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ぷらいべったーログ(ハレ高)

ハレ高へのお題は『嫌い、って言ってよ』

いっそ嫌いだと言われたかった。
この男が好いた相手など明確で、そしてそれが─あらゆる意味で─もうどうにもならない想いだとわかっていた。揺らぐことなく、報われることもない。
これは不毛な感情だ。彼も自分も。否、諦めるという選択肢があるだけ自分の方がマシだろう。
…だから諦めてしまおうと、彼の元に来たというのに。
「嫌いじゃないですよ?」
肩より少し長い黒髪を揺らしながら、なんでもない事のように告げられる。
好きだとは絶対に言わないクセに、これである。
「何ですか、人の顔見てため息なんか吐いて」
失礼な、と眉を寄せるその顔は、以前より少し窶れたように思う。その印象的な目元が僅かに赤いことも、最近めっきり笑わなくなったということも、気付きたくなどなかった。
「嫌いでもない相手のことを嫌いだなんて言えないでしょう」
「なら嫌いになってくれ」
「馬鹿ですかあんた」
今度は彼がため息をついた。これだけ辛辣な態度が出来て嫌いじゃないとは、なんて厄介な男なんだ。
「─貴方が先に嫌いになってくれたら、考えてやりますよ」
呟いて、俯いてしまったその顔を、覗き込んでしまったら。
きっと永久に諦められなくなるのだろう。

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