NARUTO/カカサク 短編①

Bite Me/アヴリル・ラヴィーン


先生と付き合って3年目。私達の周りはみんな結婚してきてるのに、私達の間には結婚の“け”の字も出なかった。それでも良かった。先生と一緒にいられれば。本音を言えば、したいけど。

今日は先生の家でお泊まりだ。お互い任務で忙しく中々会えなかったため、私は久しぶりに先生と過ごせるということで楽しみにしていた。先生は仕事があるため、事前にもらっている合鍵で先生の家に入る。

「お邪魔しまーす」

誰もいないけれど、とりあえず挨拶をしながら中に入る。

「さあ、先生が帰ってくるまでに晩御飯を作りますか」

私は先生の好きな秋刀魚を焼き、ご飯を炊いた。茄子の味噌汁と簡単なおかずを作り終えると、私はソファで一息つく。

ふとソファの隙間に光るものを見つけ、私は何気なくそれを手に取る。それは女もののピアスだった。もちろん私のではない。
何でこんなところに?
一つの考えが思い浮かぶが、私はそれを打ち消す。それに気づいてはいけない、気づいたら戻れなくなる。


程なくして先生が帰ってきた。

「ただいま〜。会いたかったよ、サクラ」
「お帰りなさい、先生」

そう言って、抱きついてくる先生を受け止める。

「美味そうな匂いがするね」
「今日は先生の好物だらけよ。早く手を洗ってきて食べましょう」
「はーい」

手を洗ってきた先生はさっそく私の作ったご飯を食べる。美味しそうに食べる先生を見て、私は安心する。

「美味しいよ、サクラ。やっぱりサクラの料理が1番だね」

ん? 1番? 一体誰と比べてるの?
私はその疑問をご飯ごと飲み込む。

「そういえば、ナルトとヒナタのところ、3人目だって」
「そうなんだ。それは嬉しいね」
「そうよね、お祝いあげなきゃ。いのとサイは先週婚姻届出してきだんだって」
「へぇ~。めでたいことが続いていいね〜」

私は、前々から気になっていた話題を出す。聞くなら今しかないよね。

「先生は結婚ってどう思う?」
「うん?」
「私達もそろそろしてもいいんじゃないかなと思って」
「そうだね〜。でも、俺たちは俺たちのペースでいいんじゃない?」

先生はいつもと変わらない調子で返す。

「どういう意味?」
「別にサクラと結婚したくないわけじゃないよ。ただ、タイミングがあるじゃない」
「タイミング……」
「そう。俺はまだその時期じゃないと思うんだよね。そういう時期になったらちゃんと俺から言うよ。だからこの話はおしまい」

そう言って先生は箸を進める。
そういう時期っていつ? もう3年も経っているのに……。
私はいつまで待てばいい?
だけど、それ以上聞くことができず、私はモヤモヤとした気持ちを残しながらその日を過ごした。


仕事がたまたま早く終わったある日。先生と会う約束はしていなかったが、ふと会いたくなって先生の家に向かうことにした。確か今日は休みだったはずだ。

私は電気がついてるのを確認し、先生の家に入る。先生がいる時はそのまま入っていいということになっているのだ。

「せんせーい?」

どうせぐうたらしてるだろうと思い、ドアを開けると想像以上の光景が広がっていた。先生と知らない女がキスしてたのだ。

「サクラ!? どうして!?」
「誰、あなた?」

先生と女が私に問いかける。

「……それはこっちの台詞よ! しゃーんなろー!!!」

私はブチ切れ、壁を殴る。壁には穴が開いて、隣の部屋が見えていた。これでもかなり力を加減しているためそれだけで済んでいる。先生と女が驚きの目で私を見ている。

昔の私だったら、泣いて騒いで暴れるだろう。しかし、幾度も経験すれば感情をコントロールできるものだと学んだ。そう先生の浮気はこれだけではないのだ。その度に見てみぬふりしたり、許したりしてきたが、もう我慢の限界だ。

「先生。私、前に言ったわよね? 二度目はないって」
「サクラ、その……」
「分かってて、こういうことしたのよね?」

私は自分でも驚くほど冷静に先生に問いかける。

「いや、その……」
「もう先生の気持ちは分かった。終わりにしましょう、全て」
「ちょっと……」
「さよなら」


私は冷たい笑顔でそう言うと、家を飛び出す。

部屋を出る時に机の上のグラスがその反動で落ちて割れたのを見た。あのグラスは私が買ってきたペアグラスの片方だ。ピンク色だから、私が使っている方。浮気相手にも使わせてたんだ……そんなものもういらない。粉々に割れたグラスを見て、まるで私の心のようだと思ってしまった。

自分の家に帰ると、私は部屋にある先生の私物を片っ端からゴミ袋に詰める。飾ってある先生との写真も全てゴミ袋に詰め、先生の痕跡を一切消す。片付けていると、チャイムが鳴り響く。

「サクラ! 話を聞いてくれ!!」

先生が必死にドアを叩いている。私はゴミ袋を持ったままドアを開ける。

「サクラ……!」
「先生、丁度良かった! はい、これ持ってどっかに行って! そして、私の前から消えて」

言い訳しようとする先生を無視して、私は持っていたゴミ袋を思いっきり先生に投げつける。

「ちょっと! サクラ!」

先生がまだなにかを言ってるが、私はドアを思いっきり閉め、鍵をかける。そして、布団に潜り、鳴りやまぬ声と音を無視する。すると、しばらくして音と声が止んだ。

もっと早くにこうしていれば良かった。先生は私と結婚する気なんてそもそもなかった。だから何度も浮気をする。

私は静かに涙を流した。
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