NARUTO/カカサク 短編①

Believe/玉置成実

今日もネコの世話のためにカカシ先生の家へ向かう途中。道端のゴミ置き場で何か動いているのを見つけ、私は興味本位で近付く。近付いてみると、薄汚れた1匹のネコがゴミをあさっていた。

「ニャー」

私に気づいたそのネコは私の方へ向かって、縋るように鳴いた。体はやせ細っており、どうやらお腹がすいているようだった。先生のネコにあげようと思っていたおやつを差し出すと、すごい勢いで食べ始める。ふと足を怪我しているのに気が付いた。首輪もついていないし、この様子から野良だろうと予想した私は、食べ終わったタイミングを見計らってネコを抱き上げた。抵抗されるかと思ったけど、案外大人しくしていた。

「いい子ね」

私はネコの頭を撫でると、急いで先生の家に向かった。先生の家に着き、私はさっそく事情を先生に話す。そして、先生の了解を得た私は、ネコをお風呂に入れてあげると、足の手当も一緒にする。先生も手伝ってくれようとしたけれど、いままで大人しかったネコが激しく抵抗したため、私一人ですることに。どうやらネコは男の子のようだ。一通り終えると、灰色の綺麗な毛並みが姿を現した。

「へぇ~、綺麗。よく見ると顔もシュッとしてて、イケメンじゃない。足のケガも大したことなかったし、良かった~」
「中身は狂暴だけどね」
「私にはそんなことないのに」
「で、どうするの?」
「どうするって?」
「そのネコ」
「飼うに決まってるじゃない」
「どこで?」
「ここで」
「えっ!?」
「大丈夫。私がきちんと世話するから」
「でも、俺の家は既に1匹いるし……“サクラ”もどう思うか……」
「私の家では無理だし、1匹も2匹も変わらないわよ。それに、ネコの“サクラ”も問題ないみたいよ」

私が指差す方向を先生が見る。そこには、いつのまにか仲良さそうにする2匹の姿があった。

「ねっ! もうすっかり馴染んでいるみたいよ」

私が満面の笑顔を見せると、先生はため息をついた後に「分かったよ」と了承した。

「ありがとう、先生! そういうことなら名前を決めなきゃね」

私が近づくと、2匹とも私の方に寄ってくる。う~ん、可愛い! 私は2匹を撫でながら、灰色のネコの左目に傷のような模様があるのに気付く。まるで先生みたいだ。

「決めた! グレーの毛並みだし、左目に傷のような模様があるから“先生”って名づけることにするわ」
「え~、何で“先生”なの」
「先生だって、私の名前をつけたじゃない」
「うっ……」
「“カカシ”よりはいいでしょ」

その言葉に先生は何も言い返せなくなる。

「そういうことだから、よろしくね。先生!」

私がそう言うと、“先生”は「ニャー」と返事をした。



それから私はより一層カカシ先生の家に通い、ネコの世話に励んだ。“先生”と“サクラ”は、ずっと前から一緒にいたんじゃないかというぐらい仲が良かった。カカシ先生が“サクラ”にちょっかいを出すと“先生”がシャーと怒る場面があったり、毎晩寄り添って寝ていたり、グルーミングをしあったり。

「本当に仲が良いわね~」
「まぁね。でも、相変わらず“先生”は俺にだけ厳しいけど」
「あはは」
「それに“サクラ”が俺に甘えようとすると“先生”が必ず邪魔をするんだよね」
「へぇ~」
「まったく。心が狭いよね〜」

私はくっついて眠る2匹を見ながら、ソファで寝転び寛いでいた。先生は、ソファを背もたれに座り本を読んでいる。会話が途切れ無言の時間が続くが、気まずくはない。むしろ心地良い穏やかな時間が流れる。しばらくすると、ネコの“先生”が目を覚ましたらしく、私の所に来て甘えてくる。

「うふふ、可愛いわね~」

“先生”に夢中になっていると、本を読んでいたはずのカカシ先生が立ち上がり“先生”を私から引きはがす。“先生”は不満そうな顔をするも、寝ている“サクラ”の元に戻っていった。

「ちょっと! いきなり何するのよ!」
「俺を構わないサクラが悪い」
「だって、先生は本を読んでいたじゃない」
「もう読み終わった」

そう言ってカカシ先生は、ソファに寝転んでいる私の隣に入ってこようとする。このソファには2人が寝転ぶスペースはもちろんない。

「ちょっと、先生! 狭い!」
「大丈夫大丈夫。それより眠くなってきたから、お昼寝しよーよ」

カカシ先生は私を抱き込むと、目を閉じる。私はカカシ先生の胸を押し、離れようと抵抗するが、微動だにしない。早々に諦めた私は、カカシ先生の胸に頭を預ける。まったく、“先生”のこと言えないじゃない……。私は心の中で悪態をつきながら、カカシ先生の温もりに安心していつのまにか眠りに入っていった。
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