NARUTO/カカサク 短編①

君じゃなきゃダメみたい/オーイシマサヨシ


激動の大戦も終わり、俺は六代目火影に就任した。
忙しい毎日を過ごすうち、俺の中に一つの感情があることに気付いた。

それはサクラを好きだということ。
いつからかなんて分からない。
気づけばいつもあの子のことを考えている。

でも、この気持ちを伝えていいのか。
もし断られれば、いままでの関係が崩れるかもしれない。それは絶対に嫌だ。
このままだったら、サクラは他の男と...。そんなことは絶対に許さない。
俺は日々悩んでいた。悩みすぎていたのかもしれない。


今日も執務に追われてると、ナルトが任務完了の報告にやってきた。
報告を終えると、あいつは机に置いてあるお菓子を頬張り、のんびりくつろいでいる。

「おまえな、報告が終わったなら、いつまでもここにいないで帰りなさいよ」
「だって、今日は家に帰っても誰もいないんだもん。それにサクラちゃんには断られたし……」
「サクラに?」
「うん。今日はヤマト隊長が家にくるからダメなんだって。何か浮かれてたってばよ」
「ヤマトがサクラの家に!?」

サクラは最近一人暮らしを始めた。
その家にヤマトが……しかも、浮かれているだと。
その時の俺は疲れていた。だから、思考がぶっとぶのも仕方ない。

そういえば、最近ヤマトに彼女ができたって噂で聞いたな。
もしかして、サクラとヤマトは……。
いてもたってもいられず、執務室を飛びだした。

「カカシ先生!? どこに行くんだってばよ!!」

シカマルが席を外していて良かった。
ナルトの声を無視し、向かうはもちろんサクラの家だ。


「サクラーーー!!!」

俺はサクラの家の前までくるとドンドンと扉を叩いた。

「もう! どこのどちら様?」

苛立ったようにサクラはドアを開け、俺はその隙間をすり抜け部屋に入った。

「え? 先生!? ちょっ、何勝手に入ってるの?」

戸惑うサクラを無視し、あらゆるところのドアを開け、ヤマトがいないか確かめていく。

一通り確認したが、ヤマトはいなかった。
とりあえず安心して、その場に座り込んだ。
全速力で来たため、息が切れている。

「先生、いったい何なのよ。いきなり来たと思ったら、勝手に中に入って……」

あきれた様子のサクラに俺は呼吸を整えて言った。

「ヤマトがサクラの家にいるって聞いて……」
「ヤマト隊長? いるわけないじゃない。そんな約束してないし」
「でもナルトがそう言ってたぞ」
「ナルト? ……あっ!もしかして」

そう言うとサクラはニヤニヤし始めた。

「なんだよ、その顔」
「なるほどね……ふふん。そうなのね」
「だからなに」
「ヤマトは宅配便よ」
「宅配便って……。もしかしてあの動物のマークの」
「そう。前に注文していた医学書が今日配達らしくてね、それで早く帰ってきたの」
「うそだろ……」
「うそじゃないわ。中々手に入らないものだったから、来るのが待ち遠しかったのよ」
「だからナルトはサクラが浮かれてたって」
「うん。ナルトにはヤマトとしか言ってないから、隊長と勘違いしたのね」

俺は言葉を失った。
俺の勘違いだったのか。いや、ナルトのか。
サクラはにんまりとした表情を崩さない。

「先生、もしかして私とヤマト隊長のこと勘違いした?」
「いや~、その……」
「私がヤマト隊長と2人っきりで過ごすのが嫌なの?」
「まぁ、どっちかっていうと……」
「もしかして先生、私のこと好きなの?」

俺が思わず後ずさると、サクラは真剣な顔をしてその分近づいてくる。
背中が壁に当たる。もう逃げ場はない。
いや、逃げることは俺の力をもってすればもちろん可能だが、もうこうなったら素直に白状するしかなかった。

「そうだよ。全部サクラの言う通り」

俺がそう言うと、サクラは顔をほころばせ抱きついてきた。

「先生、かわいい~!」
「ちょっ、いい大人に可愛いはやめてよ」

恥ずかしさのあまりサクラを離そうとするが、思いのほかサクラの力が強かったため、俺は観念し抱き締め返すことにした。

「うふふ、嬉しいな~。先生、なかなか分かりやすい行動に移してくれないんだもん」
「そりゃあ、この歳になると行動的になるのは難しいでしょ……えっ? サクラは俺の気持ち知ってたの?」
「うん。まぁ、確証はなかったけどね」

再び言葉を失った。

「だって私が男の人と2人でいると、何かしら邪魔してくるじゃない」

俺以外の男と2人きりになんてさせるわけないでしょ。
おかげで仕事を途中にして抜け出すから、シカマルにはよく怒られたけど。

「それにやけに私が当番の日に診察室にくるでしょ。ほかの人に聞いたら、先生が来たことないって言うし……」

サクラがいる日を調べて行ってるからね。

「私が仕事で遅くなると、偶然通ったからついでにって、家まで送ってくれるじゃない。偶然にしては会いすぎでしょ」

そりゃあ、サクラが心配だからね。

そう言われると確かに分かりやすいな、俺。
もうそこまでばれてるならと、俺は自分の気持ちに素直になることにした。

「俺はサクラが好きだよ。で、サクラはどうなの?」
「どうって?」
「俺のことどう思うの?」
「分からない?」
「うん」
「好きに決まってるじゃない!」

そう言って体を離すと、俺のマスクを外し、キスをしてきた。

「私、執務室によく報告書を出しに行ってたでしょ。あれ、本当は私じゃなくていいの。先生の顔が見たくて自分で行くようにしてたの」

確かにほかの人よりサクラが訪れる回数は多かった。

「それに先生の体調管理と称して、お弁当をよく作って持っていったでしょ。私、ほかの人にそんなことしないわよ」

サクラのお弁当、美味しかったな。

「去年のバレンタインデーに手作りチョコあげたでしょ。あれ先生にだけ手作りだったのよ」

そういえば、それを知ったナルトに羨ましがられたっけ。

「なんだ……俺たちお互いにこんなに分かりやすかったのか」
「うふふ、そうみたいね。これからはもっと分かりやすい愛情表現でお願いしますね、先生」
「あぁ、分かった。サクラもね」
「もちろん!」

そして、今度は俺からサクラにキスをした。
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