NARUTO/カカサク 短編①

見えないからね!?/四谷みこ(CV.雨宮 天)


鳥のさえずりで目が覚める気持ちいい朝。

「うーん、今日も頑張りますか」と目を開けたら、目の前にはカカシ先生の顔。

「えーーー!」

私は飛び起きて、カカシ先生のことを叩き起こす。

「ちょっと! 起きなさいよ!!」
「あと五分」

私はベッドから蹴り落とすと、「痛いな~」といいながら先生は起き上がる。

「おはよう、サクラ」
「おはよう、先生……じゃない! なんで毎回私の隣で寝てるのよ」
「う~ん、なんでだろうね。ちゃんと自分の部屋で寝てたんだけどね」

そうなのだ。先生は窓から侵入し、私の布団に潜り込むのだ。

「ちゃんと鍵閉めてるのに……」
「ピッキングは忍のたしなみだからね」
「どや顔しない!」

先生と言い合いしていると、下からお母さんの私を呼ぶ声が聞こえた。

「私は任務があるからもう行くから! 先生も私達とは別の任務なんでしょ」
「そうみたいだね~」
「そんな他人事な。とりあえず頑張ってね」

私は身支度を急いで整えると、階段を降りていった。
ふと振り返ると「行ってらっしゃい~」と先生がのんきに手を振っていた。


先生の相手をしていたら、集合時間ギリギリになってしまった。
待ち合わせ場所にはヤマト隊長、ナルト、サイが既にいた。

「遅いってばよ、サクラちゃん!」
「あんたこそ、最近早すぎるのよ」
「それにしても、ギリギリの時が多いけど、大丈夫かい?」
カカシ先生の相手をしてるんですとは言えず、「すみません……」と謝る。
「いや、時間にはきちんと来ているから問題ないんだけどね。あんな事があった後だし...もし何かあったら言うんだよ」
「? はい。ありがとうございます」

そう言うとヤマト隊長は優しく微笑んだ。

「じゃあ、今日の任務の説明をするね」

――――――――――――――――

「今日の任務も疲れた~」

ナルト達と別れ、家へ帰ろうとすると見知った人影を見つけた。

「カカシ先生! どうしたの?」
「よっ! 任務が早めに終わったから、サクラを迎えに来たんだ」
「そんな大丈夫なのに」
「最近、木ノ葉で女の子ばかり襲われる事件が起きてるから、一応ね」
「あぁ、連続切り裂き事件ね。怖いわよね〜。でも、私だって忍なんだから大丈夫!」
「サクラが前より強くなったのは知ってる。でも用心するには越したことないだろう」
「そうだけど……」
「それに俺がサクラと一緒に少しでも過ごしたいんだ」
「先生……仕方ないわね。私のこときちんと守ってよね」
「あぁ、必ず守るさ」

私達は手を繋ぎ、歩き出した。

帰る途中に「サクラ~!」といのに声を掛けられた。

「いの! どうしたの?」
「ちょうどよかった。これあんたにあげる」

そう言って小さな花束を渡してきた。

「急にどうして...」
「どうしてって...サクラ、まだあれから慰霊碑に行ってないじゃない。これ持って一度だけでいいから行ってきなさい」
「何でそこに私が行くのよ?」
「サクラ、あんたまだ...」

いのは悲痛な顔をして私を見る。

「...まぁ、とにかく行きなさい。それじゃあ、私は店に戻るわね。気をつけて帰りなさいよ!」

そう言っていのは身を翻していった。

いのの言っている意味が分からない。
それに気をつけてって...カカシ先生も一緒なんだから、大丈夫に決まってるじゃない。変なの。
そう思ってカカシ先生を見上げると、先生はニコッと笑う。私もそれにつられ同じように笑った。

2人で話をしているとあっという間に家についた。

「カカシ先生、ありがとうございました」
「どういたしまして、おやすみサクラ」
「おやすみなさい、先生……とか言って、また忍び込むんじゃないでしょうね」
「どうだろうね~」
「もうっ! 先生!」
「あはは~、それじゃあな」

先生は逃げるように去っていた。

――――――――――――――――

先生が私の布団に忍び込み、朝それに気づいた私が大騒ぎし、集合時間ギリギリになる。
そして、任務終わりには先生が待っていて、家まで送ってくれるという、そんな日々が続いていた。

――――――――――――――――

今日も無事に任務が終わった。
周りを見渡し、いつもいる人物を探す。

「今日はいないんだ……って、何落ち込んでるのよ、私」

ここ最近日課のようになっていたから、てっきり今日もかと期待してしまった。
先生だって忙しいんだから、と自分に言い聞かせ、寂しい気持ちに蓋をする。

「もう真っ暗だし、早く帰らなきゃ」

歩いていると、いつもと何かが違うことに気づいた。
辺りの景色は変わらないのに、やけに静かなのだ。
人通りはもともと少ないが、こんなに人がいないことがあっただろうか。

私はだんだん不安になっていく……。
なんでこういうときにいないのよ……カカシ先生。

「大丈夫、大丈夫」

言い聞かせて急ぎ足で歩いていると、肩をポンと叩かれた。
私はカカシ先生かと思い、「先生!」と振り返った。

その姿を見た瞬間、私は凍り付いた。
私の後ろにいたのはカカシ先生ではなく、にたっと笑う見知らぬ男だった。
そう判断した同時に、肩に鋭い痛みがはしる。

「えっ……」

見ると男の手は鉤爪で、それが私の肩に食い込んでいた。

「ぎゃーー!!!」

私は渾身の力を振り絞って、男から距離を取る。
あまりの痛さで膝をついて、肩を見る。
血が流れ出していて、私はすかさず反対の手で傷口を抑える。
男の方を見ると、男は笑みを浮かべたまま、私の血がついた鉤爪をなめる。
そして、徐々に近付いてくる。

逃げなきゃ……!
そう思うのに、体が恐怖と痛みで動けない。

どうしよう。
頭で必死に対応策を考えるが、思い浮かばない。

男が目の前にきて、爪を振りかざす。
私は目を瞑り、「カカシ先生!」と心の中で叫ぶ。
ドンっと音が聞こえ、衝撃も来ないので目を開けるとそこには待ちわびた人物がいた。

「遅くなってすまない」
「カカシ先生……!?」

カカシ先生の腕が男の胸を貫いていたのだ。
先生が腕を引き抜くと、男の体は倒れる。

「大丈夫かっ!」とカカシ先生は私のそばに駆け寄ってくる。

「うん。肩を少しやられたけど……」
「見せてみろ」

そう言ってカカシ先生は応急処置をしてくれた。

「私、情けないよね……。先生に大丈夫と言っておきながら、何にもできなかった」
「仕方ないさ。こいつは抜け忍で、いままでの事件の犯人だ」
「そうなんだ……」
「あぁ。とにかくサクラが無事で良かった」

そう言って、先生は私を抱き締める。

「先生、ありがとう……」

私は先生の胸に顔をうずめる。

「……いいか、サクラ。お前はこれからもっと強くなる。俺が守らなくてもいいような忍になる」
「当たり前でしょ。そのために日々頑張っているんだから」
「そうだったな」
「でも、それまで私を守ってくれる……?」
「うーん、どうだろうな」
「えっ、そこは守るとかじゃないの」

しんみりとした空気からガラッと雰囲気が変わった。

「ほら、俺忙しいから」
「守ってくれるって言ったじゃない!」
「今日、守ったじゃない」
「それはそうだけど……これからもよ」
「俺がいなくても大丈夫だよ、ナルト達もいるし」
「私は先生に守ってほしいのよ」
「そうしてやりたいのはやまやまなんだけどな、俺しばらく遠いところに行かなきゃいけないんだ」
「えっ……」
「だから、その約束はしてやれない。ごめんな」

そう言って、体を離すと申し訳なさそうな顔で私の頭をなでる。

「お前なら大丈夫。俺の教え子なんだから。俺が保証する」
「先生……」
「疲れただろう。少し休みなさい」

確かに緊張の糸が解けたのか、私の瞼は重かった。

「でも……次、目を開けたとき先生遠くにいっちゃっていないんでしょ」
「まぁな」
「じゃあ、起きてる」
「サクラ……」

先生は困った顔をするが、私は少しでも先生といたかった。

そんな私を再び先生は優しく抱き締める。

「ありがとな、そう言ってくれて」
「先生、お願いだから行かないで……」
「それは無理な相談かな。さっきも言ったでしょ、サクラなら大丈夫って」
「そうだけど……」

先生のぬくもりに安心したのか、私の瞼は意思に反してだんだん下がってくる。

「サクラ、離れていても俺はずっとお前を想ってる」

その言葉を聞いたと同時に、私は意識を飛ばした。

――――――――――――――――

目をあけるとそこは病室だった。

「サクラちゃん!」

ナルトが思いっきり抱きついてくる。

「目が覚めて良かった~」
「もう! 大げさね」
「2日間も眠ってたら、誰だって心配になるよ」
「サイ! あなたもいたのね。えっ、私そんなに寝てたの」
「うん」
「そっか……」
「それにしても、サクラが連続切り裂き事件の犯人に襲われたって聞いたときは驚いたよ。犯人が倒れてたのもびっくりしたけどね」
「私もまさか自分がとは思わなかったわ。でも、カカシ先生が助けてくれたの」

「「えっ」」

2人が驚いたようにこちらを見る。

「えっ、どうしたの?」
「サクラちゃん、いまカカシ先生って……」
「言ったわよ。ギリギリのところで先生が助けてくれたの。肩の応急処置をしてくれたのも先生よ」
「それはありえないよ、サクラ」
「何よ、サイ。私が嘘ついてるとでも」
「そうじゃないけど……でも、サクラ。君は誰かと間違えていないか?」
「私が先生を間違えるはずないじゃない! 2人ともおかしいわよ!」

そんな私をナルトは泣きそうな顔で、サイは真剣な表情で見ている。

「おかしいのは君だよ、サクラ」
「サクラちゃん、カカシ先生は2か月前に殉職したんだってばよ」
「えっ……なにそれ...またまた~。2人して私をからかってるんでしょ」
「冗談でオレたちはこんなうそつかないってばよ」
「認めたくないのは分かる。でも確かに死んでるんだ。君も最期を看取ったじゃないか」
「なにそれ、うそよ。……だって、つい最近まで私のところにいたのよ。私の布団に潜り込んでいて、何度それを注意したことか。それに毎回任務終わりに家まで送ってくれたもの。ナルト達も見たわよね?」
「僕は見ていない。いつも君一人で帰ってたよ。そうだろ、ナルト」

ナルトは首を縦に振る。

「うそ! いまだって長期任務に出てるんでしょ? 遠いところらしいけど...。そうだ! 師匠に確認すればいいのよ。そしたら先生が長期任務に出てるって分かるはず」

私が立ちあがろうとすると、ナルトは私の肩を掴み、それを止める。

「サクラちゃん!!! お願いだから、現実を見てほしいってばよ!!! カカシ先生は死んだんだ!!!」

悲痛な顔で叫ぶナルトをみて、私は言葉を失った。

「先生が死んでから、サクラちゃんはすっかり塞ぎ込んで部屋から出てこなかった。オレやサイ、いの達が迎えにいっても頑なに出ようとしなかった。でも、しばらくしたら何事もなかったように出てきたから、ビックリしたってばよ。やっと立ち直ったと思ったのに...」
「君は一度もおかしいとは思わなかったかい?」

私は過去の記憶を振り返る。

なぜヤマト隊長は「あんなことがあった後だし...」と言ったのか。
なぜ先生と2人でいたのに、いのは私にしか話しかけず、慰霊碑に行けと言ったのか。

確かに思い返せば、おかしな点はいくつも出てくる。

「そんな...じゃあ、襲われた私を助けたのは...?」
「それは分からない」

あれは確かにカカシ先生だった。
それとも誰かが変化した...?
でもカカシ先生に撫でてもらった手の感触、抱きしめられた時に感じたぬくもりは、間違いなくカカシ先生のものだった。

私がしばらく放心してると、ナルトが言いづらさそうに口を開いた。

「たぶんだけど、サクラちゃんを助けたのはカカシ先生だったんじゃないかな」
「君まで何を!?」
「犯人についた傷、あれは雷切の傷跡に似てた。それに、夢でカカシ先生に会ったんだ。サクラちゃんを頼むって言われたってばよ。カカシ先生は切り裂き事件の犯人からサクラちゃんを守るために現れたんじゃないかな。それでその役目が果たせたから現れなくなった、オレはそう思う」

私の瞳からは涙が溢れていた。

「サクラちゃん、ちゃんと向き合おう。カカシ先生のためにも」
「ナルト...うん...」

私が頷くと、ナルトは少し安心したような顔で微笑んだ。

――――――――――――――――

退院したあと、ナルトと2人で木ノ葉の英雄の名が刻まれた慰霊碑に来ていた。そこには「はたけカカシ」の名前も刻まれていた。

「やっぱり本当だったのね...」

私はカカシ先生の名前を指でなぞることで、改めて先生の死を実感する。

「先生、私もっと強くなるから。先生が守ってくれたこの命、大事にするから。そして、私が精一杯生きて役目を終えた時に先生に会いにいくからね」
「その時はオレも一緒だってばよ! もちろんサスケも」
「そうね。そしたらサイとヤマト隊長も入れて、新旧7班で集まりましょう!」

私とナルトは慰霊碑の前で誓い合った。

――――――――――――――――

■後書き■

本当は、魂だけになったカカシ先生が調子に乗ってサクラちゃんをストーカーしまくり、サクラちゃんが必死に除霊しようとするラブコメチックな話にしたかったんですが、私には無理でした。すみません。
カカシ先生のほかにサスケくんやナルトとかも増えるといいよね。サクラちゃん、大変!


また、文章力がなく、分かりづらいと思うので、ここで少し内容の補足します。

ここに出てくるカカシ先生は幽霊です。周りの人には見えていないし、声も聴こえてません。サクラちゃんにだけ、見えて会話もでき触れることができます。
なぜ、できるのか。それは愛の力です。

なぜ、サクラ以外に触れられない幽霊の先生が犯人を倒す事ができたのか。
これも愛の力ということにしといてください。 

(話の前の簡単な時系列)

カカシ先生、殉職

サクラ、ショックで部屋から出てこない

カカシ先生、サクラが心配すぎて(事件のこと含め)、魂だけで姿を現す。
サクラ、驚く。嬉しさのあまり先生が殉職したことを忘れる。

サクラ、部屋から出て日常生活に戻る。

以上です。
ありがとうございました!
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