NARUTO/カカサク 短編①

*ENAMEL/シド(執事カカシ&お嬢様サクラ)

「カカシ! 編み込みして!」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はい」
「今日も可愛くしてよね」
「サクラ様は何もしなくても可愛いですよ」
「編み込みするのがめんどくさいからそう言っているのバレバレなんだからね」
「あはは、バレてましたか。さすがですね」
「何年一緒にいると思ってるのよ」
「サクラ様が生まれた時からですから、12年ですかね」
「もうそんなに経つのね……」

そんな他愛もない会話をしながら、カカシは私の髪を手に取ると、器用に編んでいく。本当は自分でも編み込みできるのだけど、カカシと少しでも一緒にいたくて私は今日も嘘をつく。それにカカシに髪を触られるのは気持ちいいのよね。調子に乗るから本人には言わないけど!



*レゾンデートル/ナイトメア(人間カカシ&人魚サクラ)

私は水を張った陶器でできたでかい入れものに入ってる。どうやら“バスタブ”というらしい。縁に頭を預けながら手当てされた尾鰭を見ていると、私をここまで連れてきてくれた先生(他の人間がそう呼んでいた)がそばにやってくる。

「怪我が大したことなくて良かったよ」
「あなたのおかげよ。それにしても人魚の私を助けるなんてあなた変わってるわね」
「人魚とか関係ないよ。俺は君だから助けたんだ」
「ふーん」
「あれ、今のドキッとしなかった?」
「別に」
「あら、それは残念」

すまし顔でそう言ったが、実はドキっとしていた私は案外ちょろいかもしれない。だって仕方ないじゃない。男の人とこんな風に話したのは始めてなんだもん。でも、人間に恋なんてしちゃダメなのに……。私は自分の気持ちをごまかすように水の中に潜った。



*TWISTED HEARTS/畠中祐(探偵カカシ&犯罪者サクラ)

俺とサクラは向かい合っていた。サクラの背後には崖があり、一歩下がれば海へと落っこちるだろう。

「サクラ。お前が犯人だったんだな……」
「さすが先生。名探偵といわれるだけあるわね」
「どうしてあんなことしたんだ」
「どうしてって? そんなのアイツらに復讐するために決まってるじゃない」
「復讐って……。お前、そんなことする奴じゃなかっただろ」
「あの時逃げた先生に何が分かるの? ずっと私のそばにいてほしかったのに」
「それは……」
「先生がいなくなってから、私がどんな思いで過ごしてきたか分かる? 分からないよね、だっていなかったんだもん」
「サクラ」
「でも、もういいの。全て終わったことだもの」
「お前まさか……」
「さよなら、先生。愛してたよ」

そう言ったかと思うと、サクラはすかさず崖から飛び降りる。俺はそれを止めるために必死に手を伸ばす。お願いだ、間に合ってくれ! まだ俺の気持ちを伝えてないのに……!



*Doubt&Trust~ダウト&トラスト~/access(勇者カカシ&生贄サクラ)

頑丈な鉄の扉を壊し、部屋の中に入ってきたのは私が初めて愛した人だった。

「カカシ様、どうしてここに……」
「サクラ、お前を助けにきた。早くここから逃げよう」
「ダメよ。私が逃げたらこの国の人たちに不幸が降りかかってしまう」
「だからってお前が犠牲にならなくてもいいだろう。お前は今まで国のために生きてきた。今度は自分のために生きてほしいんだ」
「でも……」

警備の人達の声が遠くに聞こえる。ここに来るのは時間の問題だ。カカシ様もそれに気付き、私に手を差し出す。

「さぁ、早く!!」

手を伸ばそうとして、私は寸前でそれを止める。本当にいいのだろうか。迷いに気づいたカカシ様が、私を抱き上げる。

「えっ!」
「ごめん。全部俺のせいにしていいから」

そう言って私を抱えたまま部屋を出る。戸惑いつつもどこかホッとしている自分に気付いた私はカカシ様の服を握り、無事に逃げ切ることができますようにとひたすら願っていた。



*only my railgun/fripSide(指揮官カカシ&戦闘員サクラ)

戦闘を終えたサクラを俺は出迎える。

「お疲れ様、サクラ。今日もお前が討伐数No.1だ。さすがだな」
「当たり前でしょ。先生の教え子なんだから」
「でも、あの戦い方はサクラ自身にもダメージがくるから、別の戦い方を……」
「大丈夫よ、少しぐらいのダメージどうってことないわ」
「少しじゃないだろう、腕を怪我してる」

サクラの腕を取ると、袖をまくる。そこには深い傷が出来ていた。

「やっぱりな」
「かすり傷よ」
「どこがかすり傷だ。とにかく治療するぞ」

“大丈夫なのに”とふてくされるサクラを無視しつつ、俺は手当てをする。

「お願いだから、あまり無理しないでくれ」
「そんなこと言われても、平和のためには私達が戦うしかないじゃない。それに戦闘命令を出したのは先生でしょ」
「それはそうだけど、無茶をしろとは言ってない」
「だって少しでも多くの敵を倒したかったんだもん」
「だからって……」
「私は早く戦いを終わらせて、先生とのんびり暮らしたいの! そのためならどんなことでもするわ! 多少の怪我だって平気!」

サクラはそう勢いよく言い切ったかと思うと、「手当てありがとうございました!」と言って、部屋を出ていく。

俺だってそう思ってるよ、でもこの戦いが終わる気配は一向に見えない。サクラの去った後を見つめながら、俺はただ拳を握りしめていた。
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