NARUTO/カカサク 短編①

眠る君の横顔に微笑みを/三枝夕夏 IN db


今日の任務は森でのペット探索。
大名の可愛がっていたウサギが逃げ出したらしい。

「よし、お前ら手分けして捜索な。ナルトは東、サスケは西、サクラは北、俺は南だ」

そういって先生が号令を出し、私たちは四方に散った。

正直連日での任務で疲れてるけど、任務は任務。
しっかりこなさなきゃと、私は自分に気合を入れて、あたりを注意深く捜索した。
そして、足跡らしきものを発見。
その後を静かに辿っていると、なんとターゲットのウサギが目の前にいた。

私は気配を殺し近づき、手を伸ばした。
思ったより大人しく捕まってくれたウサギに一安心した私は、ふと花の香りがするのに気づき周りを見渡した。
あたり一面には鈴蘭が咲き誇り、「うわ~、綺麗」と思わず目を輝かせた。

しばらく見とれ、ふとウサギに目を向けると寝ているのに気付いた。
それを見た私も疲れからか眠気が襲ってきて、いけないとは思いつつも目を閉じた。

――

捜索開始してから数時間。
集合時間になり最初の場所に戻るとナルトとサスケがいたが、時間をきちんと守るサクラがいない。

「お前らサクラはまだきてないのか?」
「きてない」
「珍しいよな。あのサクラちゃんが集合時間に遅れるなんて」
「……お前らここにいろ。俺が探してくる」

そう言い残し、俺はわずかな焦りを携え、北へ向かった。
おそらくサクラはここを通るだろうというルートを辿っていくと、鈴蘭が咲く花畑に出くわした。
ピンクのものを遠くに見つけ近づくと、サクラと今回のターゲットであるウサギが気持ちよさそうに寝ていた。

「まったく……こんなとこで何してんのよ」

とりあえず無事なサクラに安心した俺は、隣に腰かけた。
気持ち良さそうに眠るサクラの目の下にあるクマを見つけ、俺はそっと指でなぞる。

「最近、任務ばっかりだったしな。ご褒美に餡蜜でもおごってやるか」

この後の予定を決め、サクラを起こそうとした瞬間、「せんせい……」とサクラが呟いて微笑んだ。
起きたのかと思ったが、目は相変わらず閉じている。どうやら寝言だったようだ。
俺はその笑顔に引き寄せられるように、思わず顔を近づけ唇を寄せた。

「なにやってるんだか」と自分の行動に呆れながらも、心は穏やかだった。
きっとこの時からだろう。
サクラへのある思いが芽生え始めたのは。

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今日はサクラの引っ越しの手伝いをしていた。

「サクラ~、これはどこに運べばいいの?」
「えっとね、そこの部屋にとりあえず置いといて」
「りょーかい」

俺は言われた通りに運び込む。
サクラの荷物は医学書などもあるため量が多く、思ったより重労働だった。
一通り運び終えると、サクラは俺にお茶を入れてくれた。

「ありがと、先生。助かったわ」
「どーいたしまして。サクラのためだからね」
「うふふ。あとは中身を出して、整理して終わりかな」
「そうだな」
「それにしてもいよいよ今日からか。先生と同棲なんてなんか緊張するわ」
「いままでしょっちゅう俺の部屋に来てたんだから、そんな変わらないでしょ」
「それもそうね。でも、なんかあっという間よね~」
「ほんとにね……ここまでいろいろあったな」
「そうね。先生がデートをすっぽかしたり、綺麗な女の人と浮気したりしてね」
「ちょっと、それは任務だったんだから仕方ないでしょ。それに浮気はしてません」
「それはそうだったけど……私、すごくショックだったんだからね」
「だから、悪かったって。でも、サクラも男と仲良くしてたよね」
「患者さんに優しくするのは当たり前でしょ」
「そうだけどさ、俺も嫌だったんだからね」
「ごめんなさい、気を付けるわ」
「そうしてくれるとありがたいね……でも、その分嬉しいこともたくさんあったけどね」
「うん。先生が101本のバラをプレゼントしてくれたこととかね」
「あれ、すごく恥ずかしかったんだからね。まわりには色々からかわれるし」
「あはは。ほかにも一緒に見た満開の桜が綺麗だったな~」
「そうだね、今年も見に行こうか」
「うん! ……あっ、私。そろそろ行かなきゃ」
「もうそんな時間か。あとは俺がやっとくよ」
「ありがとう。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」

俺はサクラを見送ると、少しでもサクラの負担を減らしてやろうと思い、段ボールのフタを開けた。

――

私が用事を済ませ戻ってくると、家の中はしーんとしていた。

「ただいま~。先生?」

先生を探すと、段ボールに囲まれた中で先生は寝ていた。

「もう、こんなところで寝たら風邪ひくわよ」

私はブランケットを持ってきて、先生にそれをかける。
そして、先生が何かを持っていることに気づく。

「これって……」

手に取って見ると、それは4人で撮影した7班の写真だった。
周りを見渡すとアルバムや写真が散らばっている。
おそらくだが、荷物の整理中にアルバムを見つけ、それを懐かしんでいるうちに眠ってしまったのだろう。

私もそばに座りアルバムを眺めていると、先生の体が動いたのが分かった。

「先生?」

起きたかと思ったが、どうやらまだ寝ているらしい。
その時にブランケットがずれていたので直そうとすると、急に腕を引っ張られ「サクラ……」と言ってそのまま抱き締められる。

「先生、起きてるでしょ?」

私が無理やり顔を上げ確認すると、先生は目を閉じて気持ちよさそうに寝息を立てている。
しばらくしてもそれが変わらないため、どうやら無意識の行動だったらしい。

「仕方ないわね……」

私は先生の気持ち良さそうに眠る顔に唇を寄せた。
今日から先生との新たな日々がはじまる。
夢の中でも先生に会えるといいなと願いながら、私は先生の胸元に戻り目を閉じた。
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