時刻へと目を向ける。
『(思っていたよりも時間がかかってしまった…アイリッシュがそろそろ訓練場に着くころか。) …ジン』
「…なんだ」
『アイリッシュに電話をかけていいかしら。彼、そろそろ訓練場に来るから。』
「…」
無言はOK。私はアイリッシュに電話をかけ始めた。
≪…黒凪か、どうした?≫
『任務が長引いて、まだ戻れていないの。10分ほど待ってくれる?』
≪了解。≫
そんな短い電話を終えて携帯をポケットに入れれば、運転しているウォッカがバックミラー越しにこちらを見て口を開いた。
「アイリッシュか…、噂ではアンタのボクシングの師匠なんだって?」
『…ええ。』
「あんな大男相手にやってりゃ、確かにあんな動きもできるか…。」
あんな動き、というのは先ほどの任務での肉弾戦のことだろうか。
毎度のごとくジンに直接の殺しは禁止されているため、標的を気絶させただけなのだが。
今回の標的は私の体格からすればかなり体格差のある男に入る部類だったための発言だろう。
『おかげさまで、体格差のある相手とのやり方は慣れているから…。』
とウォッカと会話を交わしつつもちらりと無言で私たちの会話を聞いているジンへと目を向ける。
なるほどジンはわりとウォッカを気に入っているらしい…こんな無駄話を文句も言わず黙って聞いているだけとは。
「ベルモットも大分あんたを買っているらしいんでね…ずっと会ってみたかったんだ。初めて会った時はただのガキかと思ったが、確かにベルモットが買っている理由も今となれば分かる。」
『(…ベルモット、か。)』
ここ数年は会っていなかったけど…最近また会ったなあ。
さすがは米国女優。5年近くその姿を見ていなかったけれど、全く老けていなかった。
怖いぐらいに全く、老いを見せなかった。
『(まさか、ベルモットは年を取らない…なんてね…。)』
「ベルモットとは連絡は取っていないのか?」
『…別に、彼女と話すこともないし。』
く、とジンが小さく笑った。
そんな反応に「え? なんか私言った?」と驚いていると、彼の緑がかった目が私に向く。
「あの女はお前が怖くて仕方ねェらしいぜ…。おかげでお前がいる任務には同行しない徹底ぶりだ。」
『…え? ああ、だからここ数年顔を合わせられなかったのね。でも私の何が怖いのか…』
「フン…あいつは秘密主義だからな…」
つまるところ、その理由はジンも分からないと。
途端に影が車の中に差す。どうやら組織の駐車場に戻ってきたらしい。
時間を見れば、アイリッシュとの約束の時間まで後5分。
車を降りてジンのために助手席の扉を開けば、ぬっと車から降りる大男。
ジンに関しては、年々大きくなっていっているような気がするのは気のせいだろうか。
「…行け。」
どうやらアイリッシュのところへ向かっていいらしい。
ジンの言葉を受けてウォッカとコルンへと小さく会釈をして中に一足先に入り、そのままの足で訓練場へと向かう。
中に入れば、タンクトップ姿になって準備運動をしているアイリッシュがいた。
『待たせてごめんなさいね。』
「ん? あぁ…10分ぐらい待ったうちに入らねえよ。」
『ならいいけど。…ねえ、ウォッカとコルンって知ってる?』
「あー…ウォッカは最近ジンとよく行動している奴だな。ジンの金魚のフンだ、ありゃあ。」
コルンは…。
そこまで言ってアイリッシュが小さく笑みを浮かべる。
「前の任務で奴が狙撃する予定だった奴を殺しちまってな。キレられた。」
『あんな静かな人がキレるの?』
「そりゃあれだ。無言でキレてやがった。」
『へえ…』
狙撃手の中にスパイらしき男が1人いるし…そいつを殺せばさらにキレられるかもな。
そんなアイリッシュの言葉に小首をかしげる。
『狙撃手の人たちって仲がいいの?』
「さあな…。ま、変な仲間意識は持ってるらしいが。」
『ふうん。』
あんなひょろひょろで銃を取り上げられれば詰むような奴等、興味ないね。
そんな風に言って何度かジャンプするアイリッシュ。
それを横目に手にバンテージを貼り終え、立ち上がる。
『さて、今日は何回放り投げられるかしら。』
「今日は一桁を目指したいところだな。」
そんな冗談に小さく笑って構える。
思えば、この人とももう8年の付き合いになるのか…。
アイリッシュがピスコに対して思うように組織の誰かを親の様に慕うことは出来ないけれど、彼との関係はなんていうか…
『っ、痛った!』
「足の意識が弱い。ほれ立て。」
なんていうか、兄みたいだな。なんて。
反転する視界の中で馬鹿なことを考えた。
ちなみに、
(8歳になった志保はすでに天才の片鱗を見せていた。)
(そして…そのIQの高さに、組織に目もつけられた。)
(これからは彼女も私と同じように英才教育をさせられるらしい。)
(私の様に殺しの技術は叩き込まれない予定のようだから、そこだけは、安心した。)
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