NARUTO/カカサク 短編①

恋/星野源

「サークラ! はい、これ」

そう言って先生から渡されたものはピンク色のマニキュアだった。

「綺麗~! 先生、いつもありがとう!」
「でしょ。サクラにぴったりだと思ったんだ」
「オレ達にはないのかよ~」
「あるよ、はい」

そう言って先生が渡したのは、明らかに“〇〇に行ってきました!”というのが分かるお土産クッキーだった。

「やったー!」

それでもナルトは喜ぶ。サスケくんも渋々それを受け取った。

「先生、私もナルト達と同じものでもいいのよ?」
「嫌だった?」
「嫌ではないけど……私だけ違うものでいいのかなって」
「大丈夫。サクラは女の子でしょ。それに俺がサクラにあげたいんだから、気にしないの」
「……分かった」

先生は私の頭を撫でる。

先生は任務でどこかにいく度に必ずお土産を買ってきてくれる。確かこの前は香水で、その前はキーホルダー、さらにその前はハンカチ……ナルト達にはいつも食べ物なのに、私にはいつも身に着けるものだったり、形が残るものだった。きっと女の子だから、気を遣ったのだろう。

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お気に入りのカフェでいのと女子会をしていると、いのが私のネイルに気が付いた。

「サクラ、その色可愛いわね」
「でしょ! カカシ先生がお土産でくれたの」
「またあの先生。この前は香水だっけ?」
「うん。それもいまつけてるよ」

そう言って私は香水をつけてる手首をいのに差し出し、いのは匂いを嗅ぐ。

「いい香りじゃない。センスあるわね」
「うん。私も好きな香りだったからびっくりしちゃった」
「でも、あんたの周り、どんどん先生がくれたもので増えてくわね〜」
「確かにそうかも」
「カカシ色に染まるってね」
「何それ」

私達が笑いながらそんな会話をしていると、「あら、面白い話をしてるわね」と紅先生がやってくる。

「「こんにちは、紅先生」」
「こんにちは。それよりサクラちゃん。カカシから色々もらってるって本当?」
「はい。任務でどこかに行く度にお土産としてくれるんです」
「他の子たちには?」
「ナルトやサスケくんにはいつも食べ物ですね。私も同じものでいいのに……女の子だからって気を遣っているみたいです」
「あなたにはいつも形が残るものなの?」
「はい。あとは身に付けるものですね」

紅先生は「そう……」と意味深に微笑む。

「……いいこと教えてあげる。私が知る限りでは、カカシはいままで女性にプレゼントを贈ったことはないはずよ」
「えっ! 彼女とかにもですか?」
「おそらくね。あいつはそういうの面倒くさがるし、お返しもしない主義みたいだし」

私といのは「なら何で……?」「教え子だからとか?」と、首を傾げる。

「あくまで私の予想なんけど……カカシ、あなたのことが好きなんじゃない?」
「そんなまさかー」

確かに先生は優しい。でも、私に気があるようには到底見えない。

「うふふ、私の勘は当たってると思うけど。試しに今度あなたから何かプレゼントしてみなさい。面白い反応が見れるかもよ」

そう言って紅先生は去っていく。

「どう思う、いの?」
「どう思うって私に言われても……とにかく紅先生の言う通り、何かプレゼントしてみれば?」
「そうだよね……いつももらってばっかりだし……」

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悩んだ結果、私は皮素材のシンプルな栞をあげることにした。先生はいつも本を読んでいるからぴったりだと思ったのだ。任務が終わり、解散しようとした先生を呼び止める。

「カカシ先生!」
「どうしたの?」
「いつもお土産くれるから、お礼にって思って」
「そんなのいいのに」
「とにかく受け取って!」

私は先生にプレゼントを渡す。先生が「開けていい?」と聞いてきたため、私が「うん」と返すと先生は袋を開ける。

「本の栞?」
「先生っていつも本を読んでるでしょ。だからどうかなって思って……」

先生はまじまじと栞を見つめる。あまりにも無言なため、不安になってくる。

「……もしかして気に入らなかった?」
「サクラが俺に……えっ、いや、そんな事ないよ。嬉しいよ! ありがとな、サクラ。一生大事にするから。それじゃあ、俺は報告書出さなきゃいけないからもう行くな。気をつけて帰れよ」

息継ぎなしでそう言ったかと思うと、カカシ先生はすごいスピードで去っていた。そして、一瞬だけだが先生の耳が赤く染まってるのが見えた。あんな先生、初めて見た……。それに“一生大事にする”って大げさな……。

「もしかしたら紅先生の言う事当たってるかも……」

私はカカシ先生が去った後もしばらく佇んでいた。
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