過去編【 子供時代~ / 黒の組織,警察学校組 】
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19年前のあの頃 with 降谷零
「…え」
「ごめんね、レイ君。突然のことで。」
降谷零と出会って、約半年ほど経った頃だっただろうか。この頃には母のお腹も随分と大きくなり、臨月に入っていた。
そんな中、私達宮野家は宮野医院を閉院し、以前から両親が話し合っていた烏丸グループの施設へと移り住むこととなった。
レイ君は母と初めてしっかりと話をしてから、暇を見つけてはわざわざ理由をつけてうちに顔を出しに来ていた。
だからこそ、突然私たちが引っ越していくということでレイ君はショックを受けているらしい。
「だって、誰もそんなこと…」
「ごめんね。急に決まったことだから…。黒凪も、レイ君にお別れを言いなさい。」
『半年間、仲良くしてくれてありがとうね。』
「…お前がいなくなったら、誰が僕の喧嘩を止めるんだよ…」
そんな言葉に小さく笑う。
『今のレイ君なら自分でどうにかなるでしょう?』
「…っ。」
「ごめんねレイ君。お別れだね…。」
バイバイだね、レイ君。
そうレイ君に残して私たちは宮野医院跡地を後にした。
そして私達宮野家は烏丸グループの元で暮らす事となった。
これが私達一家の地獄の日々の始まりだとも知らずに…。
私達が烏丸グループの社員寮に入り、荷物を片付けた頃、私達の部屋に枡山 憲三(ますやま けんぞう)と名乗る男性が訪ねてきた。
母はぴんと来ていなかったようだが、父は大手自動車メーカーの会長である枡山を見て驚いていた。
「あ、あの枡山会長がどうしてこちらに?」
「いやはや。これでも会長をこなしつつ、烏丸グループ総帥に使えている身でもありましてね。」
「そうだったんですか…! いやあ、初耳だったなあ。」
「では早速、お二人に改めて研究の説明をさせて頂きましょうかねえ。」
え? と母が目を丸くさせた。
あの、夫の研究をこちらの施設でさせて頂ける、と伺っています。
そう言った母に、枡山はにやりと微笑んだ。
「はて? そうでしたかねえ。」
「え、あの…」
「まあとりあえず、こちらへ。」
私の手を握っている父の手に力が籠められる。
きっと父は今、母の姉の言葉を思い出していたことだろう…。
「胡散臭い」そんな言葉を。
そして一通り話を聞いた両親は「話が違うように思うのですが、」と改めて枡山に抗議の意を示した。
しかし彼は今度は微笑まず、右手を静かに上げた。
途端に彼の部下らしき人達に拳銃を向けられる。
「どうしても研究に参加していただけないというなら…娘さんを人質に取ることになってしまいますが?」
「な、何を…」
「研究にお力添え頂けますかな? 宮野夫妻。」
やっと事態が深刻だと気づいたのだろう、黙った両親の傍で私も相手を興奮させないようにと必死に黙っていた。
するとそんな私をちらりと枡山が見下ろして、その目を細める。
「君、今いくつだい?」
『!』
「む、娘には何も…!」
「私はただ質問をしているだけですよ。」
にっこりと笑って言う枡山は、今の状況からすると不気味でしかない。
私は両親の様子を伺いながら、応えた。
『7歳です…』
「そうかそうか。小学校には行っているのかな?」
『今、小学1年生、です。』
「そうか。拳銃は怖くないのかな? ん?」
私の手を握っている父の手が震えている。
その手のひらにはじんわりと汗がにじんでいた。
『怖い、です。』
「ふうん…。それにしては、よくこの状況で淡々と私の質問に答えられるねえ?」
やはり子供は呑み込みが早いのかな。
そんな言葉には、何も返せなかった。
なぜなら私は、体はそうであれ中身は子供ではないから。
「や、やります。研究でも、なんでも…。」
父が消え入りそうな声で言う。
その言葉を聞いて母も目に涙を浮かべながら、ぼそりと呟いた。
「ごめんなさい、あなた、黒凪…。…志保…」
そんな2人を見てやっと枡山が立ち上がり、私から視線を外した。
「それはよかった。分かって頂けてよかったですよ。」
ただ、ちゃんと取りくんでいただかないといけないのでね…。
そう言って枡山が私と父がつないでいた手を離し、そして私の手を握って両親から私を引きはがした。
「長女の黒凪ちゃんはこちらで面倒をみさせてもらいますよ。」
「そんな…! ちゃんと研究に参加します! しますから、黒凪は…!」
「なに、毎週会わせますから。」
「黒凪…!」
両親の叫び声を背中に、私はこの状況をどう切り抜ければいいのか、ひたすらに考えていた。
それでも答えは出なくて、そして私は小さな部屋へと移動させられた。
「これから君にはここで1人で住んでもらうことになる。できるかな?」
『(7歳の子供が出来るわけないじゃない、そんなの…)』
そしてこの日から、私の生活は一変した。
バイバイだね。
(朝早くから言語学習と、それから学校で習うような勉強をさせられ)
(午後からは軍事訓練のようなものをさせられ)
(夜には様々な武器の使い方を叩きこまれる。)
(こんなハードボイルドな日々、誰も求めていないのに、だ。)
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