NARUTO/カカサク 短編①

PIECE OF LOVE/SHAZNA

いのと恒例の飲み会。

「あんた、この前の人とはどうだったの?」
「この前の人って?」
「またまた~。銀髪のホストよ」
「カカシさんとはそんなんじゃないわよ」
「うそでしょ! あんたが店を飛び出したあと、その人もすぐに追いかけていったし、そのあと戻ってこなかったじゃない」
「それはわたしが寝ちゃって、カカシさんはそれについてくれていただけよ」
「一晩過ごして何もなかったの?」
「ないわよ」
「ふーん」

いのは怪しんでるが本当に何もないものは何もない。ただ一晩中ゲームをして、帰りに連絡先を渡されたぐらい。

そう! 連絡先を渡されたのだけど、私は中々連絡できずにいた。だって……何て連絡したらいいか分からないのよ!

私はすっかりカカシさんに恋に落ちていた。いま思えば一目惚れだったと思う。なぜたが分からないけど、ビビッときたのだ。この気持ちを改めて確信したのは、カカシさんと別れた後だったけど……。 

何度も連絡しようとしたけど、ただのホストの営業だったら……いや、その確率が高いんだけど。でももしかしたらカカシさんも私のことを……いや、それはないな。そんなこんなでいつのまにか連絡できず、時間だけが経っていたのだ。

私は落ち込んだ思考を消すために酒を煽る。

「いい飲みっぷりね!」
「飲まなきゃやってらんないわよ!」

そして調子に乗って飲み過ぎてしまった。いのに心配されたが、1人で帰れないほどではない。私は心配するいのを振り切り、駅まで向かう。

そういえばカカシさんと出会ったホストクラブもこの近くにあったはず。あの時は楽しかったな〜、また会いたいな~。でも1人で行く勇気はない。電話してしてみる? でも、仕事中なはずだから、絶対出てくれないよね。でもやっぱり声が聞きたい……よし!

普段だったら絶対しないが、お酒が入っていたこともあり、私はカカシさんの番号を押す。

プルル……

しばらくコールが鳴り続け、“やっぱ出ないよね”と切ろうとした瞬間、「はい」と声が聞こえる。

まさか出るとは思っていなかったたため、私は「あっ! あの……」と怪しい人になってしまった。だが、それでもなぜか通じたらしく、「サクラ?」とカカシさんが私の名前を呼ぶ。私はその優しい声に安心し、少しだけ平常心を取り戻す。

「……はい」
「びっくりしたー」
「あの、いまお仕事中ですよね。急にごめんなさい」
「丁度休憩してるから大丈夫だよ」
「なら良かったです。さっきまでいのと飲んでて、いまは帰っている最中なんですけど……そういえばカカシさんのホストクラブが近いなと思って」
「そうなんだ。前と同じ店で飲んでたの?」
「はい。あそこのお店、お酒の種類が多くてお気に入りなんです」
「あはは、そうなんだ。サクラ、酒豪そうだもんね」
「そんなことないですよ!」

やっぱりカカシさんとの会話は楽しいなと思っていると、“カカシ―!”と電話口からカカシさんを呼ぶ声が聞こえる。

「あっ、お忙しいのにごめんなさい。もう切りますね」

そう言って私は切ろうとしたが、「待って!」と声が聞こえ、私は動作を止めた。

「いま、どこにいる?」
「えっ? どこって言われても……。駅に向かってる最中ですけど」
「近くに何が見える?」
「えっと、青い看板のコンビニが目の前にあります」
「あぁ、そこね。そのコンビニでちょっと待ってて」
「えっ?」
「いますぐ行くから」

そう言って電話が切れる。

いまから来る? 嘘でしょ? 仕事中だよね?

私は混乱しながらも、とりあえず言う通りにすることにした。

コンビニの前で待っていること、数分。こちらに向かってくる人影が見えた。だんだん近づいてきて、それがカカシさんだと分かった。

「……本当に来た」
「そりゃあ来るでしょ」
「お仕事はどうしたんですか?」
「あー、任せてきた」
「えっ! いいんですか?」
「いいのいいの。それよりサクラに会いたかったから」

相変わらずすごいことをサラッと言うな、この人。私が感心していると、「顔が赤いね、大丈夫?」と顔を近づけてくる。

「あっ、えっと。さっきまでたくさん飲んでいたからそれのせいです!」

私は恥ずかしくて近づいてくるカカシさんから距離を取る。

「ちょっと待ってて」

そう言ってカカシさんはコンビニの中に入っていく。しばらくして戻ってきたカカシさんの手には水があり、それを私に差し出す。

「はい、これ」
「えっ? 私に?」
「サクラのために買ってきたから気にしないで。飲み過ぎたんなら、水飲んだほうがいいでしょ」
「ありがとうございます……」

私は緊張で喉が渇いていたため、ありがたく受け取ることにした。水を一口飲むと、渇いた喉によく染みて気持ちがいい。

「美味しい」
「ただの水だよ」

カカシさんはおかしそうに笑う。

「まさか会えるとは思っていませんでした」
「俺もだよ。連絡も全然来ないしさー」
「だってそれは……」
「だって?」
「〜〜」
「何?」

カカシさんは言い淀む私に近づいてくる。距離を取ろうと下がるがその分近づいてくるので、どんどんと後ろに下がっていく。ついに私の背中に壁が当たり、カカシさんは私の顔の横に手をつく。俗にいう“壁ドン”ってやつだ。

「理由知りたいなー」
「……どうしても?」
「どうしても」

私は言わないとずっとこのままな気がして、諦めて理由を言うことにした。

「……何て連絡したらいいか分からなかったんです。それにただの営業かもしれないから、それにのるのもちょっとと思って……」
「なんだそんなこと」
「そんなことって」

俯いた顔を挙げると、カカシさんが優しそうに笑っていた。

「俺は確かにホストだけど、自分から連絡先を渡したのはサクラだけだよ。それに連絡してくる内容なんて何でもいいんだ。“おはよー”や”おやすみ”、暇な時はもちろん、困ったことがあった時とかね」
「でも迷惑じゃ……」
「サクラからなら迷惑じゃないよ」
「どうしてそこまで良くしてくれるの」
「男が女に良くする理由って一つしかないと思うけど」
「お金?」
「いやいや、この状況でそれ言う?」
「だってカカシさんホストだもん。私、しがない会社員なのでお金そんなに持ってないですよ」
「はぁ……。確かにそういうこともあるかもしれないけど、俺は新しい客を取るほど困ってないよ」
「じゃあ、どうして?」

そう言いながらも私はある可能性を思い浮かべていた。そうだったらいいなって言う可能性だ。

「サクラは本当に思いつかない? 俺がここまでする理由」

カカシさんは私がその結論に辿り着いてることが分かっているようだ。私をじっと見つめ、私の右手を握ってくる。

「俺がこうしたいと思うのはサクラだけなんだけど」

そう言って私の右手を持ち上げてキスをする。私の赤い顔がさらに赤くなる。

「ちょっと! やめてください」

照れて離そうとするが、握っている力が強く離れない。

「サクラが理由を当てれたら止めてあげる」

カカシさんは私の手の甲に口付け、唇を滑らせていく。この羞恥に耐えられず、ついに「私のことが好きだからですか!?」と、思っていた可能性を口に出す。

「正解! 一目惚れなんだよね」って言うと、今度は私の唇にキスをする。もう私はキャパオーバーだった。

「止めるって言ったのに……」

私は思わず意識を失い、最期に見えたのはカカシさんの「えっ? サクラ!?」と焦る表情だった。
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