NARUTO/カカサク 短編①

moment/Vivian or Kazuma

先生と付き合って約3年。
同棲を始めて約1年。
来週の日曜日は記念日。

私、春野サクラは記念日に逆プロポーズします!

忙しい先生は日曜日も仕事だけど、夜には帰ってこれるらしいし、私もなんとか休みをもぎ取った。記念日だからと先生にお洒落なレストランを勧められたけどそれを断り、家で過ごす事を提案。それも逆プロポーズのため。私は日曜日の決戦の日に向けて、準備を進めた。

そして、あっという間に日曜日の夜。先生の好物はもちろん、普段は手が掛かるのであまり作らない料理を作ってみた。

「これで準備は完璧ね」

準備が終わったと同時に、ドアが開く音がする。先生が帰ってきたみたいだ。私はすぐさま玄関に向かった。

「お帰りなさい、先生!」
「ただいま、サクラ」

私達は日常になったおかえりのキスをする。その時に先生が花束を持っているのに気づいた。

「その花束は?」
「サクラに。今日は記念日だからね」

そう言って私に差し出してくる。

「ありがとう!」

私は花束を受け取り、それを潰さないように先生に抱きつく。

「喜んでもらえて良かった」
「私も先生のために料理を頑張ったの。早く食べましょう」
「それは楽しみだな」

そう言って先生は着替えにいった。見送った私は深呼吸をする。

「大丈夫。やるのよ、サクラ」

自分に気合いを入れ、先生からもらった花束を食卓に飾る。そして、着替えを終えたらしい先生と食卓についた。

「「いただきます」」

先生が私の作った料理に手をつける。私は少し緊張しながら、それを見守る。普段あまり作らない料理だから、反応が気になるのだ。

「うん、美味しい」

先生の言葉にほっとし、私も食べ始める。時々会話をしながら、穏やかな時間が流れていく。

「どれも美味しいな。最初の頃は野菜もキチンと切れなかったのに。いや〜、成長したね」
「仕方ないじゃない。先生と付き合うまでまともに料理をしたことなかったんだもん」
「卵焼きがダークマターになった時は驚いたよ」
「もうその事は忘れて……」
「忘れられないよ。サクラが初めて俺に作った料理だからね」
「もうっ……!」

ほとんどの料理も食べ尽くした頃、私はそろそろかなと話をきりだす。

「あのね、先生」
「うん?」

私の改まった表情を察したのか、先生も姿勢を正した。

「先生と付き合って3年経つじゃない。何かあっという間だったよね」
「うん? そうだね」
「最初の頃はどうなるかなーって思ったんだけど、案外続いたというか。いつのまにか先生がいるのが当たり前になっていたというか」

違う。言いたいのはそう言うことじゃなくて。先生が不思議そうな顔で私も見ている。その気持ち分かる。私も自分で何言ってるか分からないもの。最初に用意していた言葉はとっくに忘れてしまっていた。ええい、もうこうなったら勢いよ!

「えっと、つまりこれからも私とずっと一緒にいてほしい……だから、私と結婚してください!」

言った。言ってしまった。もう戻れない。私は握りしめた拳に力を入れ、先生の様子を見る。先生は私の言葉に驚いてるようだった。2人の間に沈黙が流れる。どのぐらいの時間が経ったのだろう。たぶんそんなには経っていないはずなのに、私には無限の時間が流れているように感じた。

「……ごめん」
「えっ」

まさかの否定の言葉に私は驚きを隠せなかった。もちろん不安な気持ちはあったけど、断られるはずはないとどこか確信していた気持ちがあったから。いつのまにか私の頬には涙が伝わっていた。

「えっと、それは私と結婚したくないってこと?」

自分でも言葉が震えてるのが分かる。でも、聞かずにはいられなかった。

「それは違う!」

そう言って先生は立ち上がり、私を思いっきり抱きしめる。

「じゃあ、何で。私のこと、好きじゃないから結婚したくないんでしょ」

分からない。私のプロポーズを断ったのに、抱きしめる先生が分からない。先生の言った“違う”の意味が分からない。

「分からないよ。分からないよ、先生」
「違うんだ」
「だから、何が違うのよ」
「ごめんって言ったのは、サクラからプロポーズをさせてしまったこと。本当は俺から言うべきだったのに」
「えっ?」

私は先生を見上げる。先生は優しい顔をしながら、私の涙を拭う。

「プロポーズは俺からしたかったんだ。だから、さっきはすごく驚いて。それと同時に申し訳なくなった。だから、謝ったんだ」
「そうだったんだ」
「ごめんね、サクラ」
「ううん、私こそ」
「それで改めて俺からさせてくれないかな?」
「えっ?」

先生はポケットから指輪を取り出すと、私の薬指にはめる。

「先生。これって」
「俺も今日プロポーズしようと思ってたんだよね」
「うそ」
「本当。先に越されちゃったけどね」
「それは、ごめんなさい」
「謝らないで。俺は嬉しかったんだから」

そう言って、先生は私の手を持ち上げ、指輪にキスをする。

「愛してるよ、サクラ。俺と結婚してください」
「はい!」

そして、私達は再び抱きしめ合った。
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