NARUTO/ナルサク 短編 

アヤナスピネル/IDOLiSH7

「サクラちゃん! これあげるってばよ!」
「ありがとう」

そう言って渡されたのは一輪のガーベラ。ナルトは渡したことに満足したのか、「それじゃあまた明日ってばよ!」と足早に去っていく。

私は渡された一輪のガーベラを見て、“これでもう何回目になるだろう”と考える。最近のナルトはことあるごとに私に花をプレゼントしてくれる。それはお店で買ったであろう花だったり、はたまた道端に生えているよく分からない花だったり、その種類は様々。最初は花言葉で私に伝えたいことがあるのかなと思い、意味を調べてみたりしたけど、どうやらそうではないらしい。まぁ、あのナルトが花言葉とか知ってるわけないか。では、なぜ私に花をプレゼントしてくれるのか。たまらず少し前に一度理由を聞いたことがある。

「ナルト。なんでいつも私にお花をくれるの?」
「なんでって……サクラちゃんは迷惑?」
「そういうわけじゃないけど……お花は好きだし」
「なら良かったってばよ!」

と私の欲しい答えはくれなかった。

「まぁ、お花はもらって嬉しいし、別にいいか」

悩むのも無駄だと思い、私も自分の家へ帰るべく、足を進める。その途中で、偶然カカシ先生に会った。

「サクラ!」
「カカシ先生」
「あれ、可愛い花持ってるね。買ったの?」
「ううん、ナルトにもらったの」
「ナルトか。確かに何回か渡しているのを見たような……」
「先生。ナルトがお花をくれる理由分かる? 本人に聞いても納得のいく答えが返ってこなくて」
「分からないな~、ん? もしかしてあの時のことが関係があったり……」
「えっ? なになに?」
「いや、あれがきっかけか分からないけど、この前こういうことがあって……」

カカシ先生はその時のナルトとの会話を教えてくれた。

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「サクラちゃん、元気ないってばよ……」
「まぁ、任務であんなミスをしたばかりだからね。俺もきつく言い過ぎたかもしれないね」
「どうしたら、笑ってくれるかな?」
「う~ん、とりあえずそっとしといたほうがいいんじゃない?」
「でもよ~! 何かしてあげたいってばよ」
「あんまり刺激しない方が……。とりあえず、花とか渡してみたらいいんじゃん? 女の子とか好きでしょ、たぶん」
「なるほど! さすがカカシ先生! さっそく、花を探してくるってばよ!」
「あっ! おい! ナルト!!……行動早すぎでしょ」

―――――――――――――――――

「その出来事って、もしかして……」

私は同じ日であろう出来事を思い出し、カカシ先生に話すことにした。

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任務でありえないミスをして一人で落ち込んでいた時。ナルトがやってきたんだっけ……。

「サクラちゃん、大丈夫?」
「見れば分かるでしょ。大丈夫じゃないわよ。それより何? いまは一人にしてほしいんだけど」

我ながら可愛くない反応をしてしまったと思う。でも、ナルトは苦笑いをしつつ私のそばにやってくる。

「サクラちゃん……一人になりたい時にごめん。でも、これを受け取ってほしいってばよ」

そう言ってナルトは黄色の菊の花を差し出す。

「これ……」
「ここから少し離れたところで見つけて、すごく綺麗だからサクラちゃんにも見せたいと思って取ってきたんだってばよ!」

ナルトは照れくさそうに笑う。

「……あんた。その花、なんの花だか分かってる?」
「ん? いいや。ただ、綺麗で色も黄色だったからサクラちゃんが元気になるかなと思って」

私は呆れたようにため息をつく。菊の花は本来贈り物には向いてない花。ナルトはそれを分からず、綺麗だからという理由で私に渡してきたという。ただ、私に元気になってほしいという思いだけで。

「……そうよね、あんたってそういうやつよね」
「え? もしかして、気に入らなかった?」
「ううん、なんでもない! ありがとう! あんたのおかげで元気出たわ!」
「それなら良かったってばよ!」
「でも、私以外にこの花は渡しちゃだめだからね」
「えっ、どうして?」
「いいから! 私の言うことは聞いといたほうがいいわよ」
「よく分からないけど、分かったってばよ」
「ならよし!!」

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「……っていうことがあったのよ。ナルトが花を渡してくるようになったのは、それからだわ。でも、私を元気づけるために花をくれたのは分かったけど、どうして今もくれるのかしら?」
「それは分からないけど……サクラは花をもらって嬉しい?」
「もちろんよ! 見ていて癒されるし。それに、毎回違うお花で飽きないわ」

私は手元にあるガーベラを見る。綺麗なのはもちろん、ナルトが一生懸命に私のためにこの花を選んでくれたんだと思うとより特別に思えてきて、思わず笑みがこぼれた。

「……俺、分かったかもしれない」
「ナルトが私にお花をくれる理由が?」
「うん。たぶんだけど合ってると思う」
「えっ、なになに?」
「う~ん。言ってもいいけど、もう見れなくなりそうだしな~」
「何がよ?」
「……うん、やっぱり言うのはやめとく。いずれ理由が分かると思うから、それまではこれまで通り受け取ってあげて。それじゃあ!」
「えっ、ちょっ……」

カカシ先生は一人で納得したかと思うと、足早に去っていく。

「ナルトもカカシ先生も帰るの早すぎ。いったいなんなのよ……」

私はその場にしばらくポツンと取り残されていたのであった。
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