NARUTO/カカサク 短編①

不死鳥のフランメ/マリア×風鳴翼(日笠陽子×水樹奈々)

執務室で仕事をしていると、サクラがやってきて開口一番に、ここ最近聞き慣れた単語を口に出す。

「先生、大好き!」
「はいはい、ありがとね」

サクラが毎日俺のところに来て、告白していく。このやり取りをするのはもう何度目になるだろう。最初の頃は驚いたが、いまはすっかり慣れてしまった。

「これ、いつまで続けるの?」
「うーん、先生が振り向いてくれるまでかな!」
「サクラが諦めるって選択肢はないの?」
「先生、私の愛が重いの知ってるでしょ?」
「確かに……」

何がきっかけかは分からない。ただサスケに向いていた気持ちがいつのまにか俺の方になっていたのだ。

「それより、サクラ。仕事はいいの?」
「あっ、もうこんな時間じゃない! それじゃあ、またね!」

そう言って慌ただしく去っていくサクラを見つめ、俺はため息をつく。「サクラも懲りないっすね……」とシカマルが同情の目で見てくるのを受け止めながら、俺は苦笑いを返す。

「六代目はサクラのことどう思ってるんですか?」
「そりゃあ、好きに決まってるでしょ」
「でも、その好きって恋愛的なものじゃないっすよね。だから、サクラも毎日告白してくるんじゃないっすか」
「まぁ、そうだね」

サクラの事は確かに好きだが、それが恋愛の好きかと言われれば悩むところだ。小さい頃から知っているので、どうしても先生目線というのが勝ってしまう。

「……もしサクラがいなくなったらどうします?」
「? いなくなるって?」
「例えば任務とかで……」
「いまはそんな危険な任務そうそうないでしょ、昔だったらまだしも。それにサクラの強さはシカマルだって知ってるじゃない」
「それはそうですけど……」
「サクラは仕事柄人一倍健康にも気を遣ってるし、年齢的にも俺の方が先に逝くに決まってるからね。心配するだけ無駄だよ」
「……そうすっね」
「この話はここで終わり。仕事終わらせて早く帰ろうよ」

まだ何か言いたげなシカマルだったが、俺に言われた通りに書類整理を再開させる。サクラがいなくなる……そんなことは想像もしたくない。俺も仕事に没頭するため、サクラがきたおかげで止まっていた手を動かし始めた。


だいぶ書類の山も減ったころ、この調子だったら定時には帰れそうだなって思っていた時に、ナルトが勢いよく執務室に入ってきた。

「カカシ先生! 大変だってばよ!」
「おい、ナルト! 騒がしいぞ。それに六代目だろ」

シカマルが嗜めるが、俺は「別にいいよ。そんなに慌ててどうしたのよ?」とナルトに問いかける。

「先生……サクラちゃんが……」
「サクラが?」
「窓から落ちそうな子供を助けようとして、サクラちゃんの方が落っこちちゃったってばよ!」
「!?」
「そんでなかなか意識が戻らないらしい……どうしようってばよ~!」

そう言って泣き喚くナルトをシカマルに任せ、俺は急いで病院に向かう。受付でサクラの病室を聞くと、急いでそこを目指した。

「サクラ!!」
「カカシ先生……」

勢いよくドアを開けると、ベッドの上で眠るサクラの横にいのが座っていた。

「サクラの容体は?」
「とっさに受け身を取ったみたいで命には別条ないんだけど、頭を打ったらしくてね……なかなか目を覚まさないの」
「そうか……」

命に別状はないと聞いて安心するが、なかなか目を覚まさないというサクラに俺の不安は拭えない。2人してしばらく心配そうに見守っていると、サクラの目がゆっくりと開き始める。

「「サクラ!!」」

いのが嬉しさのあまりにサクラに飛びつき、俺もサクラが目を覚ましたことに一安心する。

「ちょっと、いの。苦しいんだけど……」
「ごめんごめん」

そう言っていのが離れるとサクラはゆっくりと体を起こす。

「良かった! あんたの好きなカカシ先生も来てくれたのよ」

いのが指差すと、サクラは俺の方へと目線を向ける。

「サクラ、目を覚まして良かった」

俺がそう声をかけると、サクラが不思議そうな顔で衝撃的な一言を放つ。

「えっと……誰ですか?」

俺は驚きのあまり言葉を失い、いのが「サクラ……あんた一体どうしちゃったの?」と心配そうに問いかける。

「別にどうもしないけど……いのの知り合い?」

サクラはどうやら俺の事を忘れてるらしい。俺は目の前が真っ暗になった。
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