1年目
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入学から10日程たった。
初授業からいきなり10日も経つのかって?
それはまぁ、話しの都合上割愛ってところかな。
さて、私が何故この学園に飛び級までして入学したのか。
それは手違いなんかじゃなくってちゃんとした理由があるわけなんだけれど、それはおいおい語るとして…
入学からの10日間、ほとんど毎昼誰かと昼食を取っていた。
まぁ入学したてだし仲良くなる為には仕方の無い事だけれど、たまには一人の時間も取りたくてみんなの誘いを断ってふらふらと中庭まで歩いてきた。
適当な木陰を見つけて、芝生の上にそのまま座り手帳を開く。
コンビニ袋からサンドイッチを取り出して一口かじった所で視線を感じた。
「やぁ、苗字さん。入学式ぶり、かな?」
そこには特徴的な綿菓子頭。
「こんにちわ、狛枝センパイ」
せっかくの一人の時間を邪魔されるのもなぁ…と思いつつ隣へどうぞと荷物を避けた。
「ボクはホントにツイてるなぁ…朝車に轢かれそうになったのは今の為だったんだね」
アハハと綺麗な笑みを浮かべながら先輩は隣に座ると自分のお昼を取り出して食べ始めた。
「今の為って、何ですか?」
「そうそう、ボクはね入学式からずっと苗字さんに会いたかったんだ」
嬉しそうに微笑むと、先輩は顔をこちらへ向けた。
「新入生スレを見た時に、君の名前は無かったからさ…ちょっと気になったんだ。で、調べてみたら飛び級だなんて素晴らしいよ!」
眩しい程の笑顔を見せながら喋る先輩。
普通の女の子なら惚れてるんだろうなぁ…と思っていると少し探るような目でそれでいて嬉嬉として先輩は私に聞いてきた。
「超高校級のいじめられっ子って、具体的にどんな才能なの?」
「普通のいじめられっ子ですよ。どんな場所でもいじめのターゲットが私になるだけって言う。」
ふーん…と言うと黙り込んでしまった。
何かを考えているのか、興味がなくなったのかは分からないけれど静かなのはいい事だ。
私はもくもくと目の前のサンドイッチを齧り続けた。
そしてメロンパンの袋を開けようとしてるところで、狛枝先輩がこちらを向いている事に気が付いた。
「なんですか?」
「もう1つ質問なんだけどさ」
はい?と答えながらも私はメロンパンをかじった。腹が減ってはなんとやらだから。
「君の名前と容姿って本物?」
「はい、もちろん」
もちろん本物ではない、と言う意味だけど。
「いくら調べても、出て来ないんだよ君の経歴がさ」
「いじめがあること自体が不祥事ですからね、偉い所が揉み消してるんです。」
実際そうだ。いじめを学校側が認める訳にはいかない。
それに加えて、たくさんの学校を転々とする私にとっては容姿や本名が知られているのはとっても動きにくいもの。
「私の経歴が知りたいなら、文科省に直接聞いてみてください。まぁ機密情報だから教えてくれるかは分かりませんけど」
そこまで言って、食べ終わったゴミを袋に詰め込み、私は立ち上がった。
「あれ、もう行っちゃうの?」
「あと半年もすれば、教えてあげますよ。本当の顔」
「半年……?」
先輩は顎に手を当てて考える、でもきっと思い付くはずもない。
「半年後に何かあった?」
「私の、恐らく人生最大の仕事が終わるので。」
そう言って、呼び止める狛枝先輩を無視して中庭を後にした。
おいおい語る、とは言ったもののもう綴っておこうと思う。
私の入学理由、そして人生最大の大仕事。
それは、超高校級の絶望の調査および戦刃むくろ並びに江ノ島盾子の監視。
これは海外でもスパイ活動を終えて、帰国前に観光でもと街を散歩していた時。
仕事用の携帯が軽快な音楽と共に着信を知らせる。
こっちの、携帯が鳴るのはもちろん仕事の依頼のみなので私は非通知でも迷わず取る。
「はい、苗字です」
「…希望ヶ峰学園の宗方京助と言う。」
それが宗方さんとの出会い、始まり。
「はいはい、希望ヶ峰…希望の学園でまさかのいじめが?」
「…そちらの仕事の依頼ではない。とある人物の調査を行って欲しい」
私は少し黙って考える。いつから探偵になったんだっけ?
「あのぅ、スパイとしての私を知ってくださってる見たいですけど、調査は受けてないんですよ」
「希望ヶ峰学園に、入り込んでほしい。」
簡単にまとめると、希望ヶ峰学園は怪しい人体実験をしようとしている。
そしてそれを悪用しようとする人物もいる。
その2つを調査して欲しいと。
「でも私まだ高校生じゃないので、入学するにしても来年じゃ?」
「……そこは俺がなんとかしよう。とても危険な仕事ではある、頼めるか?」
「危険ねぇ……そんなこと言われたら受けるしかないじゃないですか」
と、まぁ分かりづらければフィーリングで感じ取って欲しい。
私は中庭を離れた足でそのまま授業には戻らず、ボロアパートを訪れる。
最近ここで江ノ島を目撃したと、報告を受けたからだ。
「確か、ここ?」
得た情報を元にドアをノックする。
少し間が開き、ゆっくりと扉が開かれると中から出てきたのはぷよぷよの大柄な人だった。