短編
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不二咲side
入学式の後の自己紹介。
ボクは、いつも通り弱いまま女の子として自己紹介をした。
やっぱり高校生になってもボクは変われない…。
そう思うとじわりと涙が滲んだ。
そんな中、1番最後の彼女の自己紹介が始まった。
超高校級のいじめられっ子、それでも彼女は明るくていじめの根絶を目指していると高らかに宣言していた。
「凄い…」
思わず口から零れた言葉。
ボクなんかとは比べ物にならないくらい強い…それでいて凄い。
ボクはこの見た目のせいで男のクセにと言われ続けて…ずっと逃げてばかりで。
もし彼女が辛い事があれば支えたいと思った。
気付くと足が動いていて、彼女に歩み寄っていた。
「ぁ、あのっ…!」
苗字さんがこちらを見る。
近くで見ると、メガネの奥の目は強くてしっかりした視線でボクは緊張できっと顔も真っ赤だ。
「苗字さん、凄いね!ボク…応援するよ!」
必死に絞り出した声は、裏返りながらもなんとか伝わったようで彼女はふんわりと笑って、
「ありがとう」
と返してくれた。
ボクは恥ずかしさで、そのまま彼女の元をパタパタと走り去った。
何だろう、心臓が聞いたことないくらいうるさくて胸をぎゅっと押さえつける。
あまりのうるささに周りの人にも聞こえてるんじゃ、と見回すと苗木君と目が合った。
咄嗟にサッと視線を逸らす。
「大丈夫?具合悪いの?」
「ぁ、ううん…!大丈夫…」
少し落ち着いてきたことを確認して顔を上げ、苗字さんの方に視線を移す。
すると苗字さんもこちらを見ていた。バッチリと目が合うと、またふわりと笑い掛けてくれる。
それを見て、またトクンと心臓が脈打つ。
そっか、これってきっと……
「一目惚れ…」
ポツリと零れた言葉を自分で聞いて改めて再確認する。
一目惚れ、した。
初めて、好きな子ができた。でもきっとこんなボクじゃ受け入れてもらえない…強く、ならなきゃ…。
変わらないきゃ。
そう決心して、ボクはまた胸の前で手を強く握り締めた。
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